魔女の絶対道徳2 (ファミ通文庫)

【魔女の絶対道徳 2】 森田季節/NOCO ファミ通文庫

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なあ、人間の範囲ってどこまでだろうか。

俺、水主頼斗は天狗の輪月や吸血鬼の知理と協力し、奇怪な殺人事件を解決した。
だが、平穏は長くは続かず、街への何者かの侵入で再び均衡は崩れようとしていた。
厄神を名乗る少女、彼女を追う異形のストーカー、他地区の咒師の介入、異変の要因となっているのは誰だ!?
街の平和のため、自身の命のため、咒師の俺は謎を解明しなければならない。
しかし、明らかになる真実は残酷なもので――。
正義の和製魔法使いと不純少女の青春怪奇ストーリー、第二弾!
このヒロイン、発言の八割は下ネタばっかりじゃないか! 残り二割は民俗学の薀蓄であることを考えると、ホント未だかつて無い猥褻ヒロインだな、輪月という娘は。これで口ではエロネタばかりだけれど、本当は初で照れ隠し、だったりしたらそれはそれで、なんだがこの娘の場合本気でエロいのでその限りにあらず。大変危険な仕様になっております。
とは言え、本編の方を見ると途中の展開にしても事態の真相にしても容赦の無いダークさで、昨今の作品の中では一番デビュー作の【ビター・マイ・スウィート】シリーズに近かったんじゃないだろうか。改めて思うけれど、森田さんはあっけらかんとしているくらいの残酷さとほろ苦いくらいのビターさがよく似合う。そこに近年磨きぬかれた軽妙さが実に上手く噛み合ったのが本作だったんじゃないだろうか。個人的には最近では一番好きなシリーズでした。二巻で終わってしまうのがどうにも勿体なさすぎる。
本作で面白かったのが、メインの輪月や妹を含めてヒロイン全員が愛情ではなく打算でもって主人公の頼斗との仲を深めようとしていたところ。しかも、その打算を隠しもせず前面に押し出して、割り切った関係性を強調しながら。
もっとも、最初はともかくとして果たして輪月たちが終始打算のみで頼斗に絡んでいたかというと、口で言うほど、或いは頼斗が望んでいるほどには打算という物差しだけで繋がっていたわけじゃないように思えるのです。少なくとも妹ちゃんが口さがなく打算を言い募っていたのは頼斗が負担に感じないように、という配慮が伺えましたし、輪月に至ってはあれは多少なりとも頼斗の望むように振舞っていた節がある。それを好いた相手の意を汲む出来た女、と見ることもできるけれど、むしろ悪女のたぐいだよなあ、そのやり口は。結局、打算で繋がる人間関係というのは、ドライであるとともに必要以上に重いものを相手のぶんまで背負わずに済む、という点で非常に楽ではあるんですよね。途中、輪月の親身な態度から彼女が打算関係の区分を踏み越えつつあるのを感じ取った時に頼斗が怯えを露わにしたのは、彼が他人から寄せられる愛情に応える勇気を持てないヘタレのたぐいだという一つの証左だと思うのですが、そんな彼の内面を察しながら踏み込んで頼斗という男の子を大人へと成長させるのではなく、ぐずる赤子をあやすようにおもねって見せたのは、あれはなかなか悪魔的な所業だと思うのですよね。同じように怯え、楽な方を選んだ、と思えるほど輪月という女は生っちょろい生物には見えませんから。さすがは天狗というべきか。あれは堕落を甘露としてペロペロと舐め啜る魔性の一角、堕天魔縁のたぐいでありますよ。もしくは、単なるダメンズ属性なのかもしれませんがw

今回の一件は、真相がまた陰惨というか退廃的というか。古き時代の因習と素朴な愛情が相いれず歪みきった末に破綻したある意味哀愁的で、ある意味ひどくグロテスクなお話で、なかなかゾクゾクさせられるお話でした。同時に、主人公がこれまで薄弱ながらも拠り所としていたものを根底からひっくり返すものでもあり……輪月の知識量と明晰さからすると最初から頼斗の考え方について、その底板の脆さについて把握していた可能性も高いので、考え方によっては実に見事に「落として」、「堕として」みせた、とも言えるんですよね。結局、頼斗は彼女に絡み落とされてしまったわけですし。
魔性、斯くあるべし。なにやら尊崇の念すら湧いてくる大した悪魔系ヒロインでした。下ネタばっかりだったけどな!! 最近、下ネタ系ヒロインが微妙にアリだな、と思えてきていて、危ない傾向だと自戒しているw

1巻感想