神様ドォルズ 12 (サンデーGXコミックス)

【神様ドォルズ 12】 やまむらはじめ サンデーGXコミックス

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匡平と阿幾、対決の行方は!?ついに完結!

阿幾はパワーアップした暗密刀と共に、匡平と詩緒に宣戦布告!!
匡平は阿幾と決着をつけるため、独り戦いを挑む。
フラッシュバックする二人の過去、それぞれの感情が激突する時、思いがけない奇跡が起動する……!!
衝撃と感動が待つ堂々の最終刊、ついに登場!!
玖吼理って、こんなに表情豊かだったっけ、と目を瞠ってしまうほどに詩緒と一緒に戦っている時の玖吼理の一つ目が、クルクルと表情変わってたんですよね。詩緒の感情と同期するように、ではなくてちゃんと玖吼理としての感情で、詩緒と一緒に戦っている、という風に。負けん気を見せて眉をギュッと絞ったり、強力な一撃を食らって詩緒が意識を失った時には大きな涙の雫を目尻に浮かべていたり。
玖吼理と詩緒が覚醒したのは、村に帰ってきてからだったはずだけれど、ここまで玖吼理に露骨に感情が見えるようになったのは、この最後の戦いが初めてだったんじゃないかな。お陰で、なんだか玖吼理に感情移入しまくってしまった。それだけに、詩緒と玖吼理の別れは余計に胸を打つ。いや、玖吼理独自の人格みたいなものが芽生えてしまった以上、これは必然だったか。前巻の感想では、玖吼理だけは案山子の中でも最後まで残るんじゃないかと予想したんだけれど、あれはあくまで詩緒の操る案山子としての玖吼理であって、詩緒の理想に応える神様としての、詩緒の大事な相棒としての玖吼理だと、残って唯一の権威となってしまうのは旧弊が粉々に打ち砕かれようとしている村の将来を考えるとなるべく避けなければならない展開だったからなあ。それでも、あんな可愛い玖吼理は残って欲しかったけれど。

匡平と阿幾、最後の戦い。でも、どちらもお互いを憎いとか許せないとか認められないとかいう段階は既に通り越してしまっていて、もうお互い色んな物を飲み込み受け入れあっている。勿論、全部理解しあっているわけじゃなくて、匡平が阿幾と先生に感じていた裏切られたという感覚を阿幾は結局さっぱりわかっていないままだったし、阿幾の憎しみも薄れはしても晴れたわけじゃない。でも、そんな行き違いがあると認めた上で、もうその変化をそういうものだ、と受け入れる下地は、これまでの様々な衝突を通じて出来ていたんですね。
ならなんで戦うんだ、という話なんだけれど、友達だからこそお互いの間に生じてしまった断裂に決着を付けないといけなかったのでしょう。過去を過去にして、次に進むためには、なあなあで何となく過ごしてしまうには、彼らが負った傷は大きすぎた。はっきりと分かる形で二人共区切りが必要だったのでしょう。
だからこそ、阿幾には終わって欲しくなかったなあ。
それだけ、彼がやってしまったことは大きすぎたという事なのかもしれないけれど……。あのオバさんにしても、ああしないと決着がつかないことだったのかもしれませんが。因果は巡る、ということなのか。

結局、村にあった案山子は全滅し、案山子を作っていた木々の茂った森もまた焼き払われ、案山子という特別な力によって成り立っていた村は、力を逸したことで強制的に普通の村へと立ち戻ることになり、村人たちはそれぞれこれまでとは違った生き方を強いられる事になっていく。
旧弊は打破されたわけだけれど、これまで通りにいかなくなった、というのは大変なことなんだよなあ。生活そのものが成り立たなくなった人も多いだろうし。それでも、若い連中がへこたれずにやってけてるのは頼もしい限り。なんだかんだと案山子のオーナーたちは、大した若者たちばかりだったわけだし。
あんまり特別な出来事があるわけでもない落ち着いたエピローグで、匡平と日比野さんの進展具合もほとんど触れてくれなくて、その辺りはちょっと不満なんだけれど、あの玖吼理の残骸から新たな芽がふき、それを詩緒が憂いのない清々しい笑顔で見守っているというシーンは、このシリーズの締めくくりとして文句のない綺麗なものでした。
シリーズ完結、お疲れ様でした。

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