アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム (電撃文庫)

【アリス・リローデッド ハロー、ミスター・マグナム】 茜屋まつり/蒲焼鰻 電撃文庫

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わたしの名前はミスター・マグナム。見ての通り、拳銃だ──。
未来を切り開くマジック・ガンアクション登場!

「あたしが巡り逢ったのは……最高の銃だったわ」
 そう言ってアリスは逝った。わたしの名前はミスター・マグナム。偉大なる魔女によって生み出された魔法の銃だ。最悪の魔女《ゾォード》により引き起こされた災厄により相棒を失ったわたしは、不思議な運命により過去の世界で意識を取り戻す。

「アリス?」「そう。わたし、アリスよ」
 目が覚めてサボテンと土煙が支配する荒野、スモーキー&ロックスで出逢ったのは、少女時代のかつての相棒だった。だがこのアリスは、あのアリスとは何かが違う──。

「ほへー。ミスターって、すっごいんだね」
 ──アホだ、アホなのだ! やがて《ライトニング・ワイルド》と呼ばれるはずの少女は、とんでもないおてんばアホ娘だったのだ……。やれやれ。とはいえわたしは立ち上がる。かつての悲劇を起こさぬよう、新たな未来を切り開くために──。

 第19回電撃小説大賞<大賞>受賞作の、未来を切り開くマジック・ガンアクション登場!
また凄い経歴の人だなあ。これは確かに驚いた。
しかしなるほどなあ……いや、何というか物語のコンパクト化、つまりあちらこちらから色んな物を削り落として、一冊にお話を纏めてしまう作業に随分こなれた感じがしたんですよね。文字通り、慣れてたんだ。
ただ、本当に必要最低限だけを残して、つまりこの場合はマグナムから見たアリスという焦点以外はざっくりスリムアップしてしまってる気がするんですよね。脇を固めるアリスの仲間になるキャラクターたちは、造形自体は魅力的に仕立ててあるものの殆ど掘り下げはありませんし、そもそもなんで仲間になるのかという因果からして殆ど成り行きみたいなもので、マグナムからすると前回のターンの記憶もあって思い入れも強いんですが、最新のターンにおいてはマリアと彼らの関係ってかなり薄くて友情が成立しているのかも定かではない。唯一、師匠とだけは絆も深いんだけれど、どうやって二人が師弟となって今のような関係を築いたのかという回想描写もありませんでしたからね。逆に、敵となる魔女についても風聞を利くばかりでその実体はわからないまま、結局最後まで魔女とほんとうの意味で向き合うこともなく決着まで駆け抜けてしまいましたからね。そして、トドメは肝心のマグナムに纏わる時空の輪環。この捩れて繋がった輪っかというものは、書こうと思えば鏡の向こうから真理を覗きながら触れられないような、哀切と諦観に希望と決意を綯い交ぜにしたような、非常に練りこまれた心情を描ける、そんな深みにハマるような描写を幾らでも書き削ることの出来るテーマだと思うんですよね。それが、輪っかの完成度から辻褄合わせの美しさに至るまで、メチャクチャ甘いわ荒いわそんな程度でいいのかと思ってしまうくらいあっさりしてるわ、とにんともかんとも。大体、ホークというキャラが出てきた途端に彼の正体が透けて見えてしまうというのは色々と勿体なさ過ぎますよ。もうちょっと、さり気なさというか、立ち位置を迷彩するような登場の仕方をしないと。ホーク見た瞬間、おがきちかさんの【エビアンワンダー】が思い浮かんでしまいましたがな。
って、あれ? 書き始める前は結構面白かったですよ、という趣旨の話を書こうと思ってたのに、実際に書いたらつらつらと不満点ばっかり書き連ねてしまった……なにゆえ!?
西部劇のワイルドというかアウトローな雰囲気はよく出ていますし、焦点を絞って描かれているマグナムから見たアリス、という後悔と期待という思い入れの篭った光景は、マグナムの愚痴が非常に多い語りも、アリスのキテレツで突拍子もない暴走っぷりも、見ていて楽しかったです。特に、アリスの言動はアホの子でぶっ飛んでいるようであり、マグナムの指示も教導もさっぱり聞かずに突っ走り、マグナムの無い頭を抱えさせ、振り回しまくっているようで、その実最短距離、或いは過程を色々すっ飛ばしてマグナムが意図したところの目的地にハードランディングしているという、とにかく結論結果だけ掴みとっちゃうという完全に天才肌なところが意外なほど痛快で、マグナムが振り回されて喚いて文句を言いながらもまんざらじゃなさそうなところも合わさり、いいコンビなんですよね。ひたすら、見ていて楽しいコンビであり、相棒でした。

なんか、色んな意味で絆される作品だったなあ。