神様のお仕事 (講談社ラノベ文庫)

【神様のお仕事】 幹/蜜桃まむ 講談社ラノベ文庫

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ただの高校生だった真人が突然神になっていた。そこに現れた下級生の黒須千鳥は「我が神社の神となってください」と彼に懇願する。千鳥は黒須神社を守る巫女だった。何の取り柄もない自分が力になれるのならばと話を引き受け、神の仕事を始めるのだが…。なんと、神の仕事はポイント制になっていて、貯めれば貯めるほど位が上がっていくシステムだった!どこかの商店かよ!?参拝客のお願い事を叶える仕事から、土地を守る仕事まで。他の神とのいざこざも絶えず、神さまの仕事は意外とハード。そんな中、街に禍をもたらすという疫病神が現れる。倒せば高得点を貰えると燃える千鳥だが、真人は…。第2回講談社ラノベ文庫新人賞“大賞”受賞作。
むかぁしむかしのことじゃった。ただの中学生の女の子が突然神様になってしまうという【かみちゅ!】というあにめがあったでなあ。
いや、こっちでは神様になってしまうのは高校生の男の子なのだけれど、神様というとんでもない存在になってしまいながら、その力に溺れる事もなく自惚れることもなく、上から目線じゃない等身大の立ち位置から人助けをして回る肩肘張らない健やかな善行を自然体で成していく真人少年の神様生活が、あの懐かしいアニメを思い起こさせてくれたのでした。
この真人くんが、いいやつなんですよ。善人善人した聖人君子じゃなくて、本当に普通の男の子らしいメンタリティの持ち主であるからこそ、人のために何かをすること、の素朴な良さが伝わってくるのです。誰のためにやったことでその人が笑顔になってくれたら、なんだか嬉しくなるじゃないですか。そんな人間が良いことをしようと思う原点というべきところを、普通にやってるだけなんですよね、この子。神様の力を手に入れながら、決して大きなことをしようとか世界を変えようとか大層に構えるのじゃなく、出来ることが増えたなあ、くらいのリラックスした気持ちで神様としての仕事をこなしているわけである。
ところが、実のところ神様の在り方としては彼みたいな行動原理は、結構異端側だったりするのであります。神様の仕事というか業務というのは、もっとシステム的で法則然としているのである。これは、神様という存在が体現するものを考えみれば、ある意味当然ではあるのです。世界を担い、人の世を守り育てるために存在している神様たちは、世界の仕組みそのものでもある以上、そう簡単にホイホイと自分の感情で物事を割りきってしまうわけにはいかない。故にか、神様たちの在り方というのは徹底したシステム化が進行していて、文字通り神様たちは歯車として人の世を守っているのである。
でも、なんで神様たちが人間たちを見守り、加護を与えているのかというと、人間たちを愛しているから。それが根源そのものなんですね。だからこそ、愛によって成り立っているからこそ、神様たちはシステムの一部と化しながらも、感情を持ち、心を持ち、知性を有している。自分たち神様の在り方を正しく間違いのないものと認識しながらも、時としてそのシステム故の理不尽さ、冷徹さに苦しさをいだき、悲しみを浮かべ、辛さを噛み締める時もある。ウツロの切ない愛もそうであれば、鋼牙たちの譲らない姿勢と裏腹の戦後に示してきた友誼と敬愛もまた、神様たちの愛すべき矛盾であり、彼らの限界なのだろう。
だからこそ、神様となりながら、同時に人間でも在る真人の神の力を持ちながら神の限界を逸脱し、人の精神を持ちながら神々の愛情を持つに至った、現人神としての在り方が輝くのである。
それを支える巫女である黒須千鳥のブラックさ加減がちょっと怖すぎるんですけどね。真人が良い奴な分、千鳥の黒さが非常にヤバい。稲森さんが危機感抱くのも無理カラン。真人がセーブしないと、際限なく血の雨が振りそうな勢いだもんなあ。でも、そんな彼女の偽らざる本心と、現人神・真人が誕生した経緯が明らかになったときは、千鳥の狂想すらも微笑ましく心温まることに思えてくるのだから、この作品のハートフルさはまさに神レベルではないでしょうか。
いやあ、読んでいて思わずニコニコと相好が崩れっぱなしになる素敵なお話でした。大好きです、こういうの。