百億の魔女 (講談社ラノベ文庫)

【百億の魔女】 小川淳次郎/ささきむつみ 講談社ラノベ文庫

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陽が沈み始めた時刻、それこそが〈魔女姫戦争〉の開始の時刻。零次はある日、自分の学生鞄に回転式拳銃が収められていることに気づく。そしてその日を境に、零次は〈剣の魔女姫〉を名乗る少女に命を狙われる。恐るべき身体能力で零次を追い詰めてくる魔女を前に、謎の声が囁く。「撃て」と。果たして、最後に生き残るのは魔女か、零次か。壮絶なる魔女姫戦争がその幕を開ける。
本作の作者は元々別名義でメガミ文庫から【成金】という作品でデビューした人らしく、名義を変えて改めて再登場したのがこれ、ということらしい。
【成金】は未読なのでニントモカントモ。
さて、チェックポイントはヒロインが土佐弁の使い手、という事である。魔法の使い手である魔女らしいが、その前に土佐弁の使い手である土佐っぽである。土佐弁の女性キャラというと、まっさきに樹川さとみさんの【楽園の魔女たち】シリーズ(コバルト文庫)に出てきたレサ嬢を思い出してしまうのだが、さすがにそんな人は極小か。メインキャラ以前に脇役どころかゲストキャラだったもんなあ。それでも明瞭に覚えているくらい、インパクトは強烈だったのです。えらいハマった記憶が。
そのレサ嬢と比べると、本作の無道風子は作者自身が高知の人らしく、結構リアルな土佐弁っぽいのが特徴。それこそ、リアルすぎて口語に違和感も何も感じないくらい。むしろ、感じなさすぎてキャラ付けとして機能していないんじゃないか、と思うくらいにw
いやだって、本当に馴染んじゃってるので読んでてもあんまり「あ、この子方言で喋ってる」という反応ポイントが生じないんですよ。逆に、偶にポロッと土佐弁がこぼれでる主人公の方に気を取られてしまうくらい(笑
方言がリアルって全然悪いことじゃないと思ってたんだけれど、こういう目立たなくなってしまうというケースもあるんだなあ、と妙なところで感心してしまった。
とは言え、風子のキャラ付けが弱いというわけでは勿論ない。何しろ、異能バトルモノで貴重な「幼馴染がメインヒロイン」というパターンである。しかも、気風の良いさっぱりとした姉御肌でありながら、やがて命を狙われる運命にある主人公を守りぬくために日々研鑽を積んでいたという、既に覚悟も完了している、意気を感じさせる気合の入った少女である。宿命とか運命とか誰かから言われたとか一族の悲願とかじゃなく、あくまで自分の意志と考えで、こいつはあたしが守ってやるんだ、という強い意志と誇りを感じさせる立ち振舞には、なかなか感じさせられるものがある。同時に、主人公をただ庇護するだけの対象とは見ず、きちんと自分とともに心身を鍛えさせきたるべき時に備えさせていた、というあたりには一方的な献身ではなく、ちゃんと相手を対等に扱っていて好感が持てる。いざ、その時が来た時も、きちんと状況を説明した上で、ああしろこうしろ、と既に決まっていたことを押し付けるのではなく、主人公の思うとおりにやんなさい、と自立するを尊重してますしね。その上で、こっちはこっちの希望は言うし、やりたいように振る舞うよ、と。自分を抑えているわけでもない。
まあ、その辺りは幼馴染の以心伝心、と言うには主人公は幼い頃の記憶を失ってしまっているのだけれど、三年間一緒に暮らしてきた家族としての繋がりが機能している。うん、幼馴染というよりも、この二人はより近しい家族的な雰囲気が強いんですよね。そのせいか、生半他のヒロインが割って入る余地はなさそうだ。
それが原因というわけでもないのだけれど、後半のエピソードは主人公とヒロインの物語というよりも、零次の中に眠っていた「悪魔」と呼ばれる魔女の亡霊と、軍の魔女との宿命にして非業の対決に主軸が移ってしまった感がある。二人の因縁と情念が強すぎて、零次も風子も何となく立場的に脇に回っちゃってるんですよね。もっとも、この場合ある程度客観的な立場から零次たちが理性的に言葉を尽くすことが出来たからこそ、スパイラル的にからみ合ってどん底に落ちていきそうだった悪魔たちを何とか出来たとも言えるので、これも悪いことじゃなかったと思うのだが。
しかし、後半物凄く話に熱が入ってきて、キャラのテンションもうなぎのぼり、書いてる作者もテンションアゲアゲ、というのが伝わってくる熱量の盛り上がりだったんだけれど、あまりにも熱が入りすぎて段々何を言っているのかわからなくなる部分が散見しだしたのにはちょと参った。いや、気持ちはわかるがちょっと落ち着け、とつぶやきたくなってしまいましたよ。心情描写なんか、非常に気持が篭りだして良かったんですけどね。篭りすぎて描写の色んな境界線が曖昧になってきちゃってた気がする。かなり混迷状態だったぞ、あれはw
まあ熱いのは悪くはない、悪くはないんだけれど、もうちょっと冷静に、ねw