銀閃の戦乙女と封門の姫2 (一迅社文庫)

【銀閃の戦乙女と封門の姫 2】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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クァント=タンからカイトたちが帰還してひと月がたち、新しい家族も増えた花梨家は賑やかな日々をすごしていた。そんなある日、第四王女シャーロッテがこちらの世界にやってくる。カイトが保護しているエリカを狙った陰謀が進行していると忠告しに来たのだというが、時すでに遅く、梨花とエリカは黒鎧の男が率いる機士の一団によりクァント=タンへと連れ去られる。二人を助けるべくカイトは再びクァント=タンへと降り立ち、フレイそしてシャーロッテとともに誘拐犯を追うのだが、そのとき予想外の異変が起きて…。
瀬尾さんはやっぱり策士系ヒロイン好きなんかなあ。メインには据えないものの、メインヒロインを立てる形でちゃっかり主人公の傍らに自分の場所を確保してしまう立ち位置にこの手のヒロインを配置するんですよね。魔導書でもそうだった。
シャーロッテもそうなんだけれど、計算高く腹黒なわりに自分は二の次で周りの大事な人を優先して計算立てる健気系なんで、アピールポイント高いんですよね。しかも、主人公が馬鹿じゃなくちゃんと彼女の健気な気持ちを察するに足る聡明さを持っているだけに、周囲から胡乱に見られるわりに主人公からは大事にされるという役得な立ち位置だったりする。カイトの場合、年下の女の子にひどく甘いきらいもあるのでその意味でもシャーロッテの待遇は立場の際どさに較べて非常に高く見積もられている。まあ、シャーロッテの境遇を聞いているとソーニャ姫さまよりもよほど酷く危うい状況下に置かれていて、味方らしい味方もいないだけにカイトが味方してあげないと容易に死んでしまいかねない所だっただけに全然構わないんだけれど、その分ソーニャとフレイは今回ほぼ完全に脇役に回ってしまった。特にソーニャ姫さまに至っては途中退場の憂き目に。ほぼ相思相愛の幼馴染同士という設定のはずなんだが、気心が知れている分逆にぞんざいに扱われてる気がする、ソーニャ様。この人自身も大雑把というか、嫉妬はしても陰湿にネチネチといつまでも引きずらないサッパリとした人なので、ぞんざいに扱っても大丈夫、というのはわかるんだが。
面白いのは、むしろシャーロッテの最大の理解者がカイトではなく、梨花の方だったというところだろうか。この妹ちゃんの頭の回転の速さは、完全にシャーロッテと噛み合ってるんですよね。カイトは聡明だけれど頭の硬い方だから決してシャーロッテの思惑の裏の裏まで読み取れるようなタイプじゃないだけに、雰囲気は察することは出来てもシャーロッテが何を考えているかまではわからないので、そのたびに戸惑って立ち止まらざるをえないのだけれど、そこを尽く梨花が先読みして状況と思惑を詳らかに指摘説明してくれたお陰で、物事がこじれずに済んだ場面が度々あったわけです。シャーロッテとしては、言わずに済ませて迷惑をかけまい、自分で背負ってしまおうとした部分までおっぴろげさせられてしまったのでだいぶ参ったとは思うのですけれど、あそこまで細やかに自分の中身を汲み取ってくれる人が居るというのは、賢しらな分不器用に生きざるを得なかった彼女にとっては、得がたい出会いだったのかもしれない。梨花としても、計算高さ故にカイトの意を無視して忌憚なく色々と教えてくれるシャーロッテは、ある意味フレイたちよりも波長が合う友人になりそうな感じでしたし、イイコンビになるんじゃないでしょうか、この二人。幼馴染組と妹組、という区分けで。

しかし、噂の国王陛下は聞いていた以上に真正のクズ野郎で、あまりのゲスっぷりに逆に驚いたくらい。しかも、最近人格が変貌したのではなく聞く限りはどうやら元からろくでもない奴だったらしい。ここまで自分の息子や娘に非道をするか、という無茶苦茶なやりようで、権力欲と野心をこじらせると此処まで自己本位に歪むものなのかといっそ感心すらした。正直、あんなにあっさりと殺されてしまったのは信じられない。ああいう小心で自分を守ることに偏執的に汲々としている小物は、逆にゴキブリみたいにしぶといし、賢者策士顔負けの強かさを備え持ってるものなんですよね。自分を守るためには信じられないほど慎重で狡猾で大胆で強かな立ち回りを見せたりするものだけに、ああもあっさりとくたばってしまうのは違和感すらある。しばらくはまだ注意が必要だな、これ。

とはいえ、公式には国王の死は確かなものとなり、後継者問題は必然的にカイトの今後にも関わってくることになる。何しろこの世界の国是は血筋による継承とはまた別に、力による継承もあるわけで、別に国王の座につくまではいかなくても、カイトの実力と立場、彼が果たした役割は必然的に彼をいつまでも現代日本に引きこもらせているわけにはいかなくなっている。もう、いい加減決断はしているみたいだけれど。結局、何が大事かと言えばもう決まってるんですよね。それを敢えて無視して背を向けることに何の意味も利益もない。最大の理由だった妹の梨花についても、こっちついてくる気満々ですし。モテる男はいつまでも逃げていられてないという一点だけで、つらいものだなあ、うんうん。

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