塔京ソウルウィザーズ (電撃文庫)

【塔京ソウルウィザーズ】 愛染猫太郎/小幡怜央 電撃文庫

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魂の魔術師(ソウル・ウィザード)は、魔犬と契り『神の頂』を目指す。

 鉄の箒にまたがった魔女が、夜空を滑走する。ここは≪塔京≫。
ソウル・ウィザーズが集いし魔法の都。自分の魂(ソウル)を改造し、死者のソウルを消費し『奇跡』を起こす者達をソウル・ウィザードという。
 時計塔学園・双児宮に所属するウィザード・黒乃一将は、『自由騎士』として、自身の守護霊である不死の魔犬ブリュンヒルデと共に≪児雷也≫討伐クエストの任務に就く。
 動物霊召喚専門(ペットセメタリー)の異名を持つ一将は奇策により≪児雷也≫に勝利。焼け残ったアジトから、金髪の少女の姿をしたデバイス≪ソフィア=04≫を発見する。それは、一将に幸運と凶運をもたらし……。
にょわわわ〜〜、Wonderful!!!
これいいわーー、好き好き凄い好き。作品の枠組みとなる世界観の設定からして好みではあったんだけれど、序盤はセリフで長々とクドい説明が入るなど、読み進める上で決して良い流れではなかったんですよね。なので、好みの雰囲気だなあ、とは思っていてもこの段階ではまだ良作、というくらいの認識だったんですよね。それが、ググっと鎌首をもたげ出したのが、椎名真央と契約を結んだあたりから。正確には、一将が真央の件で先生に叱られる場面でした。この先生のお説教というのは厳しく辛辣ながらも、自分の仕事や資格に対する責任の重さというものへの正しく鋭い認識が行き届いていて、自分の好意がもたらすものへの甘い考えを容赦なく指摘するものだったんですね。実のところ、この件についての一将の行動についてはそれほど無責任でも考えなしな行動とも思っていなかったので、プロとして専門家として何より対価を経て他人の人生に干渉するものとしての意識の高さと責任を問う先生の物言いには結構胸打たれるものがあったんですよ。そんな指導に対して一将も、正確に自分の考えの足らなさ、甘さについて理解と反省を示していてので、この段階でビビビッと来たんですよね。
私はどうも自分の言動について責任の取らない、責任のとり方を知らない、そもそも責任を負うということに対して認識すらしていない、甘えた子供みたいなキャラクターは……まあ実際子供だったり、学生レベルまでなら気にならないんですけれど、大人だったり他人の命や人生、生活まで背負うような立場でありながら、無責任であることに恥も感じていないキャラは兎角好かないし、書いてる作者からしてそれを認識していないようだとさらに拒否感を感じてしまうんですよね。逆にその辺りの認識がしっかりしていたり意識が高かったりすれば、印象も良いように感じるのです。この場合、実際に責任が取れる取れないの可否は関係なく。たとえ、取れなくたって、それはそれでその人物の内面の弦を引き絞ることになりますからね。
その意味でも、本作はこの場面を見た段階で、キャラの内面描写という側面から見ても非常に引き締まったものになりそうだ、という感触を得てました。これは、一将の後悔しながらも利用することを欠かさない冷徹な計算高さと、それを明かしてしまう誠実さ。そして、彼がどうして真央の依頼を受けることにしたのかの決定打、となった部分が明らかになったところで確信に変わったのです。
本作が確実に加速を始めたのは、真央と一将が契約してしまい、ヒルダが思い詰めだした段階から。そして確変が入ったのは、ヒルダがあのボーダーを突破してしまった瞬間と言えましょう。あれは、本気で唖然としましたから。恥ずかしながら、ヒルダについては本気でこの段階まで、ただの使い魔であり脇役という認識だったんですよね。表紙を飾っている女の子については、誰なんだろう、ちょっとデザイン違うけれど、真央なのかしら。それともこれから出てくるんだろうか、というくらいの事しか考えておらず、本当に頭の片隅にもなかったのです。意識の死角にあった、というべきか。それくらい、ヒルダの存在というのは徹底して「動物」という認識でした。真央が人間だったことも尚更に。ヒルダの元となった素材が本当に犬だった事もダメ押しで。
だから、ヒルダが自力であの立ち位置に這い上がってきたのは、私にとっては本気で大衝撃だったんですよ。もう「うわーーっ、なんだこいつはっ!!??」とのけぞるような驚きであり、新鮮な驚嘆であり。多分、完全に見くびってたんでしょうね。幾ら頭が良くても、所詮はワンコで、動物霊で、プログラムされた人口のモノなんだ、と。
ところが、自力で自分にかせられた領分を食い破り、その全貌を明らかにした彼女の精神領域は尋常ではなく複雑で奥深く、それ以上に切実で必死なものだったのです。いや、それもボーダーブレイクした段階では気づかなかったんですよね。最初の段階では真央と同じく、私は彼女が単に嫉妬してシンプルな感情に任せて暴れているだけなのかと思っていましたしね。全く、この作品、何度抱いていた認識を改めさせられたか。
兎角、後半に至っての一将とヒルダと真央の想う気持ちが繋がり芽吹き花開き、深まって言葉面だけではない本当の家族としてのトライアングルへと昇華されていく様は素晴らしいものでした。
これだけ内と外が充実している作品は、新人のものとしては望外でしょう。個人的には大当たりも大当たり。最初から好みのドストライク、というのも良いんですけれど、読み進めていくうちに驚かされ喜ばされ興奮させられ絶賛させられる、という類の作品は得てして先々まで息切れせず大きくなっていく、というイメージがあるので、将来的にも期待大、と大いにおすすめしたいところです。
まあ何にせよ、ワンコとニャンコ、その両方を侍らせ取り揃えるなんて、幾らなんでも隙が無さすぎ、パーフェクツ、としか言い様がないですよ、参った参った♪