もちろんでございます、お嬢様3 (ファミ通文庫)

【もちろんでございます、お嬢様 3】 竹岡葉月/りいちゅ ファミ通文庫

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魔術でも、天恵でもない。この出会いこそ――奇跡。

ダニエルの一件以降、微妙にぎくしゃくしているアンジェリカと九郎。
そんな九郎の前に、本来の主、水芭様に瓜二つの女の子が現れる! 彼女について探るべく、九郎はかつての仲間、《九尾》の玉藻の力を借りることにするのだが……。一方アンジェは、このトウキョウに潜む『影』が、日に日に色濃くなっていることに気づく。平和が望まれたその記念日に、九郎たちに迫るものとは一体?
そして、アンジェの選択と九郎が出す答えとは――? 堂々の最終巻!
戦後の九郎たちの苦労を見ていると、【絶対可憐チルドレン】の超能部隊も、みんな無事で戦後を迎えたらこんな風に戦後の混乱期をそれぞれ力強く生きていたのかな、なんてことを思ったり。まあ天恵持ちと絶チルの超能力者では社会的な立場がだいぶ違いそうなので、同列に並べて見ることは勿論出来ないんですが。
今はバラバラに生計を立てている天恵部隊の面々だけれど、その心の奥には主である皇族、引いては直属の上司だった水芭に対する敬慕と忠誠があり、やはり彼らにとって戻るべき場所、在るべき場所は水芭の元、だったのです。たとえば玉藻なんか不器用なりに女優という夢に向かって頑張っていたわけですし、他の面々もなんやかんやと今の職場については思い入れもあったはず。でも、水芭が戻った時嬉々として彼女の元に集っていったんですよね、この人達。それは、結局九郎も同じでアンジェリカと『マグノリア・ホテル』に未練を残しながらも、水芭が掲げる平和への大志に身を捧げる覚悟を決めてしまうのでした。
仕方ないっちゃ仕方ないんですよね、この段階ではまだ九郎には水芭と仲間たちを振り切るだけの絆をアンジェリカたちと結べているとは言えなかったのですから。
確かに、アンジェリカが自分を死人と呼び、九郎たちから距離を置いてしまうだけの過去があったんですよね。正直、ここまでやらかしてしまっているとは思いませんでしたよ、彼女。てっきり、巻き込まれただけで家族同然だったニッポン人の女性を黒魔術で化け物にして兵器として殺してしまった父親の罪を、自分のことのように背負っていただけだと思っていただけに、まああれだけのことをしでかしてしまってたら、抜け殻みたいになってたのもわかるんですよね。九郎に興味を寄せながらも必要以上に踏み込むことを躊躇っていたのも、臆病とは言い切れない。でもまあ、何にせよ登場人物の掘り下げが全体的に足りてない気がするんですよね。アンジェリカの父親にしても、魔術師としての顔と父親としての顔のすり合わせがうまくいっていない気がするし、メインのアンジェリカと九郎の関係も踏み込んだものが全然なかったですし、紅緒に至っては彼女自身の事情と九郎たちの事情が一切交錯しないまま終わってしまいましたし。一連の事件の黒幕サイドにしても、全くその内側に入り込むことなく終わってしまったわけで……事態は大きく動きながらもその内側を垣間見ることなくずっと外側から傍観したままで終わってしまったような感じなんですよね。ちょっと打ち切り気味だった影響もあるんだろうけれど、戦後すぐというあの混沌とした時代に明治初期の開明的な空気が合わさったような良い雰囲気を生かし切れないまま終わってしまったなあ、という感想でした。いささか勿体無かったかなあ。

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