召喚学園の魔術史学(マギストリ) (GA文庫)

【召喚学園の魔術史学(マギストリ)】 中谷栄太/さんた茉莉 GA文庫

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東京湾に突然落ちてきた『ミストルティン魔術学園』。
朝木野晃路がここを訪れたのは、留学していたドSで超お兄ちゃんラブな妹・まつると連絡がとれなくなったためだ。
だが、学園内で待ちうけていたのは、強力な魔術器(マギスト)や幻獣を操る生徒たちと、時折落ちてきては学園に追加される、様々な仕掛けや謎を秘めた建築群だった。
勝手がわからず魔術探偵の少女・花菱に協力を求めた晃路だったが、彼女は極度の人見知りで――!?

「私を甘く見たら損だぞ、朝木野晃路」
「いや、そんな風に隠れながら言われても……」
この世ならざるモノたちが交錯する、現代学園魔術アクション開幕!
鞭!? 鞭ってなんだよ。女性が扱うなら女王様属性とか色々考えられるけど、男の主人公が鞭って意味わからん。と、主人公の得意技が鞭だという設定を知って戸惑いも戸惑ったのだけれど、その理由がわかって納得した。凄く納得した。諸手を上げて納得した。そうだよね! 鞭だよね!! あれに憧れたら、鞭の練習するよね!!
いやあ、さすがに自分は練習した覚えまではありませんでしたけれど、あの自在に鞭を操る術には憧れましたよ。かっけえなあ、と惚れ惚れしましたよ。まさに、あの男に憧れたなら鞭は必須だわなあ。
でもさあ、でもさあ、コーロくんあんた何歳だよ! インディー・ジョーンズ直撃世代は自分か自分よりちょっと上世代だぞ。ヤング・インディシリーズまで抑えているあたり、相当の強者だけれど、あのヤングシリーズだって相応に前だぜ。こいつ、実はおっさんだろうw さすがに今の若い世代でインディはなかなかいないと思われ。
あー、でもトレジャー・ハンターというと自分の世代だと何よりインディなんですよね。罠や謎の怪物などが跋扈する未知の古代遺跡に挑み、その奥に眠る秘宝を見つけ出す夢に駆ける冒険譚と言えばインディー・ジョーンズ。そんな彼に憧れて、鞭の扱いを特訓し考古学やトラップ解除のスキルを磨き、野山を駆け巡った少年時代を送り、成長した今もそんな冒険心を捨てきれず心の奥底で燻らせ続けていた主人公、というだけでもうコイツ大好き。このコーロくんはこう、肩を抱き寄せて髪の毛くしゃくしゃっとかき混ぜてもっと思う存分やりたまえ少年!と激励してやりたくなる主人公ですなあ、はははは。
彼がそんな眠らせていた冒険心を復活させてしまった要因こそ、この異世界から落ちてきた『ミストルティン魔術学園』。この学園の凄いところは、現在進行形で今もなお頻繁に異世界から「遺跡」が落ちてくるのです。この学園に在籍していれば、向こうからどんどんと未踏破のダンジョンがお宝とトラップと謎解きを満載したまま降ってくるのです。そりゃあ、コーロくんでなくても狂気乱舞するわなな。なんて夢みたいな場所でしょう。なんて胸をワクワクと高鳴らせてくれる場所でしょう。そりゃあ、コーロとは別路線ながら冒険野郎な妹ちゃんが颯爽と真っ先に溺れてしまうのも無理ないですわ。これはハマる、ハマってしまう。こんな素敵な場所を学校とセットにしてしまうなんて、巨大学園都市という要素も内包して非常に面白い形になっている。興味深いのが、この学園がほぼ新設に近い学校であり、妹ちゃんが第一期生、妹を探しに来たコーロくんが二期生、というようにまだ学校として機能し始めて二年目であり、学校の伝統など無きに等しく、それ以前に学校の統治システム自体が生徒会も今年から発足という黎明期に在り、まだ在り方が定まっていない混沌とした様相を呈してるんですよね。それでいて、ヒロインである花菱が探偵事務所を開いていたり、いろんなサークルが乱立し、各種実権を握っている委員会やサークルが集ったギルドなどといった組織が無数に活動していて、すでに猥雑なほどの煮えたぎった魔女の釜みたいな形となっていて、未だ方向性の定まらないパワーが漲って好き勝手に迸っているのであります。
このまだ誰も何も握っていない宝の山みたいなフロンティアで、冒険の幕が開ける。まず、舞台設定だけで勝利条件整っちゃってます、素晴らしい、これは実に素晴らしい。
そんな学園ではっちゃける主人公たちキャラクターも、これまた魅力的ではっちゃけた連中ばかり。ってか、キャラ同士の掛け合いがまたスチャラカでボケとツッコミも切れまくってて、無茶苦茶面白いんですけれど!? 仮にもメインヒロインのはずの花菱がチョロい上に弱キャラ過ぎて、なにこれおもしろいw あかん、この娘いじられると際限なく輝くタイプだ。そして、何気にコーロくんはSの卦があるので異様にハマったコンビになってしまっている。
「 と ろ み を つ け る 」の何が一体脅しになっているのか、片栗粉で熱湯にとろみをつけることの何が脅しになっているのか未だによくわからんのだけれど、この二人おもしれえ。
行方不明だった妹まつるとの思わぬ再会(これは本気で驚いた。これはあまりにも予想外)に、ギルドのけったい極まる面々。森凛子さんなんかまだ全く本領を発揮していないにも関わらず、キャラの印象がどんどん変わってって、何この娘!?(笑
デビュー作の【おとーさんといっしょ】は、タイトルがあれだったせいか、良質のSFだったにも関わらずイマイチじみーな感じで終わってしまったのだけれど、中身は本当に上手いと唸らせる描写や設定、展開や掛け合いが各所にあって勿体無いなあと思っていたんだけれど、今度は掴みからがっちり掴んできた感じ。今度は本領発揮でブレイクしてほしいなあ。オススメ。

中谷栄太作品感想