昨日まで不思議の校舎 (創元推理文庫)

【昨日まで不思議の校舎】 似鳥鶏/toi8 創元推理文庫

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超自然現象研究会が配布した“エリア51”の「市立七不思議」特集が影響を与えたのだろうか?突如休み時間に流れた、七不思議のひとつ「カシマレイコ」を呼び出す放送。そんな生徒はもちろん存在しない。さらに「口裂け女」「一階トイレの花子さん」の悪戯まで見つかった。なぜこの三つなのだろう…。調査を進めた葉山君は、ある真実に気づく。ますます快調な、シリーズ第五弾。
思い返せば、シリーズ第一作の【理由あって冬に出る】からして、学校に伝わる怪談・七不思議の一つである「壁男」がテーマであり、その後も七不思議のうち「立ち女」「「天使」の貼り紙」「フルートを吹く幽霊」についてはその後起こった事件を通じて葉山くんたちが解決するに至り、実はそれらの怪談は全部実話だった、という事実が発覚したのですが……。







まさか、残る「口裂け女」「カシマレイコ」「一回トイレの花子さん」まで加わり、学校に伝わる七不思議が全部実話だったとか、むしろ本物の怪奇現象でした、というよりもなんか怖いですよ!!
まったく、なんちゅう学校だ。
突如、たたみかけるようにして間断なく次々と起こった一連のイタズラ。幾つもの場数を踏んで相応に判断力観察力が鍛えられてきた葉山くんですが、さすがに今回については手も足も出ず、と言った感じで伊神さんのご出馬と相成ったのですが、これはしょうがないですよ。あまりに発想の盲点すぎた。むしろ、事件が発生した当時、現場にいて連続して起こっていく流れの渦中に居たからこそ、これが同一犯による犯行というのが強く印象づけられたんじゃないでしょうか。
でも、伊神さん現場に居なかったからと言って、普通話を聞いただけで真相に到達しますか? 固定観念なんぞに縛られない人種だというのは前々から明らかでしたけれど、この人の頭の中はちょっとおかしいを通り越していささか踏み外している感すらある。将来的にこの人、一体何になるんだろう。とても普通の勤め人になれるとは思えないんだが。
そもそも、一般生活すら送れているのか定かではないのですが、だからといって葉山くんが家まで行ってまめまめしく御飯作ってあげたりするのは、ちょっと違うんじゃないですか!? それは、伊神さんの彼女さんとか、そこまでは行かなくても彼に何らかの慕情を抱いている女性がやって格好のつくもので、後輩で男のあんたが甲斐甲斐しくするもんじゃないでしょう! 通い妻か!! しかも、なんか似合ってるし!!
第一作では伊神さんの性別がわからず、でもあまりにも葉山くんとお似合いなところが散見されて、えらく頭を悩ましたのが懐かしいのですが、この際性別などはどうでもいいので、内縁関係になってあげてもいいんじゃないだろうか、と思うくらい葉山くんの嫁体質が印象的な今回でした。あー、柳瀬先輩も葉山くんについては「あたしの嫁」って感じで扱ってるもんなあ。
けっこう、前回翠ちゃんが出張ってきたことに危機感を抱いたのか、柳瀬先輩かなり積極的に葉山くんにいちゃつこうと仕掛けてきてたんですよね。ただ、生来の性格か、どうもフザケているような真剣ではないような茶化した雰囲気がつきまとっていて、それはどうやら当事者である葉山くんも如実に感じ取っていたみたいです。つまり、彼女が本気かどうか掴みかねている、と。
ようやく、と言っていいのか葉山くん本人の口から彼女に対する気持ちが聞けたので、えらくホクホクとしてしまいましたが、葉山くん当人としてはいささか攻めあぐねているんだろうな、これ。考えてみると、今回随分と積極的に事件解決に動いていたな、と思ったのですが、彼自身軽々と首を突っ込みすぎているんじゃ、という反省を伴いながらも足を止めないあたり、伊神さんのような「あちら側」の人種に何とか近づきたい、というしがみつくような必死さが垣間見えます。なるほど柳瀬先輩もまた伊神さんと同じ「あちら側」の人種なんじゃないかという感触こそが、彼を必死にさせる理由の一つだったんだろうなあ、というのがなんか納得できた次第。
男の子だなあ。

で、肝心の事件の真相ですが、これがまたほんとに薄ら寒くなるような事実が、当のイタズラとそれを仕掛けた犯人の思惑とは別に、その奥の奥に不気味に転がっていて、何ともゾッとさせられるところでありました。だいたい、一連のイタズラが「一連の」になったこと事態が、本当にまったく偶然で誰の意図したものでもなかった、というのが怖い、マジで怖い。
これで、ある意味「壁男」からくすぶり続けていた七不思議の真実は全部明らかになってしまい、消化されてしまったので、なんとなく終わったなー、みたいな感覚に囚われてしまったのですが、幸いにしてシリーズはまだ続くようでして。そうだよなあ、此処で終わったら綺麗に片付いたようで肝心の人間関係とかまだ全然カタついてないもんなあ。なので、続いてくれてよかったです。今回出番のなかった翠ちゃんカムバックを願いつつ。はははっ、荒れろ修羅場れ。

似鳥鶏作品感想