覇剣の皇姫アルティーナII (ファミ通文庫)

【覇剣の皇姫アルティーナ 2】 むらさきゆきや/himesuz ファミ通文庫

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対するは難航不落の要塞! 落とせなければ……皇姫は逆賊!?

黒騎士ジェロームとの決闘を経て、兵達の信頼を得た皇姫アルティーナ。
しかし、安息も束の間、蛮族が侵攻してくる。
皇姫軍は軍師レジスの采配で勝利するも、その情報を掴んだ兄皇子より、
ヴァーデン大公国有する難攻不落の要塞を攻略せよ、との命令が下る。
皇姫軍の弱体化を狙った無理難題だが、従わねば反逆者にされてしまう。
そこでレジスは言う、無数の砲台への対抗策があると。
覇剣の皇姫と、読書狂の青年が織り成す覇道戦記ファンタジー第二弾!
ジェロームさんが完全にツンデレさんです。ってか、この人、自分を打ち倒したアルティーナには今のところあんまりビビッと来ていないっぽいんだよなあ。むしろ、レジスの方に興味津々というか。蛮族の王様、じゃなくてリーダーか。彼も、姫様よりレジスの方に夢中ですし、もしかしてアルティーナ、あんまりカリスマないんじゃね? 一般兵には大人気だから、今のところ構わないんでしょうけれど。ところで、あの蛮族のリーダー、ちゃんと男ですよね? イラスト見る限り、ごっつい男だったから実は女、なんて詐術はないだろうけれど、でもだとするとガチでホモセクシャルなのか。じょ、情熱的ですね!!
まあちゃんと女性にもモテているので、男ウケだけ良いわけではなさそうなのでその点は安心安心。クラリス嬢は、主人公にだけデレていて、他の人には取り付く島もないという態度も露骨なのだけれど、それだけ人見知りというか、他人に心を許さない女性が、レジスにだけ打ち解けているというのは、あざといけれどやっぱり来るものがありますよね。最近のメイドさんには珍しく、戦闘力も高いパーフェクトソルジャー、というわけでもなく、男性に迫られると逆らうことの出来ない本物のか弱い女性、というのも得点高いし。
前回の感想では、レジスにまったく政争や大戦略を描けるいわゆる腹黒なセンスが見受けられなかったので、せめて宮廷生活を経験しているアルティーナが、そのあたりの政治的な駆け引きを担当するのかな、と頭の片隅で考えていたんですが……こりゃ無理だ。このお姫様は腹芸なんか全然出来ない、思ったことを思った通りにやってしまう脊髄反射型だ。こういう子に軍略としてはともかく、政治や外交的な駆け引きをやれ、と言っても絶対無理。考えるより先に行動してしまう以上、損得を考慮し十手二十手先を読んで狡猾に立ち回る事も出来ないでしょう。不思議と人を惹きつけ、多くを巻き込んで引っ張っていくカリスマがあるので、本来ならその辺は周りで支える人間が担当すればイイのでしょうけれど、肝心のレジスがからっきしだからなあ。
今のところですけれど、基本的にこの子、起こったことに対する対処ばかりで率先して主導権を握るような行動には打って出てないんですよね。現状、任官してひっきりなしに激動する状況に追いまくられていたので、仕方ないといえば仕方ないのですけれど、この段階でヴォルクス要塞をゲットした後のグランドデザインをどれだけ描いているかが、彼の軍師としての真価が問われるところだろうなあ。少なくとも、第二皇子がどんな策を仕掛けてきても対応できるような体制を整える、じゃなく、彼の考えを読んで及第。出来れば、コチラの思惑通りに動くように、或いは動くしかないように第二皇子の思考行動を制限、誘導出来れば軍師として最良なんだろうが。

ちなみに、肝心の要塞攻略戦なんですが。読んでて思ったんですけれど、これって本当に実行できるんだろうか? 絵に描いたような、というか本に書いてあるような教科書通りの作戦で、その通りできるならばなかなか堅実で間違いのない作戦なんだと思います、これ。
でも、本当に実行段階に持ってけるのか、これ? ゲームなら物資の調達や運搬、兵器の運用はボタン一つで片付くけれど、現実としては極めて難度が高い気がするんだが。見事に兵站という概念が抜けている。これこそ机上の空論ってやつなんじゃないかしら。
その辺は、あんまり突き詰めない方がいいのかなあ。
作戦そのものは、突拍子のないものではなく、非常に現実的なものなのですが、荒唐無稽さを廃したよりリアルな展開を描くと、そこに付随するあらゆるものにも現実が厳然と付き纏ってきてしまうものなのだ、という点は覚えておくと面白いかもしれません。

1巻感想