千の魔剣と盾の乙女9 (一迅社文庫)

【千の魔剣と盾の乙女 9】  川口士/アシオ 一迅社文庫

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単独で魔王城を目指すファーディアの前に現れた魔妖精リャナンシー。有利に戦いを進めるファーディアだったが、そこに復活した魔王バロールが現れる。
一方、ホルプを失ったロックはエリシアの励ましやナギの空回りする気遣いの数々に戸惑いつつも、かつてホルプを見つけた神殿に赴き、魔剣ホルプ誕生の秘密へと近づいていく。
うお!? なにこれ、カラー口絵の冒頭の漫画って、【星図詠のリーナ】のリーナとダールじゃん!! これまでも、このシリーズとの関連性は随所に語られていて、ホルプがダールに宿っていた銀の竜だったんじゃないかという話はこれまでも持ち上がっていたんですが、かすかに残っている伝承やホルプの記憶からだとイマイチホルプに関わっていたのがあの二人だった、という確証に至るまでの詳しい情報はなかったんですが……イラストになったら一目瞭然、間違いなくあの二人だ!!
となると、この【千の魔剣と盾の乙女】の世界は【星図詠のリーナ】の未来の世界ということになるんだけれど、リーナがあれだけ歩きまわって無記入の広大な白紙を埋めようとしていた広い広い世界が、今やこうして汲々と島を守るばかりで、大陸は歩きまわることもできなくなった狭く閉ざされた世界になってしまった、というのは何とも皮肉な話だなあ、と思わざるをえない。
さて、剣身を折ってしまったホルプを何とか復活させられないか、と苦悩するロックの前に現れたのは、ただ一人で魔王を倒さんと駆け回っていたファーディア。偶々、復活直後の魔王と遭遇し惨敗をきして命からがら逃げ出してきた彼は、仕方なく同じく魔王を倒すという目標を掲げているロックを仲間に勧誘に来たのである。ただし嫁共、お前らはいらねえ。ロックを嫁にするのは俺様だ、失せろ女ども! というわけで、まさかのファーディア、ロック争奪戦への奇襲参戦である。即席で組んでみたところ意外と相性も悪くなく性格的にも思ったよりも反発無く馬が合ってしまったロックは、周囲の予想を裏切って結構その気になってしまう。焦るのは、嫁たちである。ロックが盗られる! とばかりに錯乱して大騒ぎ。あんたら、今までロックと他の女性がお近づきになってしまった時でもそこまで余裕なく慌てなかっただろうに。
まあ、それだけファーディアが強敵であることを肌で悟ってしまったのだろう。なにしろ、コイツは新たに嫁に加える、というわけにはいかない本物のおじゃま虫、自分たちの旦那様を嫁にしようとしている仇敵である。
結果として巻き起こるは、史上最大の修羅場!!
……なんでついにきた修羅場がこうなったw
しかしまあ、あれだけ性格傲慢でひねくれているファーディアも、ちゃんと付き合ってみるとなかなかイイ所もあるし、聞き分けのいいところもあるんだよ、ってそのパターンはヒロイン参入の構成だよなあ(笑
でも、確かにあれだけとんがっていたファーディアと仮にもパーティーが組めるとは思っていなかっただけに、ロックの包容力、受容力にはびっくりである。別に女性限定の人間力じゃなかったのねw いやいや、あのファーディア相手にあれだけ気にすることも苛つくこともなく平然と受け答えして、流したり誠実に応えたりできるのは大したもんですよ。まあ師匠もあんなだから、この手の人間には慣れてるのかもしれませんが。
ともあれ、これは大きな戦力増強になるんだろう。か。ホルプを失っている現状のロックは戦力的に厳しいものがあっただけに、ファーディアの参加は非常に心強いものでしたし。なんとか、ホルプ復活の道筋はついたみたいですし。
一方で、復活した魔王のフットワークが軽すぎて戦々恐々なんですよね。魔王城の奥ででんと構えて動かない、ってなどころか、復活してまだ力も回復していない段階で自由に動き過ぎだ。いきなりフィールドで魔王と遭遇しました、なんて洒落にもならない。その上、サーシャに封印されたことで人間への軽視と油断は拭い去られていて警戒も密にしており、未だ力戻っていないとはいえこれは強敵すぎる。
本来、このあたりで師匠キャラのバルは死亡フラグが立ちそうなんですが、この人の場合は師匠キャラである以前に根っこが主人公キャラなんで、サーシャやニーウとの関係からして全然生き残りそうな気配もあり、どうなるかわからないという意味では、ロック以上にその動向が興味深いんですよね。生死の見通し以上に、エリシアたちみんな嫁にしてやるぜ、と覚悟も完了してしまったロックに対して、サーシャとニーウの二人の女性とどうなるのか、という意味でも興味募るひとなんですが。ラストでまたえらい相手と遭遇してますけど、はてさて。

川口士作品感想