ブラック・ブレット4 復讐するは我にあり (電撃文庫)

【ブラック・ブレット 4.復讐するは我にあり】 神崎紫電/鵜飼沙樹 電撃文庫

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東京エリアを、怪物ガストレアの侵入から守っている巨大モノリス。その一部が、ついに崩壊してしまった。予想どおり、ステージ4・アルデバランに率いられた無数のガストレアが東京エリアに侵入。それを、最前線に配備された自衛隊の精鋭部隊が迎え撃つ。激しい交戦の音が戦場に鳴り響くが、しばらくして張りつめたような静寂が訪れる。やがて、自衛隊の後方で待機していた蓮太郎たちの目の前に現れたのは―。心が痛くなるほどスリリングな、話題の近未来ヒロイック・アクション、早くも第4巻が登場。
これはもう、あらゆる意味でアカンやろう。ここで得てしまった損害は、自衛隊にしても民警にしても二度と立ち直れない壊滅状態と言って過言なし。復旧は事実上無理でしょう。装備にしても人員にしても、これだけ失ってしまえばもう元には戻りませんよ。せめて社会基盤がまともだったら十年二十年というスパンで元に戻せるかもしれないけれど、これだけ国土が狭まり流通が壊滅している状況じゃあ、もうあきませんよ、アウト。
モノリスの復旧が完了した以上、ガストレアの大量流入こそなくなって当面自衛隊の防衛力は何とかなるにしても、エリア内の対ガストレア対策と治安維持に効果を発していた民警が文字通り半壊してしまった以上、ガストレア感染者への対処はもう以前のように行かないでしょうし。
と、周辺の状況だけでも絶望的なのに、身内に関しても延珠はさらにガストレア化へのタイムリミットが狭まった上に、木更さんはほぼ闇堕ち状態。特に木更さんが酷い。以前から蓮太郎の口から彼女の危うさについては言及されていたものの、これまで木更さんが目立って異常性を示したことはなかったし、肝心の蓮太郎が木更さんに対して何の対処もしてこなかったものだから、彼女の闇について随分と甘い見通しをしてしまっていたんですよね。
……完全に復讐に狂ってるじゃないですかw
前々からホンノリと持ち上がっていた木更さん最強説は、どうやら抽象的なものではなくえらく現実的なものだったようで、体調気力ともに万全の時の彼女の強さは、これまで登場したキャラの中でも頭ひとつ抜けているかもしれない。ちょっとこれ、尋常じゃないわ。
不満なのが何においても蓮太郎の対応である。これは個人的な印象なんだけれど、彼の木更さんへの対応って、延珠へのそれと比べるといささか必死さに欠けるんですよね。まあ、延珠についてもガストレア化へのタイムリミットが近づいている彼女を救うために手立てを探して足掻き回っている、という素振りも見せてないですし、基本的に腰が重いというか目の前で起こったことに対してしか動けず事前に何とかしようとする気がないところのある少年なんですが、木更さんに対しては、あれだけ好意を口にしているわりには必死に彼女の意志に干渉しようとしたり、状況を変えようと動く素振りを見せないんですよね。そのくせ、自分は木更さんの敵になるかもしれない、なんて嘯いて……そんなん言ってる暇があったら、彼女がそんな有様になる前になんとかしようとしてくれよ。木更さんの様子が元に戻ったから傍観してしまうって、何もしてないのと同じじゃない。
なんか、ここらあたりの蓮太郎の気の無さ、というか心を痛めている素振りの割の素っ気なさはもどかしいばかりで、どうももやもやしたものが募っちゃったんですよね。
そりゃあ、自身も極限状態の連続で余裕がない時間が続いていた、というのはわかるんですけれどね。それでも、なんとかしてくれるのが主人公じゃないですか。いやさ、なんともできなくても、なんにもできなくても、せめて何とかしようと、なんとか闇堕ちしかけている彼女を助けようとしてくれるのが主人公じゃないですか。それを、敵になるかも、なんて言われて凄く突き放されたような思いになってしまって、随分とへこみました。
まあ考えるに、この敵になる、という発言には木更さんの復讐を、狂気を、闇堕ちを止めてみせる、という意図が含まれていたのかもしれませんけれど……それでも蓮太郎が「敵」に回ってしまったら、どれだけ木更さんが泣いてしまうかを想像してしまって……やっぱりそりゃあないよ、と思っちゃいますよ。

とまあ、戦後の話ばかりしてしまいましたが、肝心のガストレア大侵入は筆舌しがたい消耗戦。もう作戦も戦術もあったもんじゃない、ゼロ距離乱戦撃滅戦闘。アート・オブ・ウォーのちょうど真逆といっていい、様々な意味で無様で無残な戦いでした。こんなん、戦争ですら無いよ。ただの相互屠殺。戦いですら無い、殺し合い。
人の知恵も尊厳も誇りも、ここには何にもなかった。ただの地獄。純然たる地獄だった。
勝利も何もあったもんじゃない。ただ、生き残っただけじゃないか、こんなの。
そして、この地獄を引き起こしたのが、ろくでもない欲望から生じた不正だというんだから、救いようがない。本当に欠片も救いようがない。
ぶっちゃけ、この物語の勝利条件って何処にあるんだろう。対ガストレア戦にしても、木更さんの件にしても延珠のことについても、何の目処も立ってない。そもそも、達成スべき目標がなんにもないんですよね。それだけに、行き先もわからず闇の中でもがいて息が続かず窒息するのをただ待っているような閉塞感がひしめいていて、半端無い。なんかこう、少しでもいいから、先のことを示して欲しい。こうしたら、何かが成り立つというゴールを示して欲しい。せめて、中継地点でもいいから。でないと、ほんとに息が詰まりそうだ。

シリーズ感想