落ちてきた龍王と滅びゆく魔女の国III (MF文庫J)

【落ちてきた龍王と滅びゆく魔女の国 3】 舞阪洸/よう太 MF文庫J

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カサンドラ王国軍二千を降したナーガたちは、勢いにのってエインの砦攻略に乗り出す。ヴィータらスレイマーヤ一族の協力もとりつけ計画は着々と進行するが、シュバイツ川の警戒にあたっていたノノエルが、ひょんなことから敵の部隊長ライバッハを生け捕りにしたことで状況は一変する。魔女たちが普通の女の子にしか見えないことに戸惑うライバッハ。かたや、ライバッハが思っていた人間像とずいぶん違うことに首を傾げる魔女たち。そんなとき、砦に帰ってきたユウキが「人間の捕虜は殺す!」とライバッハに詰め寄って…?ナーガの掲げる魔女たちが目指す理想郷、“人と魔女が共存する世界”。これは、その大きな一歩となる戦いの物語である―。
イラストのよう太さんが絶好調だ。これまでの現代モノでは出来なかったようなお色気全開の衣装やシチュエーションを全力全面攻勢で仕掛けてきている。ってか、肌色率が高すぎですよ、口絵にしても挿絵にしても(笑
当面のカサンドラ王国の攻勢を凌ぎ切ったナーガたちは、そこで防御を固めるのではなく橋頭堡となる川向こうのエイン砦の奪取に乗り出すことになる。基本的に、このナーガさんの突出した部分というのは戦術作戦能力じゃなく、視野の高さからくるグランドデザインの描き方。視点の違いからくる世界がどのような仕組みで動いているかの理解度と、それにいかに影響力を及ぼすかへの認識力が、同時代人と比べても別次元の域に達しているのがこの人なのである。この能力というのは、場所を異世界に置き換えても決して劣化するものではないんですね。勿論、それを生かすには世界に影響力を及ぼせる高い地位というものが必要になってくるのだけれど、魔女たちの実質的な王となることで彼は地位と武力を手に入れることに成功している。しかも、現状では魔女側というのはその知性とは裏腹に非常に原始的と言っていい社会体制によって営まれており、それでいて意外と旧態然とした凝り固まった思想に身も心も縛られていない、という理想的な自由に如何様にでも形をこね回せる柔らかな集団なのである。ハインドラ一族と、更に今回スレイマーヤー一族の全面的な支持を得る事が叶ったナーガにとって、この世界は自分の思い描くものを自由に描ける草刈り場となるのだから、そりゃあ楽しかろう。同時に、自分の野望よりもむしろ魔女たちの為に、という他者のためという原動力は彼の在り方に余裕も与えているのではないだろうか。
しかし、これほど早い段階で人間の、しかも男の部下が手に入るとは、いろいろな意味で本気だなあ。はっきり言って、捕らえた砦の兵たちを逃して魔女たちのイメージを残虐非道なものからひっくり返す、というイメージ戦略はナーガさんの兵士たちの解放の仕方から殆ど逆効果じゃないか、と思えるんだがこの段階で人間の理解者を手に入れたのは、ナーガさんが自覚しているように非常に大きいとおもわれる。出来れば早い段階で文官も欲しいところ。少なくとも、魔女たちに統治の実務を教育できるレベルの人を。ちゃんとした統治体制を整えるにしても、魔女側に官僚として働ける人材を育成しておかないと、あとで絶対対立が起こりそうだもんなあ。
さらに、教会勢力の介入に話が及んでしまうと、果たしてどのレベルまで段階を進めるのやら。

2巻感想