正義の味方の味方の味方 (2) (電撃文庫)

【正義の味方の味方の味方 2】 哀川譲/さくやついたち 電撃文庫

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怪人討伐の依頼―学園長のシャルロットに詐欺まがいで巻き込まれた橙也。その怪人とは橙也のかつての仲間だった。これで一件落着と思いきや、このソフィアという怪人の少女は橙也に付きまとうようになる。なにか面白くない凛奈。逆にそれを面白がるDH学科三馬鹿トリオが加わり、お子ちゃま少女凛奈はさらにもだえるのだった。そんなラブコメ青春を謳歌する橙也たちの一方、実はソフィアには重い使命があった。その裏にはワールドクラスの組織も関与しているようで。彼らの存在に気付いた橙也は、かつての仲間を見捨てられないと動きだすのだが。
悪を滅してしまった後に残されてしまった正義の行く末は……。善悪戦争によって、悪の組織がほぼ消滅してしまった世界。にも関わらず、戦う相手を失ったはずの正義の味方は未だ社会の中で権威と権力を保っている。さて、ならば彼ら戦う相手を失った正義の味方は、次に何を相手に戦えばいいのか。
勿論、正義とは悪の組織と戦うだけのものではなくて、白陽花学園なんかは地味かつ堅実にボランティア活動なんかを推奨しているあたり、非常に健全な正義を体現していると言っていい。シャルロットは、よい教育をしていると思うよ。彼女の目指す正義とは、敵を必要としない正義なのだろう。しかし、世の正義とは、正義の味方とは悪と退治してこそ成立するものなのだ。それなのに、倒すべき悪が居なくなってしまえば、それは存在理由を喪ってしまうということでもある。
ならばどうするか。自作自演で悪を作り出すか、それとも同じ正義の中から悪を選別する他無い。外に無理やり敵を作るか、内を割って敵を作るか、その2つだ。
実のところ、先だって滅せられた悪の組織たちも、果たして真に邪悪たる存在だったかは非常に疑わしい。というか、最初から「悪の組織」だったのか、考えてみると疑念が生じてくる。凛奈の祖父が率いていたゼロウ・ファミリーにしても、ランタンが所属していたヴィランの系譜にしても、その組織理念を見てみるとむしろ正義の系譜に連なるような文言を掲げているのだ。
さながら悪たるを強いられ、しかし誇りを持って悪を名乗ったかのように。

その最後の生き残りである凛奈と橙也が、今は正義の爪弾きモノともいうべきダークヒーロー科に加わっている、というのはまた随分と運命的、はたまた意図的なものを感じさせる話である。

さて、そんな折、死んだと思われていた橙也のヴィランの系譜時代の幹部仲間であるソフィアが現れる。
無限の牢獄の中に囚われていた彼女が、正気を失うような孤独から逃れるために看守と交わした司法取引。その内容は、ヴィランの系譜の組織理念を裏切るようなものでありました。てっきり、彼女は投獄から逃れたいあまりに司法取引に応じたとばかり思って読んでいたのですが。実際、彼女の待遇は悲惨極まるもので、あれはどんなことをしても戻りたくないと思わされる場所であり、彼女の選択は仕方ないものだと同情していたんですけどね。
彼女の本当の絶望は、心残りは、自分のことじゃなかったんだなあ。
組織の理念を裏切ってまで、彼女が手を届かせようとしたものは、ただ自分の最愛の仲間であったランタンの諦観を拭い去ること。希望を知らない少年に、もう一度手を差し伸べること。
その為ならば、身も心も正義に売り渡してなお後悔しないと、覚悟した。その決断の結果が、その救うべきランタンを売ることになってしまったとなれば、彼女の絶望たるや如何許だったか。

しかし、悪の味方たるジャック・オー・ランタンの掲げる灯火は、すなわち絶望の闇を払い去る眩い灯火。
その灯火は、悪にとっての希望の光。
橙也にとっての絶対基準である凛奈が、それが故に自縄自縛に陥った彼を解き放つために行った行為は、自らのもっとも大事なものを投げ打ったかのように見えて、逆にそうすることで彼女にとって一番大事なもの、揺るがぬ指針であり基準である橙也の在りようを守るためだったんですね。あれを見せられれば、彼女こそが総帥に相応しいと誰もが認めるでしょう。
図らずも、善悪戦争当時でも有数最強の悪の組織の大幹部二人を配下に有することになった新生・リナ・ファミリー。悪が散じ、しかし新たな悪が選別されようという時代に現れた、正義の味方の味方たる悪と、それに従う正義の味方の味方の味方。すなわち、悪の味方。そんな新生リナ・ファミリーが担う役割とは何なのでしょう。
悪とされてしまった弱き正義たちを救う最後の味方なのか。
DH学科の三馬鹿の今後や、かなり危ない橋を渡っているシャルロットの動向も含めて、次あたり大きく動きそうな予感。

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