ケモノガリ 6 (ガガガ文庫)

【ケモノガリ 6】 東出祐一郎/品川宏樹 ガガガ文庫

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クラブ壊滅へ。新たな戦いが始まる――。

――予感があった。
――決戦は近い。限りある命をガソリンのように消費している気分。
――予感があった。
――宿敵はすぐ手の届くところにいる。怨敵の影が見える場所まで近付い ている。
――予感があった。
――終焉は近い。何もかもの決着がつき、僕は消えて四散する。
――予感があった。
――別離は近い。それが一体誰との別れなのかは分からないけれど。
――これだけは、未知だった。
――全てが終わったとき、果たして僕は僕なのだろうか。それとも、僕以外 の何かなのだろうか?


楼樹たちはブラジルでクラブの会員に監禁されていた一人の少女を救う。だがそれは偶然ではなく必然。
そう、彼女の持つ才能がクラブ壊滅への新たな足掛かりとなるのだ――。
一方その頃、クラブでは7人の“聖父”が一堂に会する“聖霊会議”が開かれ、不穏な動きを見せていた。
楼樹たちにふりかかる新たなゲームとは!?
終わりに向かう始まりの戦いがここに!!
このCIAのオールドエージェントたちはみんな元ネタでもあるんだろうか。途中で出てきた引退したエージェントの爺さまたちがちょっとしか出番がなかったにも関わらずえらい存在感があったのでちと気になったのでした。あとで調べてみよう。
さて、ローマはバチカンという世界最大級の宗教上の聖地にて死のゲームを闘いぬいた楼樹たちの今度の戦場は、ラングレー。そう、すなわち世界最大の諜報機関であるCIA本部である。
CIA本部に潜入せよ!
いったいどんな鬼ゲーですか。ただ、此方には幸いにしてシャーリーというCIA職員の味方が居たおかげで内から崩すことができたわけだけれど、このCIA攻略戦は何気にシャーリーやシャテアが居なかったらどうなっていたか薄ら寒くなる。楼樹の力なら正面突破も容易かっただろうけれど、それもマトモに攻めてCIA長官のルシアン・カウフマンを掴まえられたかどうか。仮に成功しても、合衆国そのものを敵に回してしまったでしょう。それが、CIAと敵対するどころか世界規模でクラブ包囲網を構築出来るだけの体制を整えることが出来たのを考えると、シャーリーと出会えたのは運命的なものすら感じます。未だに、何がシャーリーを楼樹の味方となることに駆り立てたのかは微妙にわからんのですけどね。複雑な仮面を幾重にもかぶった彼女ですけれど、案外、アメリカ人らしい素朴な正義感が根底にあるのかもしれないなあ、と今回のCIAの申し子、というよりもCIAに関わる人達みんなにとっての愛娘みたいな立場にあったシャーリーの姿を見て、そんなことを思ったり。
ようやくクラブの最高幹部会の全メンバーが登場したわけですけれど、この怪物揃いを見ると最初に楼樹に殺された「節制」のミスタってどう考えても格下だわなあ。はっきり言ってここまで人間としての思想とか在りようから逸脱した怪物揃いだと、あんまりクラブの活動と彼らの実態とが合致しないというかそぐわない気がするんですよね。この連中が人狩りなんかして楽しいのかな、と。もっとも、当人たちがクラブの現状について嘆いていたので、彼らが目指しているクラブの姿はもっと違ったものなのでしょうけれど。個人的には自分だけ安全なところに居て下衆な行為を楽しんでいる連中を、同じ舞台に引きずり下ろして叩き潰すのが痛快さでは一番なので、クラブの幹部たちとの戦いには実のところあんまりカタルシスは感じないんですよね。
その意味では、悲哀のジャックには結構期待している。自信を世界最強で無敵と信じて疑わない幼稚な怪物が豚のように泣き喚く姿はそれはそれは胸のすくような光景でしょう、うんうん。

というわけで、ついにクラブの最高幹部会にまで手をかけ始めた楼樹。それは、この戦いにもついに終わりが見え始めたということでもあり、戦いが終わった後にも意識が行き始めるということでもある。もはや、人間の範疇すらも逸脱し始めた楼樹は、戦いの後に既に自分の存在の継続を認めていない。本物の怪物になろうとしている自分に、はや決着を付けるつもりである。しかし、それに待ったをかけるのが楼樹の幼馴染の少女だ。アストライヤをして恐ろしいと言わしめ、グレタをして狂気を宿すと畏怖された貴島あやなその人である。日常の象徴でありながら、彼女もまた常識どころか条理をも逸脱した、一種の怪物であることが徐々に明らかになりつつある。普通の娘には、楼樹はもはや近づくことも触れることすら出来ない果てにある。シャテアが楼樹に恋焦がれながら、実質全くといっていいほど噛み合っていない事からもそれは明らかだろう。もしかしたら、このシャテアという少女は凄腕のハッカーという以前の役割として、あやなの対比となる事を意味付けられた存在なのかもしれない。あやなが如何にして、破滅していく楼樹と対決するのか。実のところ、此処に至り一番ワクワクと胸を高鳴らせている戦いは、それなのだ。どのような形で終わるにしろ、この物語の終わりに相応しい結末をあやなが導いてくれることを期待するばかりだ。

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