それゆけ!  宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ【完全版】12 (朝日ノベルズ)

【それゆけ! 宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ 【完全版】12】 庄司卓/赤石沢貴士 朝日ノベルス

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戦闘協定(レギュレーション)に違反する強力戦闘艦を投入して「アイアンフィスト」争奪戦を勝ち抜いたゼンガーがたちに、戦時監視委員会(WASCO)は勝利の権利を没収した上で
事情聴取をすると通告する。
しかしゼンガーの真の目的は「アイアンフィスト」を手に入れることではなく、破壊すること。
そうすれば「オールドタイマー」の遺産が出現するというのだが、果たして――! ?
1993年から始まった人気シリーズがついに完結! !
まどかがやたらと厨二病厨二病と連呼してたり、彼女たちが当たり前のようにスマートホンを使っているのを見て、コンコンと湧き上がってくる違和感とも困惑ともつかない感覚。あんたたち、スマホどころかそもそも携帯電話もない時代のお嬢さんだったじゃないですか。バリバリ二十世紀ガールズだったじゃないですか。いつの間に21世紀の女子高生になってたんだよ! と思ってたら作中でもきっちり突っ込まれてた。キャラやお話自体は据え置いたまま時代だけがきっちり二十年経過してるという時間錯誤。SFって凄いな、こういう時間感覚のパラドックスすらネタに出来るのか。敢えてこのネタは突っ込んできたんだろうけれど、この時間という概念の不安定さ、既定概念を揺るがすネタ振りには参ったと言わざるを得ない。だいたい、あの終わり方にもびっくりデスヨ。時間てものはもっと孤立したものだと思っていたし、時間という概念をテーマにしたSF作品だって、大概にして時間を確固として直列したものとして扱い、その移動と変化についても厳然と制限を化している。だからこそ、時間を覆して変化するものを劇的に魅せることに繋がってもいるのだけれど、この作品はそれとはまったく違ったアプローチで時間という概念の壁をたたき破ってしまったわけで、あのラストの光景には呆気にとられると同時に、ちょっとした感激みたいなものを抱いてしまった。
わりと自分にはSFというものに閉塞した世界の行き止まりを感じることが多いのだけれど、庄司さんのSFについては、概してそのラストに世界の果てしなさ、可能性の無限さを感じさせてくれて、それは未来への希望とか行き止まりなんてないという安心感を与えてくれるので、ほんと好きなんですよねえ。
諸々の作品が終わっていく中で、庄司さんのSF作品では最先発だった本作が、随分と周回遅れでこうしてようやくゴールへと到着したのですけれど、やっぱり庄司さんらしいSFとしての終わり方だったなあ、と思わず微笑みが漏れてしまいました。
1993年にはじまった本作。まあさすがに私がシリーズを追いかけ出したのは振り返ってみると97年5月あたりに出ていたシリーズをかき集めた形跡があったので、その辺りからなのですが、それでもざっと16年。随分と遠くまできたものです。でもまだこれで全部終わりじゃないですよね。今後も新作、どんどん追いかけ続けていきたいと思います。と、その前に、この朝日ノベルスでの新装版シリーズは随分と好評だったようで、もう少し番外編が続くようで、もうちょっとヤマモトヨーコたちとのお付き合いは継続のようです。さてさて、あの最後の洋子の爆弾発言は何を巻き起こすのか。まだまだ楽しみなことです。

庄司卓作品感想