星界の戦旗V: 宿命の調べ (ハヤカワ文庫JA)

【星界の戦旗 5.宿命の調べ】 森岡浩之/赤井孝美 ハヤカワ文庫JA

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〈アーヴによる人類帝国〉が〈ハニア連邦〉を併合するはずの雪晶作戦が発動したが、逆に〈ハニア連邦〉は帝都への進撃を開始していた。作戦に加わった、ラフィールの弟ドゥヒールが乗り組む戦列艦も予定外の交戦状態にあった。一方、勅命にて帝宮に呼び出されたラフィールには、皇帝ラマージュから、新たな艦と任務が与えられる。苛烈な戦闘は、アーヴに大きなうねりをもたらすことになる。〈戦旗〉シリーズ・第一部完結!
え? なに? 8年ぶり? 9年ぶり? 十年には満たないものの、およそそれに比肩するだけの期間をあけての新刊である。なんとまあ、もう待つことも忘れていたほどのお久しぶり。ラフィールと呼ぶがよい! は青春の昔日を彩るセリフの一つだ。なんて懐かしい思いに駆られながら、ページを開き読み始めて……はてと首を傾げてしまった。さすがにこれだけ年月があくと、前巻を読み返していないだけに内容もだいぶうろ覚えだ。それでも、たしかアーヴの帝国は圧倒的優勢に戦争を進めており、三ヵ国連合との戦いもまもなく勝利で終わりそうな勢いで進んでいたはずだったんだが……あれ? なんか、いつの間にか物凄い勢いで末期戦の様相を呈しているんだが。しかも、アーヴが負けて。あれ? 一巻読み飛ばした? 読んだよ? 確か、4巻ちゃんと読んだよ?

えええええーーーっ!?
ええええええーーっ!?

しばらく読み進めながらも何が起こっているのか把握できず、近衛艦隊がエライことになった段階でようやく事態の深刻さに気づいて泡を吹く事に。
ちょっ、なんでいきなりそんな負けてんのさ!? 幾ら陛下が悪手を指してしまったからって、ここまで一気に戦線が瓦解するってどういうことなの!? どういうことなの!?
ちょっ、ラマージュ陛下、なにしてまんねん!? えええええーーーっ!?
将棋やチェスじゃなくて、オセロでも見てるみたいな戦況のひっくり返りように、呆気にとられてしまって、壮絶な防衛戦や、死を前提とした帝都攻防戦という皇族なんかが次々と戦死していくという凄絶極まる戦いも、なんかオロオロと事態を認識できないまま終わってしまった感がある。
ちょっ、ちょっと待って、ほんとにちょっと待って。状況を把握する余裕をくれないから、本気でわけわかんないまま行き着くところまで行っちゃったじゃないですか。
だ、だいたいアーヴの人たちも宿命遺伝子がはっちゃけてるからか知らないですけれど、もうちょっと悲壮感とか絶望感とか慌てふためいてもくれず嬉々として死地に飛び込んでいくものですから、マジで事態の深刻さにギリギリまで気づかなかったんですよ。いきなり帝都まで襲撃食らったのは仕方ないとして、そこまで致命的な事態だったとは思わないじゃないですか。ちょっと避難すればイイ話じゃなかったんですかい。
もう狼狽えるばかりだったので、相変わらずのスポール閣下がまさに相変わらずのスポールだったことに何故か精神的な清涼を得てしまいましたがな。あんたはそのまんまで居てください。
さり気なくゴースロス艦長レクシュ、ラフィールの母親の姪っ子、つまりラフィールの従姉妹が新キャラとして加わったりしてたんだけれど、それどころじゃなかったなあ。ジントの話を聞いていると、こいつ今まで相当楽してたんだな、というのがわかって、緊急出動に必死に山積みされていく仕事をこなす姿に今のうちに苦労はしとけよ、とか思ってたらラフィールにこいつ怠け癖ついてんじゃないだろうな、とか胡乱な目で見られてて苦笑してしまったり。逆にラフィール自身は、ジントからこの娘精神的に成長したなあ、と我が子の成長に目を細める父親みたいな味方をされてて、やっぱり苦笑してしまったり、と。やはりこの二人を見ているのは何だかんだと楽しいです。しかし、ジントがラフィールの想い人ってこれまで言及されてましたっけ。作中で明言されていて結構驚いたのですが、本人たちにその認識があるとは思わなかった。
第一部完結となるシーンには、またまた仰天させられる。ラフィールって確か帝位継承権レースでは殆ど問題にならない位置に居たはずだったのに、今回の大敗戦とそれに伴う凄まじいまでの皇族の人的損失によって、まさかの立太子に。さらに、艦長から一気に提督!? ジントはどうすんのよ!? いきなり一緒にスポールんところの苦労人の人みたいに参謀長になる、ってなこと出来るんだろうか。数が少なくなってしまった貴族とはいえ、ラフィールみたいに三階級特進、というのも難しいでしょうし……それとも、アリなんだろうか。
ここで離れ離れ、というのもまた締まり悪い話ですし、このコンビを解消してしまうと魅力も減じてしまうからなあ、なんとかして欲しいところでありますが。それ以前に、せめてもう少し短いサイクルで続きだしてほしいですね。