問題児たちが異世界から来るそうですよ?    落陽、そして墜月 (角川スニーカー文庫)

【問題児たちが異世界から来るそうですよ? 落陽、そして墜月】 竜ノ湖太郎/天之有 角川スニーカー文庫

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魔王連盟ウロボロスと対抗することになった“ノーネーム”。黒ウサギの素敵ウサ耳がなくなるという緊急事態のなか、十六夜VS殿下のギフトゲームが始まった!一千体を超える巨人族の攻撃で大混乱に陥る煌焔の都で、耀はウィラと共にマクスウェルの魔王に、飛鳥とジャックは混世魔王に戦いを挑む。そして“魔王”を名乗る者たちと正面対決する激しい戦乱の下―地下深く光も音も届かない地で、真の魔王の封印が解かれる―。
200ページ超と、随分薄いんでちょっと心配したんだけれど、中身の方は驚くほど密度が濃くてあれこれと伏線や情報、新展開が詰め込まれていて、薄い気は全然しなかったなあ。展開の進捗は遅いといえば遅いんだけれど、ラストのインパクトが凄すぎてそんな印象全部吹き飛んでしまいましたし。
黒ウサギのウサ耳は着脱式だったんだよ! と、黒ウサギ本人も知らなかった新事実が明らかになり、って着脱式では無いとは思うんだが、情報の受信端末として機能している事は以前から黒ウサギ当人が言及していたことだったので、なんか不思議器官ではあったんだよな。そもそも、箱庭の貴族であり帝釈天の眷属だという月の兎、という種族自体、あんまりよくわかんない謎のところがありましたし、黒ウサギってそれがそのまま名前なのか? と黒ウサギについては別に彼女自身が隠しているわけじゃないんですが、意外と情報不足で正体がわからんところがあったんですよね。それが、今回彼女の過去も含めて、いろいろ明らかになって多少スッキリした……って、月の兎、これ壊滅してるじゃないですか!w
やっぱり、黒ウサギってそれがそのまま名前ではなかったんだ、といろいろと納得するところはあったんですが、あの生皮剥いで、のインド叙事詩の英雄のエピソードを月の兎のエピソードにからめてきたのには驚いた。なるほどなあ、それで月の兎は帝釈天の眷属であり、同時にあれだけのギフトを扱えたわけか。インドラの槍と黄金の鎧が一緒に使ってはいけない、とされているのも納得。伝承を鑑みるならば、そりゃ使えんわなあ。

そして、在りし日の「ノーネーム」が名前と旗を失う前の全盛期の姿も垣間見ることになる。ノーネームの前身って、前はこの階層でも尤も繁栄していた大きなコミュニティだった、というくらいの認識だったのですが、そんなレベルじゃなかったぜ。いやでも、冒頭の黒ウサが助けられてコミュニティに加わったエピソードを見たときは、凄いところだったんだな、とは思ったんですが、それでもまだ理解の範疇では在ったんですよ。
ラストのあれの復活見て、呆気にとられましたがな。
あれのあまりの凄まじさに、逆にこれを仮にも封じたという旧ノーネームってのはどれだけ凄かったんだ、という話です。さらに言うなれば、アレをすら倒してしまった旧ノーネームを、完膚なきまでに滅ぼしてしまったという「魔王」って、いったいなんなの!?
ちょっと魔王、舐めてた。箱庭の内部における称号である魔王とは全く違う、神話伝承において名実共に魔王と号された「本物の魔王」は、パないわー。階層が四桁から三桁にあがったら、あれだけ桁違いになるのか。いや、まさに文字通りのケタ違いじゃないか。更にいうと、白夜叉こと白夜王も本来三桁以上の存在なんですよね。そろそろ話のステージが一桁上がり始めた模様。それは同時に、これまで無敵無双だった十六夜の能力に、敵の格や強さが追いつき追い越し始めたという事でも在る。
あんな弱音吐いた十六夜、初めて見た。
これって、彼に絶対の信頼を抱いている飛鳥たちが見たら衝撃以外の何物でもなかったろうなあ。無論、黒ウサだって、自身の家族を失い、またかつてノーネームが生まれてしまった惨劇の時を彷彿とさせる出来事でショックも大きいだろう。彼女には、さらに金糸雀の末路、ひいては奪われた仲間たちの行方という件の絶望も待ち受けているわけで、月の兎の御子の権限が失われてしまっているのと相まって、今黒ウサ一番厳しい時期なんじゃないだろうか。
ここで、出来るならば飛鳥や耀には巻き返して、十六夜の立っている場所まで追いついてきてほしいところなんですよね。特に耀は、春日部孝明の娘として父親が目指した場所に辿り着くポテンシャルは絶対に秘めているはずなので。

旧ノーネームの奪われてしまった仲間、の情報という観点からすると、今回ジンが何か掴んだと思しき「殿下」たちに対する情報は、えらく不穏なネタではあるんですよね。「殿下」がまだ生まれて三年しか経っておらず、彼の立場や存在が、旧ノーネームと深く関わりがありそう、というのがまた……。三年前って、もろに時期的にも合致しますしね。そもそも「殿下」なんて言われている以上、ちゃんとした正体もあるでしょうし。この辺りの情報はどこまで引っ張るんだろう。

正体というと、今回盛大に驚かされたのが、ジャックさん。ジャック・オー・ランタンの正体である。いやあ、ジャックさん、マジになるとかっけえなあ。年長者の余裕たっぷりなダンディなジャックさんもいいけれど、あんなふうに本気になったジャックさんもパないですわー。ここでの飛鳥のジャックへの気遣い方がまた粋で、この娘ってホントいいオンナだよなあ。ジャックさんの正体、あれは驚きでは在りましたけれど、あれが全部の正体ってわけでもないんですよね。彼が主催するギフトゲームの内容からすると、もっと複雑に真実は入り組んでいるみたいですし。
とりあえず、マックスウェルの悪魔はキモいのは確認したw
ウィル・オ・ウィスプがマクスウェルの悪魔に付け狙われてるって、ガチでそういう意味だったんかい!! これはあかんわーw でもお陰で、表紙にもなってる大悪魔、ウィル・オ・ウィスプのリーダーであるウィラ=ザ=イグニファトゥスにえらい親近感が湧くようになってしまったわけですけれど。本来かなり格上で実力も突き抜けてる大人物なのに、耀が保護者みたいになってしまった感もありますし。かわええなあ、おい(笑

とまあ、めまぐるしく変わる展開に次々と明らかになる情報、また敷き詰められていく伏線、と行き着く暇もない中で、最後の最後にシリーズ最大の脅威にして危機が到来。凄まじいスケールにして圧倒的なまでの今までにない絶望感。これまでなら、十六夜くんならなんとかしてくれる、という安心感があったのに、それをも根こそぎ吹き飛ばしてしまう最悪の展開。
激動の始まりである。

シリーズ感想