ミニスカ宇宙海賊(パイレーツ) (朝日ノベルズ)

【ミニスカ宇宙海賊(パイレーツ)】 笹本祐一/松本規之 朝日ノベルズ

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宇宙ヨット部の部活や、高級レトロ喫茶店でのアルバイトに忙しい元気印の女子高生・茉莉香は、突然、死んだ父親の部下だと名乗る2人の男女から、宇宙海賊 船「弁天丸」の船長就任の要請を受ける。1世紀前、独立戦争のどさくさの中で発行された私掠船免状によれば、船長の死んだ海賊船の存続は、直系の子供によ る世襲が絶対の条件らしいのだ。かくして思いもよらぬ新生活に踏み入ることになった茉莉香の前途は―。 新シリーズの痛快スペースオペラ、華麗に登場。
小説の方、読もう読もうと思っているうちにアニメが始まってしまい、まあどんなものかと見たこれがまた実に素晴らしかったんですよね。余りにも素晴らしすぎて、これで満足してしまいそうになっていたのですが、これだけ素晴らしい作品の原作を読んでいないというのも勿体無いと思い、またSF作品なだけあって映像だけでは処理できない情報も本ではじっくりねっとり書き記しているはず、これはやっぱり原作の方も急がないにしてもきっちり追いかけていきたいなあ、と思っている間に結構な時間が経ってしまったのですが、ようやく暇と機会が合わさって第一巻を手に取りページを捲ることができました。
それでもまあ、ストーリーの方は既に把握しているし、後は本特有の追加情報を目当てくらいの気分で読み始めたんですが……甘かった、これ本気で面白いわ!!
いやあ、お話の内容既に知っているとか、そういうの問題なく、関係なく、これがすこぶる面白い。
特にヨット部が練習航海に出たところからが真骨頂。茉莉香の冷静かつ理性的でありながら隙あらばガンガン行こうぜ、なバイタリティあふれた行動力がすこぶる痛快にして爽快。それにドン引きするどころか嬉々として相乗りする、これまた曲者ぞろいのヨット部の面々。そんな子供たちの強かでガツガツした意欲を掣肘せず、しかし放置もせずじっくり見守り検分する大人たち。一応、ヨット部が乗り込むオデットII世にちょっかいをかけてくる謎の存在という敵対者は居るのですが、本質はその敵をダシにしたオデットII世に乗り込んだ面々の当事者間の駆け引きであり、加藤茉莉香という少女の持つ眠れる資質を彼女自身が発見し、威風堂々とマントのように纒うお話だったんですなあ。そして、宇宙というでっかい海に魅了され、そこに船で漕ぎ出す楽しみを見出す、冒険という名の世界への扉を開く物語。茉莉香が、なんで海賊船の船長なんてものを引き受けたのか、この航海の一部始終を見れば、彼女が何に惹かれ何に期待し、何を自分の中に見出したのかが全部わかったような気がします。
しかし、エンタメとしてもこの物語の文章は素晴らしいなあ。笹本さんというと、SF者の中でも古豪も古豪の古強者だけれど、これほど盛り上げ方に映えと妙のあるウィットに富んだ書き方をする人とは思わなかった。昔読んだ時はもうちっと野暮ったかった気がするんだが、常に最前線にあり続けるというのはそれだけ自分を刷新し続けているということなのだろう。さすがとしか言い様がない。
何にせよ、期待していた以上に楽しめた。アニメを先に見ていたというのは、容易にあの美しい宇宙の光景を脳裏に思い描けるということでもあり、良い方に作用しているように思う。最新刊までだいぶ置いていかれているのだけれど、このままボチボチと追いかけて行きたい。