彼と彼女の不都合な真実 (講談社ラノベ文庫)

【彼と彼女の不都合な真実】 南篠豊/鍋島テツヒロ 講談社ラノベ文庫

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下宿先へと向かうため十数年ぶりの空の旅を終えた御鷹一は、空港で大きなカバンを服代わりに着た不思議な少女、トトリと出会う。変ないきさつから同行することになってしまった一たちは、突如として完全武装した集団からの襲撃を受けてしまう。それはトトリが持つ「不都合要因」―ヒューマンエラーが原因だった。トトリを引き渡せば危害を加えないと言われるが、自らもまた「エラー」を持つ一は、トトリを護ることを決意する―!第2回講談社ラノベ文庫新人賞“優秀賞”受賞、不都合を抱えた少年と少女の運命の出会いにより物語が動き出す。
おおっ、と。これはなかなか面白いぞ! 一応押さえておくつもりだけで手にとった作品でしたが、優秀賞を取るだけの出来ではありました。大賞作品の【神様のお仕事】もかなりの良作でしたし、いやいやこのレーベルもちょっと侮れなくなってきたかもしれません。新人につぶが揃ってきたら、レーベルも安定してきますからね。惜しむらくは、タイトルに全然インパクトが無いことでしょうか。正直、読むまでいったいどういう話なのかもさっぱりわからなかったもんなあ。てっきり、思春期の少年少女の色々と青っちろい交流を描いた青春モノかと思ってましたので、いやいきなりわけの分からない少女を拾ってしまったあたりまでその青春路線かと思ってたら、その少女をめぐって傭兵部隊が襲ってきてドンパチがはじまり、その上相手の傭兵隊長が怪物で、人畜無害な高校生かと思われた主人公も事情持ちのパンピーではなかった、というあたりで思ってたのとかなり路線が違ったことに結構驚かされましたし。
せめてもうちょっと、一目見て気に止まるタイトルにならなかったもんか。何れにしても印象に残りにくいもんなあ。
さて、冒頭からの軽妙なトトリとやけに老成してるわりに妙に地に足がついてないような感じだったハジメのコンビのやり取りには惹かれていたのですが、一番最初に襲ってきた傭兵隊の隊長が案外食わせ者で、なかなか憎めない好漢でもあったところから、ビビッとこれはイイんじゃないかという感触が。隊長のみならず、副官の女性に至るまでキャラ立てが行き届いてたんですよね。キャラ立てというよりも、自分の描く物語に登場する人物に対して、末端に至るまで心配りが行き届いているとでも言いますか、パーツや駒として扱うのではなく自分の物語に登場する以上、一人ひとり生きた登場人物として扱いたい、という存念がかいま見えたと言いますか。
物語自体はわりとオーソドックスではあるんですが、その物語を動かす人物たちが末端まで生き生きと動いているとやっぱり惹き込まれるんですよね。
人類という種から突然生まれてしまった不都合要因。弾かれモノとして、幼い頃から気軽に口にも出せない境遇の中で生きてきた二人が巡りあい手を取り合って生きることを願うという、孤独からの癒しの物語。素敵なのは、それを彼らが自由に生きることを肯定し、結ばれることを祝福してくれる存在が、出会ったばかりの二人の周りに居てくれた、という事実でしょう。
その人達が、そりゃあもう常識はずれのぶっ飛んだ存在で、ハジメとトトリの特異性を埋没させてしまうほどの強烈なキャラクター揃いばかりだった、というのは随分優しいお話だったと思うのですけれど、そういう甘さは決して嫌いじゃないんですよね。辛い思いをしてきた子たちが、お互いに手を取り合って幸せになることは、コチラもほんのりと温かい気分になりますから。
囚われのお姫様を、仰天するような隣人たちの手を借りて助けだす。王道ですけど、面白ければやっぱりイイなあと思いますよ。
しかし、トトリの持つヒューマンエラーは、今後の二人の仲を考えると結構辛いものですよね。気楽にキスも出来ませんし。ハジメがよっぽど理性を鍛えるか、もう最初からイタすときは物凄いことになってしまうと覚悟してイタすか。乱暴にされるのが好きです、といわれるとそれはそれで燃える気もしますがw