デート・ア・ライブ7  美九トゥルース (富士見ファンタジア文庫)

【デート・ア・ライブ 7.美九トゥルース】 橘公司/つなこ 富士見ファンタジア文庫

Amazon

「ねえ士道さん。十香さんを助けたくはありませんこと?」第6の精霊、美九の天使によって四糸乃、八舞姉妹を支配され、“ラタトスク”のサポートも受けられず、DEMの手により十香もさらわれ絶対絶命の五河士道の前に現れた少女。―かつて士道たちを殺そうとした最悪の精霊、狂三。彼女の力を借りるリスクを負ってでも、十香を救い出したい士道は共闘を決意する。「俺たちの戦争を、始めよう」人間に絶望し、歪んだ幻想を持ち続ける精霊、美九の目を覚ますために再びデートして、デレさせろ!?―。
未だに狂三をクルミと読むのは抵抗があるなあ。無意識にキョウゾウと呼んでしまっている自分がいる。
しかし、改めて狂三の能力を目の当たりにするとこれホラー以外の何物でもないですね。彼女の物量戦は正直グロい。分身の術じゃないけれど、自分の似姿を大量に出現させて物量で押す、という戦術自体は決して目新しいものではないのだけれど、狂三の場合自分を殺すことを厭わないどころか死なせて潰して押し切ることを前提にしているものだから、文字通り見渡す限り狂三の死体が散乱するという地獄絵図が現出する上に、その死体の山を乗り越えて狂笑する狂三の群れが襲いかかってくるのだから、ある意味バタリアン並の恐怖である。幸いにして噛まれたからといって狂三化するわけじゃないのだけれど、怖いものは怖いのだ。
でも、その狂三が味方となるとこれがまた頼もしい。いやグロいしキモいし勘弁してくれと思うところだけれど、それでも狂三の群れが自分たちではなく、敵を押し潰していくとなれば心強いはあるんですよね。特に今回は孤立無援もいいところだったので尚更に。
それでも、今回に関しては味方してくれたとはいえ、この狂三だけはとてもじゃないけれどデレる気はしないなあ。そんな彼女はイカレているようでいて、何気に精霊の中では唯一と言っていいほどこの精霊が生まれた世界の真実に近づいていると言っていいようだ。好き勝手狂乱しているようでいて、真相究明に余念がないというあたり、彼女単体で独立した勢力といっていいくらいの影響力を秘めているのかもしれない。
もっとも、自覚なしに一番真実に近いところにいるのは、士道その人のようだけれど。しかも、その真相はどうやら彼の旧姓である崇宮にあるようだ。精霊とは如何にして生まれ、何のために生み出され、何を成そうとしているのか。通常より数世代先の技術を確保してる秘密組織〈ラタトスク〉なんてものが存在し、そもそも士道をサポートするために創設された、なんてことになっているあたり、全ての中心は士道その人にあるのかもしれない。
そもそも、こいつって明らかに性質が異常なんですよね。今回ちらっと思ったんだけれど、彼の精霊に対する反応、絶望するものに対する救済観念には条件付けされたような自動的なものすら感じさせる部分があった。むしろ、そのために「創られた」んじゃないか、という考えすら浮かぶくらいに。果たして、琴里はどこまで知っているんだか。少なくとも、いざというときは士道を殺害する覚悟まで持っている以上、何らかの真実は知ってるはずなんですよねえ。好感度マックスの状態であそこまで覚悟極まったことはなかなか言えないでしょうし。
改めて見ても、病んでる鳶一を除けば士道への好感度が一番高いのは琴里だよなあ、と断言せざるを得ない。前巻で美九に操られて士道に暴言を吐いたこと、琴里ってばメチャクチャ気にしてるんですよねえ、可愛いなあ。操られてたんだから、そこまで気にすることもなかろうに、と思うところなのに何気に凹みまくってるんですよね、そういうところ本当に可愛いと思いますよ。

さて、タイトルになってる美九ですが、表紙の方は一巻以来となる十香さん。しかも悪堕ち女幹部バージョンのお色気コスである。その十香が悪堕ちする条件がまた興味深い。つまるところ、精霊となった娘たちの今回には「絶望」が介在してるということなんですね。しかも、美九に関しては琴里と同じはっきりと人間から精霊へと変化させられたケースであることが明らかになる。決して、琴里だけの特例ではなかったわけだ。この二人、もしかしたら狂三もかもしれないけれど、人間であった当時の記憶を保持している娘に対して、十香たちは精霊として世界に現出する以前に記憶は持っていないため、元々人間だったという確証はないのだけれど、実際に美九という二例目が登場した以上、十香たちも元人間と想定しておいた方がいいのかもしれない。
すべては、誰かの思惑のうち、か。