六蓮国物語  地下宮の太子 (角川ビーンズ文庫)

【六蓮国物語 地下宮の太子】 清家未森/Izumi  角川ビーンズ文庫

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絶世の美女なのに残念なほど仕事バカの結蓮は、憧れの恩人が偽装婚約を交わしている上官・季隆だと、気づいてしまう。今までの愚行の数々を思い返し挙動不審になる結蓮と、自分の正体に幻滅されてしまったのだと思い込む季隆。二人の関係は噛み合わずギクシャクする。そんな中、結蓮は太子舎人の職を解かれて落ち込むが、季隆は太子本人に結蓮を連れて秘かに国を出るよう告げられて!?中華ファンタジー急展開の第4弾。
季隆ちゃん、あんた本当に厄介きわまる娘に惚れちゃったねえ。いやもうこれどうしたらいいんだ? 端から見ていると、季隆ちゃんって結蓮に対してわりとちゃんとアプローチしてるんですよ。相手が普通の女の子ならキチンと気持ちも通じて、想いも叶うような真っ当なアプローチ。さらには、立場としてはすでに婚約者同士ですし、同居していますし、彼女の親父さんからは娘の事は頼むと承諾は貰っているし、さらには今回トドメとして結蓮がかつて助けてもらい憧れていた翠玉の御使いが自分だという事まで暴露した。どこをどう見ても隙のない、強引ではないけれど押して押してのアプローチです。その上、結蓮の気持ちも季隆ちゃんが翠玉の御使いであるかないか関係なく、彼のことを好いていて、もうこれって紛う事無き相思相愛なのである。
なのになぜこうも噛み合わないかというと、明らかに結蓮がずれている。彼女の思考回路が常人の及びもつかない迂回経路を辿っていってしまっている。いや、普通に好きでいいじゃん! 憧れの人が季隆だったんだから、そのまま好きですって感じでいいじゃない。
なのに、まあ百歩譲って、惹かれはじめていた季隆ちゃんが翠玉の御使いだとわかって、テンパった結蓮が混乱と恥ずかしさのあまり季隆と顔を合わせられずに逃げまわってしまう、というのはまだ乙女らしいと理解できても、その後の季隆への神を崇めるかのような褒め殺し、歓待殺しはちょっと季隆ちゃんがかわいそうになってしまった。せっかく恥を忍んで正体を教えたのに、結蓮と来たら季隆当人を見ずに、季隆を翠玉の御使いと見て扱い崇め奉るようになってしまったわけで、普通に自分を好いて欲しい季隆としては何この状況、てなもんだわなあ。いや、色々とへこむのもわかる。何言っても聞きやがらないし、この娘。
とまあ、青信号にも関わらず当人同士が噛み合わない中で、結蓮という少女を縛る因縁と運命はより過酷さを増していく。龍の血を引くものとして、ただでさえ俗世に留まれるタイムリミットが迫り、季隆が必死に彼女が人間として現世に残れる方法を探している中で、彼女の身に纏わるもう一つの運命―六蓮の巫女という役割が結蓮と季隆の間を引き裂こうと牙をむく。
国を守るため、敬愛する太子を守るため、これまで武官として身を粉にして働いてきた結蓮。そうやって生きる事がアイデンティティみたいになってた彼女にとって、突然告げられた六蓮の巫女という役割は、まさに本望。引き受けるに迷うことなど何一つ無いはずだったのに、脳裏に過るのは引き受けてしまえば、もう季隆と一緒には居られないという事実。そうやって初めて、この不器用な少女は自分が彼に抱く想いの本当の形に気づいていくのであります。
そんな彼女のために、必死になって駆けまわる季隆。幼い頃から自分を慕い、太子としてゆくゆくは国主として民を守っていく者としての心を教えてくれた結蓮を本当の妹のように思い、太子としての立場からは許されない決断をしてまでも結蓮を守ろうとする成。
二人の男が実に良い心映をしたイイ男なだけに、崇怜の身勝手で馴れ馴れしい振る舞いに本当に腹が立つ。何様だ、こいつは。生半な悪役よりも、よっぽど嫌らしい。まったくもって嫌らしい。最終的に、こいつが結蓮に二度と立ち直れないようなこっぴどい振られ方をして、季隆にぶん殴られないと気が済まないぞw

と、ここからもうクライマックスまで一気に駆け抜けるようで、驚きの三ヶ月連続刊行。イイ所で終わっているだけに、これはありがたいなあ。

清家未森作品感想