黒鋼の魔紋修復士5 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グラフィコス) 5】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

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忌まわしき記憶にふりそそぐ、“永世神巫"の光――。大人気シリーズ第5巻!

アーマッドが誇る“筆頭神巫"シャキーラの里帰りのため、護衛に就く封印騎士団。その中には、紋章官になる前のディーの姿が――【永世神巫と落第騎士】
国王より、静養先から帰還する王妃アルムデーナの護衛を命じられたディーとヴァレリア。一方その裏では、ルキウス率いる“青の右手"にも密命が下され――【蜜月の終わり、雨の日に】
甲冑娘ベッチーナが抱える切ない事情――【花々の宴、夏の日に】
本編を結ぶ、重要な三編のエピソードで贈るシリーズ第5巻!

【永世神巫と落第騎士】
ディミタールがどうして封印騎士団を退団するはめになったかという大人の事情のお話。案の定頭が悪くて度し難いほど愚かな貴族の坊ちゃんが絡んでいたか。意外だったのは、ディミタールがもう少し冷酷な立ち振舞に徹するかと思っていたところをかなり甘い対処に甘んじていたところ。あっさり見捨てると思ったんだがなあ。いい意味で彼はドライだと思っていたので、生かしておいても害しかなさそうな連中は消極的に始末していてもおかしくないと考えたんだが。もっとも、それが彼の温情かどうかはわからない。むしろ、恩ある叔母や従兄弟の為に自重して危ない橋を渡らなかった、と見たいところだけれど。
しかし、こういうくだらない連中が蔓延ってたんじゃあ、イサーク王子があれこれ封印騎士団の改革に乗り出そうというのもよく分かる。役に立たないどころか害悪にしかならないものなあ。たとえ、貴族からの集金機関として割り切るにしても限度というものがあろう。その点、集金機能を保ったまま実践能力をもたせようというイサーク王子の目論見は非常に食えないなあ、と感心させられる。

【蜜月の終わり、雨の日に】
王妃を囮に、進行している陰謀を暴き出そうという国王陛下の謀の尖兵として働くことになったディミタールとヴァレリア。何だかんだと華やかな仕事よりも裏方仕事が多いヴァレリアである。それも、ディミタールという使いやすく潰しの効く駒があるからこそなんだろうけれど、きっちり役割を果たせるようになっているあたり、お飾り同然だった当初と比べてかなり使えるようになってきたな、巫女様。しかし、生々しい現実をきっちり把握できるようになってきたとはいえ、その素朴な正義感はいささかも陰っていないのは、ディミタールが口うるさく現実を教えながらも、変に穢れてしまわないように気を使っているからとも言える。何だかんだととても大事にされていることを、ヴァレリアもあれでちゃんとわかってるんですよね。わかっているからこそ、悔しいんだろうけれど。だからこそ、彼に認められたいんだろうな。

【花々の宴、夏の日に】
なんでよりにもよってガチャとイサーク王子にフラグ立ってるんだ!?(笑
いやいや、そのつながりはあまりにも予想外だった。だって、ガチャだぜ? 未だに誰も中身を見たことのないという鎧の小娘に、なんでイサーク王子とのフラグが立つと思うか。まあ、実際はあまりにも身分違いすぎてどうやったってくっつきようもなく、ガチャも自分の恋が夢物語だとわきまえているし、イサーク王子に至っては別にガチャをそういう目で見てすらいない。ただ、イサークが素の顔、油断したというか余裕のない顔を見せたのは本編含めてもガチャが絡んだこの話が初めてなだけに、恋愛感情は抜きにしても結構本気でガチャとの人間関係は大事に思っているフシが在るのがまた意外。何気に王妃さまがガチャを気に入っているだけに、本当にただの夢物語で終わるかどうかは、まだまだ予断を許さないかもしれない。

嬉野秋彦作品感想