GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン 6(上) (電撃文庫)

【GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン 6(上)】 川上稔/さとやす(TENKY) 電撃文庫

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『──欧州覇王は、君達を赦さないとも』
 歴史再現の名のもと巴里の水攻めを敢行しようとする羽柴勢。それに対し六護式仏蘭西は旗艦・狩猟館率いる大艦隊を北条と合流させ、関東の地で毛利の備中高松城戦と北条の小田原征伐という二つの歴史再現を同時に行うという奇策に打って出た。
 K.P.A.Italiaに代わり事実上の聖連代表となったM.H.R.R./羽柴と、欧州覇王・六護式仏蘭西/毛利――二大勢力の争いの行方は?
 その一方で、トーリ達武蔵勢は“移動教室”最終日に行う毛利と北条との戦前会議のため、自分達の方針などを確認していく。
 各陣営の集合と再配置、勝利とその先を見据えた策謀、それに対し、トーリ達武蔵勢はどのように動いていくのか? ほかにもホライゾンの「ウェルカム」宣言で意識し始めた人間関係や、母親の襲来に狼狽えるミトツダイラとか、様々な要素が動き出す、  戦国学園ファンタジー、第六話開幕!
戦争を、戦争を、一心不乱の大戦争を!
というわけで、関東と西国を股にかけた大戦争の幕が切って落とされる、ための戦争準備のプロローグ編というのが上巻の嗜みです。まあ上巻だしね。700ページ超える一冊を全部戦争準備に費やせるのはこのシリーズくらいの贅沢さだなあ、としみじみ思ったり。ただ、いつもなら翌月には続刊が出てくるので全然待たされる感はなかったんだけれど、今回は一ヶ月間があいてしまうがために結構な待てを食らわされた気がする。イイトコロだったのにいい所だったのに。分厚い割に読み始めると気がつけば読み終わってるからなあ、このシリーズ。
さて、このシリーズの場合戦争準備というと、とにかく正純があれこれ手を尽くして、戦争しようぜ! と狂乱しているのが常なのだけれど、今回に至ってはテルさん率いる毛利・仏蘭西と氏直さんの北条・印度連合も、ひいては羽柴陣営も揃って「戦争しようぜ!」とやる気満々なものだから、正純もテンションあがってか負けじと「戦争しようぜ! 戦争しようぜ!」と何時にも増して連呼する始末。誰か、平和非戦志向の人はいないのか。居ません!

しかし、こうしてみると西国の覇者としては織田や徳川の後塵を拝した印象の在る毛利だけれど、これが欧州覇王としての仏蘭西としてみると、やはりこの時期では随一の強国なんですよね。英国なんてまだまだにわかだぜ、と言い切ってしかるべきほどの。それほど、太陽王の成し遂げた威光は大きかったわけだ。快進撃を続けている印象だったOdaと羽柴も、仏蘭西が相手だとそうやすやすと蹂躙は出来ないぞ、というスケール感がある。それに加えて、先代のアンヌが遺したものを背負い次代に繋げようという決意や覚悟がルイとテルの夫婦には備わっていて、仏蘭西の国民全体も同じくアンヌの想いを担っているものだから、これは強いよなあ。そして、トドメには彼らなりの将来の展望を持っているというのを、交渉の中でテルさんが示したことで、武蔵や羽柴と違った末世への対抗策を練っている、という次の世界を背負っていく資格を見せてきたんですよね。織田でも羽柴でも松平でもなく、世界を担うのは仏蘭西だ、と。これは強敵ですよ。
ここで仏蘭西に傭兵として加わった竜のベルンハルトは、ベルンハルト・フォン・ザクセン=ヴァイマルのことか。三十年戦争でも屈指の名将の一人。天竜地竜の軍勢が加わったとなると、巴里もそう簡単にはオチないですよ。欧州サイドはマジで人材が厚い。

逆に北条の乏しさは何なんだろう。実質氏直さんしか出てないし。小田原戦役では毛利から人形を借りるみたいな話になってるし。確かに、北条の家臣って誰と聞かれるとここは意外とパッと出てくるような人がいないのだけれど……。


四聖武神最後の一体「日溜玄武」は、やはり羽柴十本槍にあり。あるとすれば、直政と相対させるためにまず十本槍だろうとは思ってましたケレど、持ち主はよりにもよって蜂須賀・小六かー。しかも、「小六」と書いて「しょーろく」と読むとか、どんなロリだ!!
これで十本槍は全員揃ったのかしら。いや、まだか。並べてみると、
一番 福島・正則
二番 加藤・清正
三番 不明
四番 加藤・嘉明
五番 脇坂・安治
六番 平野・長泰
七番 不明
八番 蜂須賀・小六
九番 竹中・半兵衛(黒田・勘兵衛)
十番 片桐・且元

となってるので、あとは二人か。一人は黒狼と呼ばれてる人なんだけれど、あと出てきてなさそうな羽柴家家臣というと誰だろうなあ。賤ヶ岳七本槍だと糟屋武則がまだ残ってるんだが。石田・三成に加えて今回大谷・吉継も出てきて、そちらは十本槍には含まれないみたいなんだけれど。ってか、コンピュータウイルスってなにさ!
五奉行はマウスサイドみたいなので、あとは蒲生氏郷とか浅野長政とか藤堂高虎、山内一豊あたりか。名人久太郎あたりは、羽柴よりも織田のイメージなんだけれど。
十本槍以外にも副官格として可児・才蔵とか出てきてるんですが、こっちサイドって純真なショタ少年多くないですか? ってか、片桐くんとかぶってるからw あかん、武蔵の悪人たちに虐められる様子が容易に想像できてしまって、今から可哀想な気になってくる。

その肝心な武蔵はというと、状況そっちのけでネイトママンを軸にしたガールズトークに終始していたような……(苦笑
ママン、何しに来たんだよ。と突っ込んだら、娘いじりに来ました、としか返ってこなさそうな完全に参観気分のママン。しかも、人生の先達、それも恋愛の先達ということもあって、いつもは賢姉が牽引しているネイトや浅間の恋愛意識を、今回はママンがガンガンに振り回して活性化させてるんですよね。特に浅間はいくつか至言をいただいて、ついに自分の気持に蓋ができなくなってしまったようで。あのママンの家事洗濯などを任せてくれることを「自分の生活をプレゼントしてくれたのよ」というように表現してみせたのは名言だったよなあ。これで浅間が陥落したようなものですし。全裸とホラ子も浅間抜きとか考えられない、みたいなことを明言してましたし、こりゃあもう大奥体制ほぼ決まりですな。布陣もほぼ決定ですか、そうですか。あとはここに鈴が加わるかどうか、ってところじゃないですか?
ただ、ガールズトークというわりには概ね下ネタだったような気もしないでもないけどな!! 実質夫婦が多いせいか、話題や比喩がいちいち生々しいんですけどw メアリの天然エロスが留まるところを知らなさすぎる。

むしろ、織田陣営の方が恋愛模様もほんのりと色づくような艶やかさと儚さがあって雰囲気があるんですよね。つまり、ふわ〜がフラグ立ててますよー、というお話で。あそこは常に悲壮感がつきまとってますし、不破ちゃんも襲名的にそろそろ区切りつけないといけない時期なので、微妙に危うい雰囲気があるんですよね。不破ちゃんは嫌なことにならないで欲しいけど。

フラグというと、ついにノリキが自分から氏直攻略に動きましたよ。これでやっと嫁ゲットの時期がきたか。ノリキだけは随分と引っ張ってたからなあ。

熾烈な交渉戦も何とかまとまり、つーか輝元が思いの外有能で驚いた。この人、ヤンキーみたいななりしてながら、実質天然バカな旦那を支える賢嫁そのものじゃない。むしろ、毛利・輝元というよりも小早川・隆景的だよな。
ともあれ、交渉もまとまり先々の協力体制を前提とした相対戦を行うことで小田原戦役は舞台を整え、ようといたところで再び羽柴が介入。以降、すぐに下巻じゃなくて中巻を挟むことになったあたり、まだ二三回どんでん返しが待っていそうな予感。

シリーズ感想