沢木道楽堂怪奇録―最後の魔女 (メディアワークス文庫)

【沢木道楽堂怪奇録 最後の魔女】 寺本耕也 メディアワークス文庫

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なんでも屋を営む男と元気が取り柄の女子高生。男は霊を見ることができ、少女は霊に好かれていた。そんなふたりの、怪奇でのんきな物語。失踪した母。残された娘は闇を恐れていた母の運命を知る「ほらこの夜、またあいつらが」。黒猫を預かった雪穂。想いはかつての愛猫、寅さんのもとへ…「きみに照らされて」。13人が死に、ひとりが生き残った。生き残ったのは幼い少女、葉山有紗。だが彼女の周囲では次々と人が死んでいき…「最後の魔女」。以上、三編収録。
………あうぅ。
面白かった、面白かったんだけれどこれはダメージきつすぎるわー。正直読み終えたときはグロッキー状態。ここまで救いのないことになるなんて。いや、当人としては救われたのかもしれないけれど、それまでの悲惨な人生の結末がそれなんて、報われてない、全然報われてないよ。この子自体は何も悪くなかったのに、一切非難されるような所業も罪もなかったのに、なんでこんなことになってしまったんだろう。あまりにも悲惨すぎてあれで報われたと思った有沙が不憫で不憫で。最後まで絶望したままよりはそりゃあマシなんだろうけれど、心も救われたんだろうけれど、もっと幸せになって然るべき良い子だっただけに後味が悪いなんてもんじゃない。それに、彼女を引き取った占い師のお母さんが可哀想過ぎますよ。二度も娘を失うはめになったお母さんの絶望たるや如何ばかりか。
なまじ、その前の「きみに照らされて」が亡き飼い猫に纏わるハートフルなストーリーで思わず目尻が熱くなるほど温かい良いお話だっただけに、てっきり最後の話もハッピーエンドで終わってくれると信じていたので最後の最後に崖から突き落とされたような感覚でしたよ。
うん、「最後の魔女」の衝撃が強すぎて印象が弱まってしまうかもしれませんが、二編目の「きみに照らされて」もとても良い話でした。ふとしたすれ違いから致命的なまでにこじれてしまった友人との仲。仲直りしようとあれこれ努力してみるものの、そのどれもが食い違って上手く行かずズブズブと泥沼にはまっていってしまう中で交錯する今はなき飼い猫との勇気によって得た出会いと後悔ばかり引きずる別れの思い出。そして、現れた飼い猫の幽霊がそっと後押ししてくれたことで、もう一度勇気を得て立ち止まってしまっていた自分を奮いたたせる物語。一人の優しい少女の心の成長と飼い猫との温かな交感を如何なく描ききった素敵な話でした。
冒頭の「ほらこの夜、またあいつらが」は、ちょっとまさかと思うような展開。怪奇って、幽霊方向限定じゃなかったんかい!! 
一応主人公にあたる沢木が、幽霊が見えるものの霊能力者でも霊障のスペシャリストでもなんでもないので、経験則からあれこれと参考になる助言をくれたり、実際助けてもくれるのだけれど、基本的に凄く頼りなくてバシッと解決、というわけにはいかないのでなかなかスッキリとした終わり方にはならないのだけれど、サバサバとしていて明朗な雪穂と組み合うとその若干の情けなさが上手く合うのか、結構いいコンビなんですよね。でも、まだまだ今のところ知人以上友人以下という微妙なラインをさまよってるので、もうちょっと接点が増えないと関係が薄すぎる気も……。とはいえ、何でも屋のおっさんと女子高生って、普通は接点生まれないもんなあ(苦笑