絶対城先輩の妖怪学講座 (メディアワークス文庫)

【絶対城先輩の妖怪学講座】 峰守ひろかず/水口十 メディアワークス文庫

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 妖怪に関する膨大な資料を蒐集する、長身色白、端正な顔立ちだがやせぎすの青年、絶対城阿頼耶。白のワイシャツに黒のネクタイ、黒の羽織をマントのように被る彼の元には、怪奇現象に悩む人々からの相談が後を絶たない。
 季節は春、新入生で賑わうキャンパス。絶対城が根城にしている東勢大学文学部四号館四階、四十四番資料室を訪れる新入生の姿があった。彼女の名前は湯ノ山礼音。原因不明の怪奇現象に悩まされており、資料室の扉を叩いたのだ――。
 四十四番資料室の妖怪博士・絶対城が紐解く伝奇ミステリ登場!
はじめは現代版【巷説百物語】かと思ったら、最後はMMRになっていた。
ぬらりひょんの正体は○○だったんだよっ!! なっ、なんだってー!?
いやいやいや、いくらなんでもそのネタは面白すぎますよ。それまでの実直な妖怪薀蓄から一転して奇想天外すぎるフリに、思わず吹いてしまいましたがな。それはない、それはないw
基本的に妖怪は存在するも実在せず、という学問的スタンスで進行していただけに、ユーレイちゃんが長年悩まされ続けていた耳鳴りの真相から、ぬらりひょんの正体に基づくある旧財閥の秘されし罪業という展開にはさすがに面食らったのだけれど、傲岸不遜な妖怪狂いの怪人・絶対城阿頼耶と彼の小間使いとして働かされることになったユーレイこと湯ノ山礼音の軽妙な掛け合いと、妖怪に絡んだ、或いはこじつけた事件を次々と解決、もしくはでっち上げて金銭を巻き上げていく、それ詐欺じゃね? というお話の数々は、得意の妖怪ネタをより学問的な方向から掘り下げながら、今までの著作とは違った新境地を構築していて、峰守ひろかずを知らない人も元からのファンの人も区別なく楽しめる作品になっていたんじゃないでしょうか。
実は前から妖怪薀蓄についてはもっとやりたかったんだろうなあ。【ほうかご百物語】では経島先輩がそりゃもうこれでもかと喋り足りなさそうに語りまくっていた薀蓄ですけれど、此方ではさらに深く長くひたすら絶対城先輩が語る語る。遮ったら絞め殺されそうな勢いで語る語る。でも、京極堂以来、こういう薀蓄話は私も大好物なので思わずニコニコしながら絶対城先輩の熱の篭った論に聞き行っておりました。いやー、幽霊って厳密には妖怪のカテゴリーなんだ、あれ! この幽霊の話については初めて知るような情報や目からウロコの内容もあって、思わず礼音と同じく「へぇ!」と唸ってしまいました。いや、この話が本当だとすると、今まで当たり前のように思っていた幽霊の既成概念がけっこう崩れるんですよね。落ち武者の幽霊とか、わりと根本から存在否定されてないですか、これw

さて、鉄甲はしないんですか、と尋ねたくなる怪しい風貌の絶対城先輩ですが、その風体や横行な名前は商売柄(?)の看板のようなもので、ちゃんとした場面ではきちんとTPOをわきまえた格好や言動に移行するあたり、実は社会性については礼音よりもしっかり備えているんじゃないだろうか、と思えてくる。礼音の方が、無地のTシャツにホットパンツという女子大生にあるまじき格好をどんなシーンでも改めないあたり、なかなかどうかしている。ってか、コンパにその格好はないよ、さすがに。それどころか、口絵の礼音ちゃんの格好はどう見ても油断してる部屋着以上のものに見えないんですけれど。これで外うろつくとか学校行くとか、ないわー。この娘に、絶対城先輩の格好を云々言う資格はあんまりないように見える。
まあ、格好はともかく、あの傍若無人な性格について文句をいうのは、それに振り回されている限り権利ありとは思いますけどね。なかなかの絵に描いたような傲岸不遜、傍若無人、居丈高で性格も悪く口を開くと罵詈雑言が自在に行き交う、とてもお付き合いしかねる人格の持ち主である。
早々にこれに慣れてしまう礼音は、なかなか大した打たれ強さというか、精神的に鈍感というか、実は大物なんじゃないだろうか。
とはいえ、確かに深く付き合ってみると、この歪んだ性格が拗ねたわんこみたいに可愛く思えてくるから不思議である。意外ときめ細やかに気遣いが行き届いてたり、口ではなんやかんや言いながら実は結構礼音のことを大切に扱ってたり、時々ストレートに素直だったり優しかったり、と後半に差し掛かるにつれて違う側面が見えてくるので、心憎い限りである。礼音にしても、仕方ないなあこの先輩はデュフフフ、みたいな感じでハマっていってるような気がするが、それはドツボだぞ、お嬢さん。まあ、こういう偉そうなのに時々もろにデレたりされたら、たまらんものがあるよね、わかるわかる。
次があるかまだわからないそうだけれど、これはもう少し続き読みたいものだなあ。