学戦都市アスタリスク 01.姫焔邂逅 (MF文庫J)

【学戦都市アスタリスク 01.姫焔邂逅】 三屋咲ゆう/okiura MF文庫J

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水上学園都市“六花"。通称アスタリスクと呼ばれるこの都市は、世界最大の総合バトルエンターテイメント《星武祭》の舞台として名を馳せている。六つの学園に所属する《星脈世代》の少年少女が、煌式武装を手に己が願いをかけて覇を競う――天霧綾斗もそんな学生の一人。星導館学園の生徒会長クローディアの誘いを受けて六花を訪れた綾斗は、転校早々《華焔の魔女》ユリスの怒りを買い、決闘をすることになってしまう。「大人しくしていればウェルダンくらいの焼き加減で勘弁してやるぞ?」「……それは中までしっかり火を通す気満々ってことだよね?」ところが決闘の最中、ユリスを狙う凶弾が放たれ――? 最高峰の学園バトルエンタメ、ここに開演!
自分の印象としては、完全に【機巧少女は傷つかない】の系譜なんですけどね。昨今の隆盛になってるパターンの一角、になるんだろうか、こういうのは。ただ、その類の中でも本作はよく出来ているんじゃないだろうか。一度流行りがピークに達してしまったジャンルは同じようなものがわんさと出てくることによって必然的に目新しさが失せてしまいますからね。また同じような話か、という先入観はどうやったってついて回る。そこから、「あっ、これはなかなか面白そう」とまで読んでる方に思わせるには、安易に類型に乗っかっただけじゃ無論無理。相応の「アピールポイント」、或いは純粋な物語としての面白さ、文章の誘引力、キャラの魅力というものが必要となってくる。
本作は現状のところ、これと言った特徴があるわけではないのだけれど、全体的な平均点が高いオーソドックスなタイプである。なんて言うと、あんまり面白そうに聞こえないのだけれど、これは突き詰めて言うならば突出した部分こそ無いものの、逆に言うならば隙や緩みというものが見当たらない全体を通して油断なく緊張感を持って仕上げている、中々に気合の入った一品と言うことでもある。ただテンプレ通りに描き上げて、それで満足してしまっている類とは一味違う。まあ、一作目ということもあっての緊張感の保持かもしれないけれど、なんとか面白い話を書きたい、話を面白くしたい、という試行錯誤が随所から感じ取れるのは、読んでいてなんとも心地よい感触だ。作者の中では様々な構想がうねりながら形をなそうと悶えているのだろう。ややも冒頭から突っ走る舞台設定は、その端緒でもあり基礎の構築だ。縦横無尽に物語を踊らせるには、相応の足場が必要であるのだ、という思想を垣間見た気がする。
最初から小じんまり小さなスケールで収まるつもりなく、行けるだけ物語を広げてやろうという意気には好感を否めない。そのための仕込みもまた、あちらこちらに散りばめているようですしね。表となる真っ向からのバトルとはまた別に、政略戦略計略謀略という蜘蛛の糸が無数の人間、組織の間を行き交っている様子も窺い知れて、その発信端末の一つであるクローディア女史の暗躍とともにジリジリとワクワクも募ってくる。
どうやら主人公のマイペースさは、その手の清濁も飲み込む器を持っているようですし。ふむ、面白いといえば主人公のキャラクターもまた面白い。実にマイペースで、他者に振り回されているようでその実よくよく見るとこれ気がつくと振り回しているタイプだな。人格としては流水のように柔らかいにも関わらず、剣術家、武人としての頑なさも持ち合わせているという、主を持たない流浪の剣豪のような漂泊さを伺わせる人物だ。ふむ、この手の主人公にしてはひどく大人びていると言ってもいい。無目的ならばともかく、ある種の指針を得てしまった精神的に自立した人格はブレないから安心して見ていられますしね。思春期の不安定さはそれはそれで魅力的なテーマではありますけれど、明快な活劇においては一本芯の通った頼もしい主人公の方が私は好きだなあ。その意味ではこの主人公の雰囲気はけっこう好みです。
さてもまだ始まったばかりで何もかもが手探り状態。掴みは十分だったですが、本番はこっからだな。是非、頑張ってでっかく面白くしていって欲しいシリーズのスタートです。