ログ・ホライズン6 夜明けの迷い子

【ログ・ホライズン 6.夜明けの迷い子】 橙乃ままれ/ハラカズヒロ エンターブレイン

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いよいよ、新章開幕!!

<アキバ>の街中で起こるはずのない殺人事件が発生!
アカツキは「天秤祭」を機に芽生えた焦燥や戸惑いを抱えたまま、
震える心を駆り立て<アキバ>の夜を奔走する。
力を得たい──彼女は今までためらっていた一歩を踏み出した。
前回、「天秤祭」でミノリのシロエの立つ頂きに共に立とうとする意志、志しの輝きを目にし、如何に自分が楽に甘んじ、立ち止まってしまっていたかを思い知ってしまったアカツキ。シロエの一番近くで共に立っているつもりだった自分が、彼と同じものを見ようともせず、ただ依存し自ら立つこともなく寄りかかっているだけだった。大学生である自分などより、中学生であるミノリの方が比べるのもおこがましいほど自立して、シロエと同じ高さで歩もうとしていた。人間として、女性として、大人として敗北感に打ちのめされ、しかし焦燥に駆られたまま何をどうしたらいいのかわからぬまま無様にもがく彼女は、そのまま負のスパイラルへと落ち込んでいく。
このみっともないほどに落ち込んで、迷子の子供みたいに下ばかり見てさまよい歩くアカツキの姿は、もうもどかしくて胸を締め付けられるようで。でも、だからと言ってどうしたらいいのか、なんてわかんないんですよね。こういう問題は、方程式みたいに決まりきった答えがあるわけでもないし、はっきりと単語として表現できる回答があるわけでもない。何かしらの実感を以って、納得と確信を得なければならないのだから。
そのあやふやにして形にならない到達点へと、アカツキが手探りでたどり着いていく過程が、また素晴らしいんだ。一人ではどうにもならない足掻きに、他の女性達との交流が触れることで反応が起こり、その変化の瞬きの中にきっかけを見つけていく。
今回、主人公のシロエを含めた男性陣は殆ど出演しません。シロエについても、あの一瞬の彼岸のカナタでの交流のみ。まあ、あのワンシーンが凄く大きくて、アカツキにとってもついに辿り着いた瞬間ではあったので、その主人公にしてアカツキの慕う男性としての存在感はいささかも揺るぎないのですが。
でも、今回は男性たちはお役御免。さっさと自分は今回は立ち入らないよ、とあれだけ事件にのめり込んでいたのにさっさと場を譲って去っていったソウジロウは、伊達にハーレム主人公じゃありません。女性の立て方を本当によくわきまえている。ありゃあ、大したタマですよ。
自分の世界に閉じこもって迷子になっていたアカツキが、同じく自らの構築した世界に立て篭もっていたレイネシアと図らずもお互い滅多と踏み込ませなかった自身の領域のうちに迷い込んでしまった時、何かがはじけたわけです。この何か、については是非作中にて堪能していただきたい。でも、その弾けた何かによって彼女らを取り巻いていた世界の色は、確かに明らかになったのです。それは衝動であり、また勇気でもあったのでしょう。それは、彼女たちを自らの意志で外の世界に踏み出させ、その輝きは彼女たちを取り巻く様々な女性たちの元へも届き、その心をつないでいく。
そう、そこから始まるお祭りこそ、乙女たちの戦い。ギルドなどといった組織集団の枠組みを超えて、一人ひとりが自立した乙女たちが、手を取り合って全力全開で舞い踊る絢爛豪華なダンスパーティー。

なんとなく、かつて存在した伝説的なパーティー。【放蕩者の茶会(デボーチェリ・ティーパーティー)】がどういったものだったのか、形は違えどわかったような気がするなあ。
これまでは、いまいち普通のギルドと、ただみんながなんとなく集まって一緒のことをしていただけ、という【放蕩者の茶会】の違いがよくわかっていなかったのだけれど、このアカツキとレイネシアを中心として集まった女性たちだけの集いの、甘酸っぱいまでの一体感を通じて、なんとなく実感として【放蕩者の茶会】がなんだったのか。あの集まりがなぜ参加者たちにあれほど大切な思い出として大事にされているかが、ストンと腑に落ちるように理解が染み入った気がします。ああ、素晴らしい。これはギルドの集いとはまた異なる大切さ。あやふやで、しかしビックリするくらいに確かな繋がりの形。なんて、素敵な在りようなんでしょう。

起こり得ない殺人事件が起こってしまった背景には、終わったかに思われた異世界の変容が未だ激変を続けているという衝撃的な内容と共に、シロエがアキバに不在であり、彼も何らかの形で動いている、という事が明らかになり、さらなる激動の展開が待ち受けているのだと知れたわけですけれど、ここで構築された繋がりと希望の光りは、そんな不安を「なんぼのもんじゃい」と思わせてくれる、とにかく素敵で素晴らしい人と人との間に育まれた煌めきでありました。熱いなあ、眩しいなあ、無性に何かに抱きつきたくなるようなこみ上げてくるようなものが抑えきれない、そんな興奮冷めやらぬ女子会でありました。やっぱ、面白いわ。最高。

シリーズ感想