まおゆう魔王勇者 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る! 」 (6) (カドカワコミックス・エース)

【まおゆう魔王勇者 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る! 」  6】 石田あきら/原作:橙乃ままれ 角川コミックス・エース

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決戦を控えて対峙する南方連合軍と中央軍。しかし、戦端は卑劣な悪意によって開かれる。鉄の国になだれ込んだ奇襲軍、その前に立ちはだかるのは意外な人物だった。一方その頃、冥府宮で歴代魔王と戦う彼女は――。
月刊誌掲載にも関わらず、出るのが早い早い。前の五巻が出たのって確か12月ですよ。
これを読むまで、魔界のことをイマイチ理解していなかったのをようやく把握した。地下世界というのは当然わかっていたんだけれど、二層式になっているのじゃなくて斥力場によって天地が逆転して地上側の地面が地下の魔界側から見ても地面になっていたのね。これを理解していなかったので、後々出てくるゲート跡の勇者があけたでっかい穴に建設される橋の構造がよくわからなくて、ずっと「???」のまま置きっぱなしにしていたのだけれど、ようやく理解の取っ掛かりが出来ましたよ。
だからこそ、むしろここに橋を架ける、という事業の難度にも理解が及んで……土木子弟の才覚ってやっぱりパなかったのなー。いずれの彼と奏楽子弟の登場にも期待しつつ、現状は軍人師弟の独壇場。この辺りから、商人貴族軍人の三子弟たちが、文字通りの主役級として世界の前面に出だすんですよね。
白夜国の騎兵隊の奇襲を迎え撃つ、国境警備隊という二線級の軍と民兵の連合を率いる軍人師弟。この騎兵の突撃を目前としながら、全兵に講義をはじめるシーンは何度見てもしびれる。騎兵の突撃というのは場合によっては、実際に接触するよりも前に士気が瓦解して戦列が崩壊しかねないインパクト、凄まじい恐怖心を呼び起こす迫力のものなんですよね。そして、こういう場合指揮官は叱咤激励、もしくは勇壮な雄叫び、或いは心を揺さぶるような演説。そんな手段を講じて兵たちを鼓舞して士気を保とうとするものです。
「さて、講義の時間でござる」
名将の誕生である。後に、彼はただ戦が上手い将という以上の称号を得て、世界変革の中心の一つとなっていくのですが、そのきっかけであり端緒こそがこの戦いであり、何より勝利が彼を変えたのではなく、勝利によって得られたものが彼の成長に明確な方向性を与えるのであります。
その答えが、またこの白夜国との戦いの後に起こる出来事で見ることが出来るのですが……ござるがホントかっこええなあ。
ちなみに、原作読んでた時はこの時軍人子弟とメイド妹にフラグ立ったと思っちゃいました。あとあと考えると全然違ったんですけどね。
この巻は、女騎士の名指揮官ぶりも、先の極光島以来久々に見られます。女騎士って、一戦士としてよりもやっぱり姫将軍としての方が断然映えるよなあ。鎧も付けず、手甲だけ身につけシスター服で騎馬を駆る姿はかっこいいなんてもんじゃありませんよ。そりゃ、将兵に崇拝されるわけだ。

一方で、魔王と勇者はこの辺りから表舞台での牽引を次々に生まれつつある自立した中心核となる人物たちに譲り、より世界の深い場所へと立ち位置をスライドさせて行きます。まおー様の魔王覚醒と、それに相対する勇者。つまり、正当な形での魔王と勇者との邂逅と、しかし旧来のあるべき勇者の姿から敢然と逸脱した今の勇者による旧魔王の在り方の粉砕は、まさにプロローグの終わりの象徴とも言うべきシーンなのでしょう。
「この我のものとなれ、勇者よ」「断る! 」

タイトルともなったこの魔王と勇者の交わすセリフが、再び違う、本来の意味を持って交わされ、しかしこれまでと全く違う形で幕を下ろした時、世界は間違いなく最初にこのセリフが交わされた時からさらにもう一歩、まだ見ぬ世界へと踏み出したのである。

さあ、ここからが本当の開幕だ。

シリーズ感想