一つの大陸の物語<上> ~アリソンとヴィルとリリアとトレイズとメグとセロンとその他~ (電撃文庫)

【一つの大陸の物語(上) ~アリソンとヴィルとリリアとトレイズとメグとセロンとその他~】 時雨沢恵一/黒星紅白 電撃文庫

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『アリソン』『リリトレ』『メグセロ』と続く"彼らの物語"、完結編がついに登場!

 アリソンに見送られたトラヴァス少佐は、軍用機に乗り旅立つ。しかし機体はその後、爆発とともに墜落してしまい──。
 一方、リリアの通う第四上級学校では、"謎の転校生"トレイズを巡って新聞部メンバーが校内の大調査を開始する。すると、思いがけず臨時ロッカーに関する不審な現象が明らかに。彼らは、徐々に大きな事件へと巻き込まれてしまうのだった……。
 懐かしいあのキャラクターたちも勢揃いでお贈りする、胸躍るアドベンチャー・ストーリー×ドキドキハラハラワクワクドタバタ学園物語の完結編上巻!
リリアさんリリアさん、あんたの彼氏、デンジャラスですよ! バイオレンスですよ! 危険な香りのする男ですよ!!
【アリソン】からはじまったクロニクルもこれにて完結。ということで、タイトルは一体どういう事になるか楽しみにしていましたが、さすがに主要登場人物の名前を全部並べるタイトルは無理だったかー。その代わり、きちんとサブタイトルの方にねじ込んだみたいですけれど、こちらをタイトルで見てみたかった。その他はひどいと思うけど(笑
でも、この一つの大陸の物語、というのも実にいいと思うんですよ。【アリソン】の物語によって起こった変革からはじまり、メグとセロンというかつて敵対していた国家同士の人間が結ばれるまでに至る帰結を思えば、その集大成が「一つの大陸」というのはとても象徴的で素敵だと思うのです。良いタイトルですよ。その他はひどいと思うけどな!!
にしても、時雨沢さんも【アリソン】を【アリソンとヴィル】にしなかった事を後悔してたのか。まあ後々考えるなら、ヴィルだけハブにされてる!と見えちゃうもんなあ。でも【アリソン】という名前一つの揺るぎなさは、インパクトというか存在感としてとても大きいものがあったので、これはこれで良かったんじゃないかな。

さて、今回は冒頭からトラヴァス大佐が大変なことに、ってあらすじに堂々と書いてあるし。お陰で読む前から一体どういうことなんだよ、とかなりハラハラさせられたのですが、何やらどこぞで陰謀が起こっているのは間違いないようで、ヴィルはいったいどういう形で関わっていたのか。この人、何だかんだとガチで暗部の人間なんで結構後ろ暗いこともしてるからなあ。ただ、そろそろ足を洗おうとしていたのは多分本気だったと思うので、さてどうなってきているのか。
そして、裏の動きは表の方にも波及中、というよりもセロンたちがいつものごとく感度良く本来ならば引っかからないはずの犯罪を引っ掛けあげてしまい、そのままだとヤバかったところを何も知らないトレイズが、彼もやっぱり危険に関する感度をやたら高い所で設定している立場の人間なので、身近に浮上してきた異常事態に迅速に対処した結果、大事になる前に火消しできた、という話か。面白いことに、状況を今のところ誰も把握していないまま自分の見える範囲で出来る限り動きまわった結果、最悪を回避しているというところか。結構危ない状況だったんですよね、これ。誰もまだ気づいていないですけど。でも気づいていないということは、まだ誰も自分たちが踏み込んじゃヤバい所まで踏み込んでしまっていることにも気づいていない、ということで危ない状況はまだ続いているわけか。セロンたちは、何だかんだと正真正銘の一般人なのでかなり心配な立ち位置なのだけれど。それに引き換え、トレイズ殿下はなんですか、リアルアサシンですか!? こいつ、王子様のくせして白馬に乗らずに特殊部隊なことしてますよ。騎士じゃなくてアサシンですよw 普通の学校生活を知らない王子様が慣れない生活に世間知らずさを連発して浮世離れした空気をまき散らしている、というと少女小説的なそれを思い起こしてしまいますけれど、こいつの場合どちらかと言うとフルメタル・パニックの流れじゃないかと思うくらいデンジャーだよなあ。リリアは、トレイズの正体を王子様と知ってしまって、あんぎゃーと頭かかえてますけれど、このままだとその程度じゃ済まないかも。尤も、リリアの性格からしてトレイズの立場の暗黒面についてはさほど気にもとめないのかもしれませんが。何しろ、アリソンとヴィルの娘なわけで、小心とは程遠い大胆娘だもんなあ。その意味では、トレイズの女の趣味は実に的を射ているとも言えるのですけれど。

作中ずっと心配させられたヴィルの消息については、最後のアリソンのセリフで概ね不安も払拭され、あとはきっと痛快にして胸のすくような結末が待っているはず。すでに下巻の各章タイトルが紹介されてるんですが、ラストの結婚式がまた好奇心をかき混ぜられる。普通に考えれば、誰の結婚式かは想像できようものなんですが、果たしてそんな予想の範囲で納めてくれるのか油断できないのがこの作者さんなので、色んな意味でこの一連のシリーズの幕引きの形を楽しみにしたいところであります。

シリーズ感想