レンタルマギカ  未来の魔法使い (角川スニーカー文庫)

【レンタルマギカ 未来の魔法使い】 三田誠/pako 角川スニーカー文庫

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壮絶な結果をもたらした大魔術決闘から二年。いくらかの変容を余儀なくされた魔術界は、ようやく落ち着きを取り戻しつつあった。“アストラル”もまた、新たな魔法使いを仲間に迎え、忙しく日々を過ごしていた。そこに舞い込んだ呪波汚染洗浄の依頼。ごく小さな、難易度の低い依頼のはずが、予想外の波紋を呼び―!?世界各地に散らばる登場人物たちのエピソードを交えて描かれる、ファン必携の後日譚にして、シリーズ完結巻。
ダフネさん、将棋なんかしてる場合じゃないっしょ! ぶっちゃけ、作中のカップルの中では一番早く結ばれるかと思ってたダフネと隻蓮のそれが、未だにグダグダやってることに絶望した!! この場合、ダフネさんがあれ、乙女思考なんですよね、案外この人。多分、女性の側から迫るものではないなんていう古風な考え方をしているのだろうけれど、そんなことしてたら何時まで経ってもあの唐変木はヘラヘラ笑ってばかりで何にもしてくれませんよ。待った、なんて言わせてちゃイケませんて。まったく、甘やかす人だなあ、ダフネさんは。
むしろキッパリしているという点では黒羽の方が上回っているのではないでしょうか。多少元に戻って柔らかくなったとはいえ、掴みどころのないあの影崎の手綱をしっかりと握っているあたり、本作に登場した女性の中でももっとも強かになったのはこの娘だったんじゃないでしょうか。幽霊にも関わらず、まったく幽霊にも関わらず生き生きとした行動派で、この積極性は見習ってほしい人がたくさん居ますよ。
さて、あれから二年が経ち、アストラルと魔術界も変わったような変わらないような、二年という月日はそんな微妙なラインであります。幼かったみかんとラピスもすっかり大きくなって……と言いたいところだったのですけれど、見た目こそ多少は大きくなりましたけれど、実際のところ小学四年生だったのが六年生になっただけで小学生だというのは変わってないんですよね。これが中学まであがるとがらっと雰囲気も変わるものなんですけれど、作中の振る舞いを見ていると実のところあんまり成長していないなあ、とw アストラルの新人が少年とはいえまだまだ二人よりも年嵩だったのでその対比からもあんまり大きくなったなあ、という感慨は湧かず。二人共元々苦労人でしっかりとした子供たちでしたしね。以前にもまして二人の仲が良くなり、息のあったコンビになっていたという点では眼福でありましたが。
アストラルが魔術界にもたらした新風は、しかしすべてを吹き飛ばすような暴風にはならず、未だ緩やかなそよ風のようにして流れている。でも、これまでの魔術界が淀んだ停滞の中にあったことを鑑みるならば、そよ風とはいえ空気の循環がはじまっているのは間違いはない。それに、過激な思想からは程遠いいつきの思惑としても、急激な変化は望む所ではなかったようだ。結果として潰してしまった螺旋の蛇も、出来るならば和をもって繋がりたかったはずなのだ。現に、反動として螺旋の蛇の思想に賛同する勢力が、残党とは言えない揺るぎなさをもって胎動している。彼らの思想は極端ではあっても、魔法使いたちにとって非常に共感を呼ぶものではあったのだから。故にこそ、いつきが望むのは緩やかな変化である。敵対する螺旋の蛇をも、自然と飲み込んでしまうようなゆっくりとした、しかし逃れがたい大きな変化。それは、一年十年のスパンではなく、何世代も重ねた先にいつの間にか訪れている価値観の変化。アストラルは、その要となれるようにこれからも存在していくのだと……かつて、アストラルの社長を継いだことを嘆き悲鳴をあげるばかりだった少年が辿り着いた結論こそがそれだった。
そんないつきの側に一心同体となって寄り添う金髪の乙女。アディといつきの姿は二人一緒にいることがもう不可分なほどしっくりと収まってしまっていて、思わず目を細めてしまう。恋人を通り越して、生涯を共に過ごすパートナー。そんな二人を優しく見守る穂波の思いは、傍目で見ていてもキュンと切ない。大切な恋の終わり、その痛みはいつか癒える日が来るのだろうか。誰か、大切な人が出来て欲しいとも思う。

アストラルを継ぐ者、螺旋の蛇を継ぐ者。あの日、世界が魔法に満ちた日に生まれ落ちた魔法に希望と憧れを抱いたものたちの邂逅は、今は相いれぬものとしてすれ違っていってしまったけれど、でもいつかあの日抱いた同じ想いを、一緒に祝ぐことが来るのだと思い馳せれば、重なる日が来るのだと思えば、すれ違ったことすら素敵にも思えてくる。
そんな未来を示すことの叶った物語に、今はただ拍手を。お疲れ様でした。

いつか、せっかく同じ世界なのだから、【クロス×レガリア】とガチンコでクロスしてくれないかなあ。

シリーズ感想