デスニードラウンド ラウンド1 (オーバーラップ文庫)

【デスニードラウンド ラウンド 1】 アサウラ/赤井てら オーバーラップ文庫

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女子高生傭兵ユリの初仕事は人気キャラクターの襲撃! ?

多額の借金を持つ女子高生のユリは返済のために、銃を持ち、己の命をリスクに晒す……そんな危険な傭兵稼業に手を出した。
彼女は合法・非合法を問わず危険な仕事を請け負う「死に損ない」ばかりの松倉チームで仕事を始めるが、なぜか連れて行かれたのは都内のバーガーショップ。
「こ、これ、ヤバくないですか! ? 超ヤバイですよね! ?」
ユリの初仕事は、なんとバーガーショップのマスコットキャラクターを襲撃することだった…!
不可思議な仕事依頼をきっかけに、銃弾と血と笑い声が飛び交う常軌を逸した夜が始まる──ユリは未来を切り開くために戦い抜けるのか! ?
らんらんる〜。
美味しい美味しいと涙を浮かべながらご飯を食べるんですよ、このユリちゃん。かき揚げ丼をですね、一生懸命かきこみながら。美味しい美味しいって。
きっと、それで十分だったんです。この娘が、死にたくないと、生きたいと、何としてでも生きていたいと願うことを、全肯定するには。彼女がそう願ったことによって、どんな酷い有様になったとしても、この娘が生きたいんだと生にしがみついて足掻くのを、あんな風に泣いてご飯を食べてる姿を見せられたら、否定なんて出来ないですよ。
食べるってことは生きることで、生きる意志そのものなんだと、色んな物をズタズタにされながらも、それだけは揺るがない真実として信じることが出来る。多分、松倉さんも食べることに対する観念は一緒なのだろうと思う。だからこそ、あの人は料理にあれだけ拘って、仲間たちにも全力で美味しいものを食べさせようと振舞っているのではないでしょうか。美味しいご飯を食べたいという本能は、何よりも生存本能に直結しているのですから。業界一死ににくいとされる傭兵集団のリーダーとして、彼はそれを実践しているように思う。

【ベン・トー】シリーズで長らく一世を風靡し続けているアサウラさんですが、あのシリーズを出す以前のこの人はというと、そりゃあもう女の子とガンパウダーとこの世の理不尽をごった煮にしたような、いっそ凄まじいと言っていいくらいグロテスクに美しい破滅の物語を描いた人でもありました。【バニラ A sweet partner】は今なお屈指の百合ガンアクション犯罪小説として異彩を放ち続けています。あれから6年。【ベン・トー】という異色作で培われた異能と偏執的なまでの描写力と変態的な発想力をこれでもかとつぎ込まれた本作は、もはや怪作などという言葉では括りきれないほどの狂気の産物としてこの世に産み落とされてしまいました。
ここまでハッチャケてしまったものを世に出したオーバーラップ文庫という存在には、レーベル創設から戦慄させられた次第です。初っ端から無茶やりすぎだよ!!(笑
いやあもう、凄かった。何が凄かったって、何から何まで凄かった。ほとんどアウトに近いアウトなネタの数々に、その狂気の産物たるネタの数々を笑い飛ばす冗談のネタにせず、マジなダークサイドに突き飛ばした挙句に悪趣味なくらいにグッチャグッチャの奈落の底に叩き落とすという救いの無さ。なんでこれで読んでて鬱に入らないか不思議なくらいの酷い顛末の数々。
はっきり言ってこの話、滅茶苦茶重いです。ヘヴィーどころじゃありません。ユリの境遇からして悲惨極まるグロテスクさ。正義もなけりゃ救いもない。だからといって、その救いの無さを真面目に受け取るには、あんまりにもネタがふざけすぎていて、いやもうよくこんなふざけたネタでこんなシリアスでダークな話を展開できるもんだと感心する他ありませんよ。どうやったらこんなん両立、というかブレンド出来るんだ?
松倉さんたち、ユリの同僚になった傭兵たちは腕利きである上に、イイ人たちです。何だかんだと新人のユリのことを気遣って親身に面倒見てくれて、ちゃんと仲間として扱ってくれてましたしね。
でも、仲間にとっては良い人でも、そこはそれ、合法から外れた非合法のアンダーグラウンドで死を撒き散らすプロの傭兵でもあるのです、彼らは。そこに倫理など存在しないし、良心なんて存在しません。生き残るためにはなんでもします。それこそ、なんでもです。
正直、主人公サイドがそこまでやるか、ということまでやらかしてくれて、あのシーンはさすがに絶句して固まってしまいました。
感心したのは、ユリという娘が凄かったのは、ある意味ここからだったかもしれません。
あの出来事に一番ショックを受けていたのはこの娘だったでしょうに、そこからこの娘、一切生き残るのに無駄なことはしてないんですよね。行動のみならず、心理面においてすら松倉たちに不信や拒絶を抱いていないのです。ただただ生き残るのに必死になって、涙を流して悲しみながらも全部飲み下して受け入れて、絶望すらも置き去りにして、ただただ無様なほどに足掻いてむしゃぶりついて生きることに執着し続けるのです。
生々しいまでに剥き出しの、生への執着。
でも、それをどうして否定できるでしょう。美味しい美味しいと泣いてご飯を食べてたこの娘が、生きたいと鼻水垂らしてしがみつくのを、どうして拒否できるでしょう。
死にたくなけりゃ、頑張って死に物狂いで生きるしか無い。全部眠って忘れて夢や希望を竈にくべて燃料にして、辛い現実を生きるのだ。
生きてりゃ美味しいご飯を食べれるのだから。

大野君の八艘飛びの回想のくだりは、腹を抱えて爆笑してしまった。やっぱりこの人、ベン・トーでもそうだったけれど、過去回想のエピソードに関しては尋常じゃないくらい笑えるよなあ。