飛べない蝶と空の鯱 ~蒼の彼方より、最果てへ~1 (ガガガ文庫)

【飛べない蝶と空の鯱 〜蒼の彼方より、最果てへ〜 1】 手島史詞/鵜飼沙樹 ガガガ文庫

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物語は新章へ!空の果てへの旅が始まる――

「北の地には、来てはならぬのです――」
そう伝言を残して、ハイフォニアから消えてしまった<夜姫>ヒルダ。失踪したヒルダを追って、ウィルとジェシカは北の大陸、ティエラへ。そこから北へは行くことができない、「北の空の門」で、ウィルとジェシカが遭遇したものは、「機械の翼」をもつ無人機による攻撃だった!
壁に囲まれ、霧が薄く、<霧鍵式>が役に立たない世界。霧の文明とは違った、「失われた文明」をもつ北の大地には、この世界の成り立ち、さらには空の果てへの鍵が隠されているのか――。
すべての島を堕とし、世界の再構築を狙う<七つの鍵>、そして空の最果てを目指すウィルとジェシカ、そしてとんでもない力を持った「魔女」たちが、北の果てで相まみえる!!
魔法と空戦のファンタジー、新章に突入!
サブタイトルをあらためての新章スタート。この事からも、このシリーズはかなりの長期化を見込んでいるようにも見えるんだけれど、案外あと三冊くらいで終わったりするかもしれないので油断はできない。ともあれ、中途半端に終わらずにいてくれればいいんだけれど。
さて、新章はハイフォニアを後にして「渡り鳥」が活動していない北の大陸ティエラへ。壁に覆われ「空」のない世界。その停滞と閉塞に満たされたティエラの地は、一瞬地上なのかと勘違いしかけたのだけれど、ここもやっぱり浮遊する大陸の一つだったわけだ。でも、「霧」が無い世界というのも驚きだ。あるのが当然のものが無い世界。つまり、霧鍵式が使えず霧を燃料にして飛ぶ翼も使えない。普段潤沢に使っているものを制限して使うということは、それだけ精緻なコントロールを要求されるということで、必然的に霧鍵式や飛翔に関する技術も研ぎ澄まされるということでもあり、危機が転じて二人の渡り鳥としての腕前はさらにメキメキとあがることになる。
もっと四苦八苦する展開になるかと思ったのだけれど、第一章で既にジタバタする段階は通り過ぎていたようで、多少不都合がある程度では止まること無く行動や判断に躊躇いなくクレバーに物事を進めていくウィルたちの姿に、随分頼もしくなったなあと感じ入ってしまった。もう彼らを半人前などと言えないだろう。どこから見ても歴戦の渡り鳥だ。
しかし、北の大陸で遭遇した<七つの鍵>は、これまでの連中と比べても桁違い、格の違う相手だった。何しろ、あのヒルダと同格以上にして彼女の仇敵。端的に言っても化け物以外の何物でもない魔女である。結局、物語の中枢には常にヒルダの存在があり、ということなのか。どうも今のところジェシカよりもヒルダを中心にしてあらゆる状況が回っているみたいだし。いや、そういうと語弊があるか。でも、ヒルダが常に関連しているのは間違いないからなあ。何気に、ヒルダの執事のフォルネウスの素性について言及が在ったのにはスッキリした。この人、ヒルダの過去話には一切登場していなかったのに、初登場時から彼女にとっての唯一の身内みたいな形で存在していたので、一体どうやってヒルダに仕えるようになったのかについては微妙に気になっていたものですから。でも、その正体やなぜヒルダを追っていたのかについてはまだ明かしてくれないあたり、勿体ぶってくれる。
空のない世界を舞台にすることによって、改めて「空を翔ぶ」事への心が吸い込まれるような憧れを再認識させてくれる新章。誰よりも速く、誰よりも高く、誰よりも自在に空を翔けることを求める二人。これは、割って入る余地が何処にもない。完全に空に関しては二人だけの二人のためだけの世界なんですよね。にしても、バカップルぶりが加速度的にひどくなってる。というよりも、今回は外からの二人に対する視点が多かったからなのか、二人の親密度がウィルとジェシカたち自身が思っているのと、周りの人から見たものの温度差が全然違うんですよね。二人にとって当然のことが、傍から見るともう無防備すぎるくらいにあけすけすぎて、直視できないレベルにまで達しちゃっているわけで……色々勘弁して下さい。
今回、<霧鍵式>が使えないということでジェシカのいつものお仕置きにも全然威力がなく、普段ならウィルを吹っ飛ばすような一撃が、痛みすら生じさせないポカポカという弱いパンチにしかならず、ジェシカがムキになってポカポカ叩いてくるのが、なんかもう可愛くて可愛くて。
許す、ウィル、襲え!!
ええい、周りがバタバタしてなければもっとイチャイチャ出来るのに。早いところゆっくりイチャつけるように、風雲急を告げる事態を収めて欲しいところであります。

シリーズ感想