機巧少女は傷つかない10 Facing

【機巧少女は傷つかない 10.Facing "Target Gold"】 海冬レイジ/るろお MF文庫J

Amazon

機巧魔術――それは魔術回路を内蔵する自動人形と、人形使いにより用いられる魔術。「夜々の代わりに、私を妻にしてください! 」「姉さま、ついに……つ・い・に! 」いろりの爆弾発言に雷真と夜々は驚愕。折しも〈流星群〉騒動の責任を問われ、ラザフォードが失脚、〈焼却の魔王〉ライコネンの学院長就任が発表された。自治権を巡
る混乱の中、〈結社〉が学院を襲撃――未曾有の危機が学生たちを襲う! この機に乗じ日本軍は〈愚者の聖堂〉への侵入を決定。だが、聖堂を目指す雷真の前に、仇敵マグナスと戦隊が立ちはだかる……。シンフォニック学園バトルアクション第10弾!
気がついたらこれ、完全に総力戦じゃん!! そういう意識なく読み進めていたものだから、あれよあれよと学園全体を巻き込んだ大争乱の様相を呈してきた展開に呆気に取られているうちに、学園内の主要キャラ総浚えの総力戦となり大興奮。思えば、これまで数々の陰謀、暗躍、策略、干渉を廃してきた結果、外部の組織の純粋な駒としての生徒たちは大方排除され、今残っている面々というのは駒であろうと狗であろうと外の組織の思惑に乗っかっていようと、自分たちの意志と矜持で夜会を勝ち抜こうとしている独立した一廉の連中ばかりなんですよね。そういう彼らは、雷真たちとは仲間ではなくても好敵手であり、お互いにリスペクトし合っている存在です。それが、自分たちの庭である学園を侵されたとなれば、手に武器をとって協力し合い、同じ敵に立ち向かうのは当然のこと。中でも、精鋭の中の精鋭とも言っていいラウンズの面々は、その評判通りの実力を見せつけてくれて、頼もしかったなあ。
やっぱり、共通の敵に一致団結して立ち向かう、という展開は激燃えに燃えますよ。
しかし、今回の敵は魔界ともいうべき世界の暗部で躍動している本物の怪物たち。しかも、正面からの殴り込みと裏からの侵食という二段構え。幾ら世界中から集まってきた天才児ばかりであり、それぞれに凄惨な事情を抱え世界の残酷さを知っている者たちとはいえ、まだまだ未熟な子供たち。世界でも上から片手で数えられるような実力者とそれが率いているプロの魔術師たちを相手にしては格の違いというものを痛感せずには居られない差があるのですが、概してその差を瞬く間に埋めてしまう成長を見せるのもまた若者たちの特権というもの。
目覚ましい成長を遂げている雷真のみならず、ついに本当の実力を垣間見せ始めたロキに、前回殆ど覚醒と言ってもいいくらいの変化を見せたシャル。みんな本当に伸びたなあ。一方で、日輪はというと、この娘本気でバケモノ級だったんだな。今までまだ良くわかってなかったんだが、相手が人外魔境の怪物となって初めて、それと真っ向から対抗できる日輪もまた、ラウンズの中でさえややも特別の感がある実力の持ち主だったことが理解できてゾクゾクっとなりましたね。そして、グリゼルダも魔王の名に相応しい、お師匠様の面目躍如ともいうべき大暴れでしたし。
今回は本当に主だった登場人物全員に見せ場があるような、派手な展開続きで全くもって燃えでした。シリーズ中でも一番盛り上がったんじゃないかな、というくらいに。単に見せ場があった、というだけじゃなく、それぞれ現状持ち得たフルスペックを限界まで発揮するような、成長や躍進の一部始終をお披露目するようなシーンの連続だったことも盛り上がりに拍車をかけていた理由でしょう。雷真も、ついに夜々、いろり、小紫の三姉妹を一度に操る器量を見せてくれましたし。此処に来て、ようやく雷真も兄貴の背中が見えてきたんじゃないでしょうか。
まあ嬉しかったのは、これまで鳴りを潜めていたアリスまで、俄然表に出てきてくれたことですね。さすがは謀略策謀担当。敵だと厄介極まりないけれど、味方だとこれほど頼もしい腹黒もいないですよ。最終的には彼女の作戦が敵を手玉に取って、陰謀をひっくり返したようなものですしね。
とはいえ、彼女の策が成功するには、各所各人の動きや活躍が必要だったのも間違いないわけで、面白いのは事前に示し合わせて動いたのでは全然なくて、全く連絡を取り合っていないにも関わらず、この危急時にあいつらならこう動くに違いない、と疑いもせずにそれぞれが動いて、それが完璧な連動となって圧倒的だったはずの敵勢力の陣営や思惑をひっくり返していくという、痛快極まりない流れだったんですよね。いやあ、もう痛快痛快。これまで敵か味方かわからなかった、というか半ば敵だったんじゃないかと思っていたラドフォード学長が思っていたよりもずっとこっちよりで、何よりアリスと和解というか、ようやく親子らしい情が交わされたやり取りを見せてくれたことで、明るい気持ちになれたのも大きかったのでしょう。硝子さんも、この人も期待していたよりもずっと親身になってくれてたのがわかったしなあ。さすがはあの三姉妹の作り手というべきか、冷たいように見えて情深い人だったのな。
とまあ、現状においてピークというべきタイミングだったからこそ、ここで急展開、一度滑落する流れになってしまった事は否めず……夜々の限界来てしまったかー。
丁度同じタイミングで、マグナスの人形であり妹の撫子そっくりの火垂と雷真が、あといろりが交流を持ったのは、何かしらの意図を感じる展開だな、これ。

ラブコメサイドは、気がつくといつの間にかいろりがその天然ポンコツっぷりで凄まじい食い込みを見せている模様。この作品って、何気に人の話を聞かないポンコツであればあるほどヒロイン度があがる傾向にある気がする。常識的だったり素直になれなかったりしてると置いてけぼりになりかねない、シャルとかシャルとかw
夜々は病みすぎて別枠として、現状いろりとグリゼルダというポディション的に伏兵すぎる二人がやたらと押しまくってるのは、明らかにその激しすぎる妄想ポンコツ乙女っぷりのお陰だな、うん。

シリーズ感想