ノーゲーム・ノーライフ3 ゲーマー兄妹の片割れが消えたようですが……? (MF文庫J)

【ノーゲーム・ノーライフ 3.ゲーマー兄妹の片割れが消えたようですが……?】  榎宮祐/榎宮祐 MF文庫J

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ゲームで全てが決まる世界【ディスボード】――人類種の王となった異世界出身の天才ゲーマー兄妹・空と白は、世界第三位の大国『東部連合』に、その大陸全領土と"人類種の全権利"を賭けて行う起死回生のゲームを仕掛けたが、直後。謎の言葉を残して空は消えてしまった――……引き離された二人で一人のゲーマー『 (くうはく)』
消えた空の意図、残された白、人類種の運命は! そして獣耳王国(パラダイス)の行方は――!?
「言ったろ"チェックメイト"って。あんたらは……とっくに詰んでたのさ」
対獣人種戦決着へ――薄氷を踏む謀略が収束する、大人気異世界ファンタジー第三弾!
すっげえな、これ。この三巻に至っては最初から最後までテンションがまったく落ちなかったぞ。全力疾走でフルマラソンを完走でもするつもりなのかと唖然となる勢いである。凄まじい。しかも、一巻一つ使って一戦、というわけじゃないんですよね。事実上の三連戦、でありながら実質上は始まる前から終わっていたという完封試合。
これは成長の物語ではない、と登場人物当人が明言するように、既に完成された「  」の蹂躙を読み手自身が蹂躙されるように呆気にとられて目の当たりにするという、そんなお話だ。そう、完成され完結している「  」の空と白の関係は、信頼だとか絆だとかいう切れたり失われたりする可能性を内包している関係からはもはや逸脱してしまっている。彼らは、正しく比翼の鳥であり、完膚なきまでの共依存の双体である。離れることは死と同意義であり、無価値であり無意味と成り果てる末路である。全くもって、ここまで本当の意味で一心同体は兄妹は見たことがない。しかして面白いのは、これほどたった二人で完結している二人が、この【ディスボード】という世界では決してたった二人で閉じてしまっているわけではないところだろう。元の世界では、周囲から完全に断絶してしまっていたにも関わらず、【ディスボード】においては二人はその空白に他者を積極的に受け入れている。それは、世界が彼らを拒絶せず受け入れたからなのか、はたまた彼らが世界とその中の人達を受け入れることを選んだからなのか。いずれにしても、ただ二人きりの「  」だった空と白の世界は外へと広がりだしている。或いはその空白は新たな仲間たちによって埋められつつある。二人は、二人で一つの存在だとしても、世界にただ二人だけの存在ではなかったということなのだろう。比翼の鳥は、空へと飛び立つことのできる存在だったのだ。白が今回ステフに投げかけた「ありがとう」の言葉こそ、空白の得た他者との繋がり、その象徴なのだろう。彼らは個としては完成してしまっている存在かもしれないけれど、そこで終わってしまっている先の潰えた存在ではないのだから。
思えば、ステフの存在というのは存外に空と白にとっては大きいものだったのかもしれない。「  
」と外との繋がりという意味で、彼女は最初から重要なポディションを占めている。決して、ただの弄られ要員ではないのだ。もしくは、二人に弄られるというその一点時点で重要であると言えなくもない。何気に、俗事では有能だったりするし、今回は一番大事な場面を任されていたり、と実際かなり役に立っている子にも関わらず、まったくもって不憫な娘さんである。だがそれがいい。
さて、肝心のゲームの方はというと、まさにギャンブルで勝った分を丸ごと全額次のゲームにベットし続けるという、一度しくじるだけで破滅は必定という、ウルトラハイリスクウルトラハイリターンという精神をゴリゴリと削るような状況を、鼻歌を歌うようにスイスイと泳ぎきるこの兄妹。必勝を期しているにも関わらず、これほどハラハラさせられるのは、本当につま先立ちで蜘蛛の糸の上を渡るような極限の綱渡りを強いられているからだろう。間違えさえしなければ敗北はない、と当人たちがどれほど余裕を見せていても、その間違いが微細極まるミスすら許容できないとなれば、傍目から見ていて安心できるはずもない。凄まじいまでのくそ度胸だ。その神がかった発想も、尋常ならざる計算能力もある意味問題じゃない、一番凄まじいのはその能力を最大限発揮できる図太さそのものなのだろう。まったく、とんでもない兄妹である。ぶっ飛ぶにも程がある。お陰で、こちとら息継ぎする暇もない。この動悸息切れをどうしてくれるんだ、血圧あがっちゃうじゃないかw
絶句、興奮、大狂乱ときて仰天瞠目開いた口が塞がらない。その末に爽快痛快大喝采、であります。まさに究極のエンターテイメント。いやはや、これはたまらん。一巻からこっち、面白さうなぎのぼりどころか軌道エレベーターでありますよ。間違いなく、今一番面白い作品の一つ。これは、ブレイクスルーしそうだ。

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