魔導書が暴れて困ってます。3 まあ、どうにかなるでしょう (一迅社文庫)

【魔導書が暴れて困ってます。 3.まあ、どうにかなるでしょう】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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謙児と同じ邪神の力を受け継ぐボルホス・ハドリッドたちが立ち去った六道島。今日も謙児とイリーナは、新たに増えた島の住民ナントの一族の居留地で騒動に巻き込まれたりと平穏な日々を送っていた。そんなある日、謙児と共に戦ったモーリ男爵が、ボルホスに勝ったとの急報が入る。男爵の能力はボルホスに勝てるほどではなかったはずと困惑する謙児たち。そんな彼らに一本の電話が入る。ボルホスが戦ったモーリ男爵は偽者で、本物は自分だと。電話で指定された場所に向かうと、そこにいたのは三つあみの巨乳少女だった…。この少女は一体何者?!魔導書回収ファンタジー、待望の第三弾。
なんかもうクルルハルルたちはアレですよね、【人類は衰退しました】の妖精さんですよね、掛け合いといいその無駄な科学力といい。と言うことは彼女たちこそ新人類なのかw
あらすじやカラー口絵であっさりバラしちゃっているのだけれど、前巻でチラッと顔を見せた邪神の子供の一人であり怪盗を名乗っていた紳士のモーリ男爵は実は女の子でした、というあざとすぎるお話。しかもこの娘、コミュニケイション障害っぷりがイリーナさんと被ってるよ!! アンリエッタと冬菜がキャラ被りしていた事といい、敢えて似ているキャラを投入してくるあたりチャレンジャーだなと思われ。そして、イリーナと同じくコミュ障のくせにやたらとイイ性格をしているのがモーリ男爵ことマリーさん。単なる内気で対人恐怖症なら何も怖くないのだけれど、この娘やたらと行動力があるんですよね。それでいて、アンリエッタを出し抜くほど強かで手癖も悪い、と。
同じボッチでも、イリーナと違ってわりと一人でも大丈夫、みたいなところのある独立独歩の人でもある。じゃあやっぱり一番ダメなのイリーナさんじゃん、と言われ続けて幾星霜。いじられることだけが生き甲斐よ、じゃないけれど、謙児を始めとした周りの人間全員にイジられる事がプロの弄られ屋の存在理由、みたいな雰囲気になりつつあったイリーナさんが、実は本当は意外なことに本当に凄い尋常ならざる魔術師だったんですよ、とみんな忘れていた設定を思い出させようというお話でもありました。でも、そこに至るまでは熱発でダウンしてしまい肝心なときに役に立ってなかったり、と決して期待を裏切らないイリーナさんでありました。いいんです、いいんです、イリーナさんはそんな残念な感じで。多少魔術師として傑出していたとしても、そんなことでポンコツ魔術師としての威厳は失われたりしないから、イリーナさんにはそのまま残念な人で居て欲しい、そう素直に思える今日このごろ。
さて、本筋であるようなないような邪神レースは、ますますその陰惨な姿をあらわにしていっている。とは言え、その酷い部分というのは大概にして邪神の子たちを利用しようという人間の浅ましくもおぞましい欲望によって悲劇にして惨劇へと彩られてしまっているわけです。その渦中に図らずも放り込まれてしまった邪神の子たちは多かれ少なかれ心をズタズタに切り刻まれている。ボルホスのように開き直って野心を全開にしてしまっている輩もいれば、ひたすら復讐心に身を浸して邁進するものもいる。その意味では、幼少の頃にイリーナによって記憶を封じられた謙児は、彼女によってその身も心も守られ続けたと言えるのでしょう。
そして記憶とともに力を手に入れた今の彼は、その力によってイリーナたちを逆に守る側に立っている。そして、今の自分と彼女たちを守るためには、時として非情な決断を下さないといけない立場であることも理解している。とは言え、やたらめったらと一線を超えるのも認めがたい。というわけで、決断を下すか否かの境界線上を見極めることを常に要求され続けているのが、今の謙児くんの現状なのだろう。アンリエッタは甘やかさずに彼に厳しい判断を突きつけ続ける審判者、という役割を敢えて受けているようなものなのか。なかなか彼女としても辛い役どころである。幸いなのは、誰よりも謙児がそれを理解し、彼女にそれを求めて感謝しているところなのだろうけれど。彼女としては十分報われているわけだ。イリーナさんの愛人二号以下で全然OKとしているあたりは健気、と思っていいのか何なのか。実は一番甘え上手で美味しい所を頂いている気もするのだけれど。
まあ、イリーナさんが揺るぎない本妻というのは微塵も揺るがないので、その点は安心して見ていられます。そっちは一線を越えてしまって別に構わないのよ? ラストを見ると、イリーナさんの覚悟完了さえ済めばいつでも進展してしまいそうな雰囲気でしたけれど。さて、ヘタレはどっちだ、というお話。

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