ブレイブレイド3 - 惨下の都 (C・NOVELSファンタジア)

【ブレイブレイド 3.惨下の都】 あやめゆう/しばの番茶 C・NOVELSファンタジア

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“虚神”も“鉄鎖の泉事件”もすべての黒幕は宰相ロンデニオだ―せめて一発喰らわせてやりたいと敵の隙を狙って帝都に潜むジンとマキナ。義賊を名乗る反政府組織『徒花』の仲間になり、帝国が隠し続けていた地下迷宮へと向かう。その迷宮が巨大な『虚工物』ではないかときき、新たな陰謀を感じるジン。いっぽう、宰相と面会する学院長に伴われ帝都を訪れたローズマリーたちは皇室直属騎士団の『徒花』掃討作戦に協力を依頼されてしまう…。大転回のシリーズ第三弾。
二巻の感想で、ローズだけはジンに対して怒っていいよ、と言ってたら、実際怒ってみたらこの妹、完全にジンと同類じゃないか!!
いやもう、これ笑うしか無いね。その価値基準こそジンとはやや違うものの、一度こうだと決めたら何があろうとやってのける、シンプルに言うと頭にきたらぶん殴る、の発想は完全にジンと一緒。これまで「英雄の娘」という括りに縛られていたが故に小さく纏まってしまっていた少女が、「自分はジンの妹だ!」と開き直った結果、勇者として見事に覚醒してしまったのは笑うしかないよね。あの性格も能力もデタラメな「英雄」様の血を、明らかにお母ちゃんの血の方が駆逐してるじゃないか。英雄も頭の上がらないという人物で、しかも父親の違う子供が二人とも「これ」ってのは、どう考えても母親の方が原因じゃん(笑
まあ流石にあのジンほど敵対=殲滅思考じゃないので、ローズの方が穏便にも見えますけれど、比較対象のジンがあれなだけで、筋を通させるという意味ではあれ、ローズも容赦なさそうなんだよなあ。相手の地位とかもう眼中にないだろうし、許せないとなったら相手が誰であろうと相応の報いは何としてでもウケさせるんじゃないだろうか。絶対に泣き寝入りはしないぞ。
その意味では、自分でぶっ飛ばして片を付けるジンよりも困難な道筋にも思えるのですが、その辺はやっぱり勇者なんだろうなあ。
というわけで、勇者という立場と英雄の娘という身の上に縛られて雁字搦めになっていた妹が、兄貴の断固としすぎる行動に価値観を揺さぶられ、自分が拠り所としてきた秩序と正義が随分と恣意的で身勝手なものだとわかってきて、じゃあどうすりゃいいんだ、と散々頭を悩ませた挙句にぶちきれ、「自分はジン・アークロストなんだ!」と開き直った結果、つまりジンと同じ「気に入らねえからぶん殴る」という発想に至ってしまうというお話でした。
って、ある意味これ大惨事だw

すべての元凶にして黒幕、みたいな雰囲気だったロンデニオが、先の虚神戦争の真実と相まってどうにも締まらない結果になってしまい、ジンとしては怒るに怒れない形になってしまったんですよね。ジンの怒りというのは概ね向こうの都合を押し付けられて意志を無理やり歪めさせられる理不尽に対して、のものなので、ロンデニオみたいなのはぶっちゃけ、勝手にやってろ、てなものなのでしょう。巻き込まれる事については迷惑だし振り払うけれど、彼としてはそこまで怒る事じゃないんでしょうなあ。代わりに、こういう身勝手に対して激怒するのがローズだったわけです。基準の違いですな、このあたり。
しかしまあ、アニスの楽しそうなこと楽しそうなこと。人生浮かれきってるよな、この娘。そんなに面白いかねえ、と思うし、無責任だなあと思うところだけれど、ここまで屈託がないとアニスだしなあ、と苦笑するしかない。まあこういう娘だからこそ、ローズと友達になれたのだろうけれど。

もう我慢するのやめた! と自分の勝手を押し通すことにしたジンだけれど、やってることは何だかんだと身近な誰かの尻拭いばっかりというのも因果な話。大事なものが少ないだけに、身勝手だからこそ身勝手に自分の好き勝手に、親身になったやつは見捨てないし、大事な奴がやらかしたことの後始末は責任をもって背負おうとする。もうちょっと無責任に生きればいいのに、と思うところだけれど、それが出来ないからこそ長らく我慢もしていたのだろうし、選ぶとなった時に手段も選ばず被害も考慮しないくらい徹底してしまうんだろうなあ。でも我慢するにしても、我慢しないことにしたあとにしても、自分の内側に入れずに拒絶してる、というのは確かにあると思う。だから、あのモニカのジンに対する糾弾は的を射ているようで聞いててかなり痛かったんですよね。何にせよ一方的なんだよなあ、ジンの思考回路というのは。そんな彼の懐にスルリと入り込んでいるのがもしかしたらマキナなのかもしれない。彼女のあの突発的な行動からすると、思いの外すんなりと収まるところ収まるのかもしれないなあ。
さて、なんか予想だにしない人物が予想だにしない行動に出て、なんぞこれ!? と面食らう中で次があっという間の最終巻。いったい着地地点がどこにあるのかサッパリなんだが、とにかく嫌というほどわかったのは、この英雄とその娘と息子と奥さん、つまりこの一家は絶対に敵に回してはいけません、という事ですな。
マジヤバいです、この家族w

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