吼える魔竜の捕喰作法5 (HJ文庫)

【吼える魔竜の捕喰作法(バルバクア) 5】 内堀優一/真琉樹 HJ文庫

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終焉の竜が復活する時、タクトとシェッセの運命が流転する!!

竜伐騎士フューゴに深手を負わされ、王立魔法騎士団に捕縛されてしまったタクト。その姿を目撃したシェッセもまた、重要参考人として騎士団の手により幽閉されてしまう。なす術の無い状況下、それでも諦めず抗い続けるシェッセにもたらされた、三千年前の真実とは? 一方、王都では世界を滅ぼしかねない《終焉の竜》を巡る複数の謀略が動き出していた!
前世の因縁かあ。吃驚したんだけれど、この世界は転生という本来なら事実確認できない現象を、現実に起こる現象として事実確認できてるんだ。しかも、身体の中に転生を起こす器官があるという事まで認証済み。いやいや、身体に転生を起こす器官がある、という発想は初めてみたなあ。確かに、器官まで備わっているのなら、それは漠然とした宗教的観念の介在する余地のない厳然とした事実に過ぎないな。しかも、それが魔力に関わる器官となると、現在の魔力関連で大きな事情を抱えているタクトとシェッセの前世から続いている因縁にもダイレクトに繋がってくるわけで、前世ってあまりスポット当たってこなかったけれど、かなり練りこまれた設定だったんだ。
でも、それを今まで極力表に出さずに、純粋にタクトというシェッセという今の時代の人間同士の交流を熟成させていった事は良い方向性だったんでしょう。読んでいるこちらも、前世の二人の関係に意識が引っ張られず、前世と今をちゃんと分けて捉えられるようになってましたし。ラブラブでアツアツ、という目も当てられないほどのカップルという意味では前世の二人も今世の二人も一緒ですけれど、今のシェッセがタクトを好きになったのに前世はなんにも関係ない、というのが心の底から信じられますから。そして、前世の記憶を取り戻した二人が、それでも前世に引きずられずにただのタクトとシェッセとして、お互いを大好きでいられることに何の疑いもわきません。にしても、シェッセの「だいすき」は攻撃力が必殺すぎますて。ええい、可愛いのう、可愛いのう。
一方で、前世の聖女と竜人の伝説にある二人の顛末も、また切なくて心締め付けられるような悲恋でした。たとえ、同じ魂を持つ他人同士でも、今世でタクトとシェッセという形で改めて結ばれた事がせめてもの救い。それに、彼らの唯一の家族だったあの機械人形。生き残った彼が、三千年の時の果てにナギの転生であるタクトを見つけた時の心境は如何許のものだったのでしょう。前巻では、タクトとその育ての親という観点でのみ感動した二人の物語でしたけれど、改めて三千年前の真実を知るとまた違った感慨が溢れて来ました。
そんな、三千年前と現在を精一杯生きている二人に対して、完全に前世に引きずられ飲み込まれてしまったアステイリアは哀れです。この人は、前世でも今世でもちゃんと生きることに背を向けて、妄念に縛られてしまったことが哀れでなりません。ヤッたことは憎々しいことばかりなんですけどね。
そしてもう一人、余りにも遠くを見過ぎ、正しく在りすぎたウィリー・ウォーレン。まさに世界の為を思えば、彼のやろうとしたことは間違いではないんでしょうけれど、失敗したらその思惑が叶うどころか現状も維持できず全部台無しになってしまっていた事を思うと、いくらなんでも足元見なさすぎだ! と思わずには居られない。これって完全に一か八かじゃないですか。竜の被害は確かに大変だけれど、竜伐騎士も居るわけでそこまで世界的に切羽詰まって滅び掛かっているわけでもなく、そこそこ安定軌道に乗っている事を思えば、彼の賭けは迷惑千万と言っても良かった気がします。保守的というなかれ。信念こそ評価しますけれど、それは方向性こそ違え、質的にはアステイリアとさして変わらないものだったのではないでしょうか。彼と違って、幾らでも後戻りできたとは考えられるので、この結末は心苦しいものでしたけれど。

しかし、この世界、肉屋が強すぎだろうw タクトだけが強いんじゃなくて、爺さん含めて肉屋全員が竜伐騎士並って、そりゃ他の竜伐騎士もテンション上がるわ(笑
最後は見事な大団円。ボクっ子にも関わらず、非常に可憐で可愛らしいヒロインが素敵な恋をして結ばれる、全力で応援したくなるような壮大にして掌の上に乗るかのような愛らしいラブストーリーでした。これほど、お味噌汁が似合うヒロインもなかなか居ないですよ。お幸せに〜〜。

シリーズ感想