スリーピング・ストレーガ3 (MF文庫J)

【スリーピング・ストレーガ 3.恋避離脱の魔術領域】 真野真央/風瑛なづき MF文庫J

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「昔話をしましょうか」唐突に真白の前に現れて魔術師たちを排除した来巻フレアは、君色を前に滔々と語り出す。かつて異界に君臨した凶星魔王“ストレーガ”が願い、フレアに託された計画の全貌を―。この世界と異界とを繋ぐことで滅びゆく異界を救おうとする大家族“グランファミリア”と、これを世界の危機と理解して阻止しようとするソサエティの魔術師たちとの狭間で、究極の選択を迫られた君色とリオが選択したのは―「駈け落ち」!?真夜中の美少女バトルコメディ第三幕。
ええええーっ!? 前回のラストでついに正体を現した真の黒幕フレア。まさかの妹の親友が黒幕という事実に、これは泥沼展開かと思ってたら、この三巻が始まっての展開に唖然呆然。想像の斜め上どころか、インメルマンターンをキメられたよ!!
ちょっ、この主人公、リオと真白を連れて魔王の陣営に寝返りやがったーー!!
まさかまさかの、敵が味方に、味方が敵に、という大逆転現象が。これまで敵対してきた大家族“グランファミリア”に参入し、逆に魔術界の秩序機構でもあるソサエティが敵に回ってしまうという、なんじゃこれおもしれえ。
普通、こういうこれまで居た組織から敵側に移ってしまうという展開の際には、元居た組織なり機関なりが相当に悪いことをしていて、真実を知ったり不都合に巻き込まれた主人公たちが追われてしまうというケースが多いんだけれど、面白いことにこのソサエティって組織的に決して瑕疵はないんですよ。むしろこの手の機関としては非常に健全で、柔軟性もあり、所属している魔術師たちも悪い人はいない。裏でコソコソ謀略の糸を手繰ったりしてもいないし、ぶっちゃけ魔術機関としてはかなりまともで信頼出来る組織なんです。だから、普通に考えたら主人公たちがここを裏切る要素は何もない。
でも、裏切っちゃうんですよ、笑っちゃいますよね、あははははw
だからといって、別に君色たちがおかしくなったわけでもない。ぶっちゃけ、魔王と大家族“グランファミリア”のあり方や目的に対してのソサエティの認識がかなり恣意が入っていたというか、少ない情報のせいで先鋭化していたのが原因で、彼らが世界を悪意をもって滅ぼそうとしている存在だと思われてしまっていたのが最大の原因だったわけで、フレイの真意と大家族“グランファミリア”の目的を知った君色たちが彼らの計画の鍵として積極的に彼らを助けようと思ってしまったことが、この反転展開を産んでしまったわけですな。
じゃあ、ソサエティの誤解をとけよ、という話なんだけれど、問題は魔王とグランファミリアが邪悪か否かではなく、彼らの目的がこの世界を滅ぼしてしまうか否かが問題だったわけで、一番ややこしいのは世界が滅びるかどうかを誰も客観的に証明できなかったことが混迷を招いてしまったんですな。フレイたちは、根拠あって世界は滅びないと告げるものの、それをソサエティ側に納得できる形で証明が出来なかったので、ソサエティ側は万が一を考えてグランファミリアを止めようとする。この計画を阻止されてしまうと、フレイの世界が確実に滅びてしまうグランファミリアは徹底的に抵抗する。
こればっかりはどっちが悪いか、という問題ではなくて、完全に立っている場所の問題だったんですよね。その中で、元々ソサエティとは関係ない一般人だった君色と真白はフレイの側を選択し、リトもまた君色の判断を是としてフレイに味方することを選んだのです。なので、別にソサエティに意趣があったわけじゃないんですね。お陰で、双方ともにあんまりドロドロとしたひどい展開にならずに済んで助かりました。
妹から放置プレイを食らったリトの姉ちゃんとしては、発狂モノの流れではあったのですけれどw
小姑から解放された君色とリトはというと、もうひと目も憚らずイチャイチャしっぱなし。お前ら、本気で駆け落ちしただけだろう。一方で、フレイと真白もイチャイチャしっぱなしで、お前らも駆け落ちしただけで元の目的忘れてるだろう、とw
グランファミリアも、味方になってしまうと愉快なキャラクターの親しみのもてるイイ連中で、文字通りの大家族という雰囲気で、君色たちが加わっても新しい家族が増えた、というくらいの馴染み易さで、実はこっちの方が居心地よかったんじゃないだろうか。
ラストの、妹・真白の兄離れ宣言のぶっ飛びっぷりに盛大に吹き出したりもしましたが、ギスギスした空気にならずともなかなか緊迫感のある信念がぶつかる真剣な展開の果てに待っていた大団円。ここまで行き届いた大団円はなかなか無い、というくらいの気持ちのよいハッピーエンドでした。三巻という短いサイクルでまとまったシリーズでしたけれど、尖りのない丸みを帯びた柔らかな雰囲気の中に突拍子もない予想をすっ飛ばすようなはっちゃけっぷりが内包された、実に活きの良い良作でした。これは、次回以降の新シリーズも楽しみです。面白かった♪

2巻感想