シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)

【シアター! 2】 有川浩 メディアワークス文庫

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「2年間で、劇団の収益から300万を返せ。できない場合は劇団を潰せ」―鉄血宰相・春川司が出した厳しい条件に向け、新メンバーで走り出した『シアターフラッグ』。
社会的には駄目な人間の集まりだが、協力することで辛うじて乗り切る日々が続いていた。しかし、借金返済のため団結しかけていたメンバーにまさかの亀裂が!それぞれの悩みを発端として数々の問題が勃発。旧メンバーとの確執も加わり、新たな危機に直面する。そんな中、主宰・春川巧にも問題が…。どうなる『シアターフラッグ』!?書き下ろし。
あっ、そうか。司に言われるまで頭になかったけれど、確かに二年後に300万返せたら、それは終わりじゃなくて、そこから改めてはじまりなんですね。んで、二年以降は司が管理してくれるわけではない、と。無意識に、二年後以降も司が面倒見てくれるように思い込んでいたけれど、そんな事はなかったのか。お兄ちゃん、その辺りはきっぱりしてるからなあ。でも、役者当人たちが経営管理まで全部こなさなきゃならないというのは大変だと思うよ。誰だって、役者として自分を高めることに時間も労力も費やしたいだろうし。かと言って、専門に事務統括方やってくれる人を雇おうとしたら、中堅クラスの劇団であるシアターフラッグでは到底やってけない。こりゃあ、司兄ちゃんが業界としてマトモじゃないというのもわからんでもない。
というわけで、先を見越してメンバーは持ち回りで今のうちから司の仕事を引き継げるように裏方仕事の分担を増やし経験を養っていくことに。
前回一巻が、劇団解散の危機から組織体制を見直し、舞台を成功させるまでの一連の大きな流れとなっていたのに対して、今回はメンバー一人ひとりにスポットが当たっていくことになる。掘り下げ回、ということなんだろうけれど、端役とは言え何人かはテレビに出れるような役者なのか。普通に凄いなあ。
あらすじでは、メンバー同士の中に亀裂が、などと煽っているけれど、読んでいる限りではそこまで不穏なことにはならなかった。波乱を経てそれでも残り、そして一致団結して一つの目標に向かうことを選び、実際成し遂げている途中というメンバーだけあって、何だかんだと仲いいんですよね。ここまで仲良いか、と思うくらいみんな胸襟を開いて付き合ってる印象がする。だからこそぶつかり合ったりもするんだけれど、拗れるようには全然見えないんですよね。むしろ、出てったメンバーの中途半端なクズっぷりを見る限り、千歳の乱は結果として膿を出したと言っても過言ではなかったかと。いや、出てったメンバーの嫌がらせが見事なくらい小物で卑屈で、よくぞまあ、と思わず笑えてくるくらい。こんなん、牧子姐さんと張り合えるもんじゃないでしょう。姐御は、あれは自分の在り得た姿だ、と自戒してるけれど、それはちょっと自分を過小評価しすぎてるよなあ。千歳が司相手とはまた別の意味で牧子姐さんに懐いているには、至極当然ですよ。その牧子さんが巧と司の母親そっくりだ、とお母さん当人が認めているのは面白いなあ。まあ、巧みたいなのは牧子さんくらいでないと御せないですよ、うん。あんな鬱陶しいのw
今回は司兄さんが一歩後ろに引いた感じで、見守るお兄さん的に動かなかったためか、全体の動きにもどかしいものを感じるところもあったのだけれど、そうやって一歩引いているからこそ、お兄さんがどれだけみんなから慕われてるかが伝わってきたし、千歳との仲もビジネスライクじゃなくて司兄さんの方から踏み込んでいく展開もあり、なかなかニヤニヤさせられる場面も多かったです。千歳は完全にお兄さん気にしてるよなあ、あれ。ちょっと本格的な進展が見たいので、第三巻はそのあたり期待したいなあ。

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