ツルツルちゃん (NMG文庫)

【ツルツルちゃん】 仙田学/吉田誠治 NMG文庫

Amazon

幼なじみの先斗町未来。ファッション誌でモデルをしつつ、学力は学年トップクラスで、しかも抜群の運動能力を誇る。そんなチートなJKだが、無くて七癖、未来は超のつく潔癖症だった。未来の五年来の親友で俺が密かに思いを寄せる兎実さんの手帳を未来がたまたま拾ったのが発端だった。潔癖症を発動させた未来は、兎実さんの頭をツルツルに剃ろうと…超新感覚・学園ツルツルストーリー。

意を汲み取るにも限界がある。何もかも足りない所から汲み上げて形作っても、それは想像の体すらなしていない拠り所のない妄想でしかない。何かを伝えようと語りかけてくるものに向きあうのではなく、独り言を呟いているものに耳を澄ましているような、電話の会話に聞き耳を立てているような、そんな相手にされていない、此方に目を向けてもらっていない感じに終始苛まれるような作品でした。
うーん、これはちょっとどうなのかな。
物語自体、主人公の主観的視点、空間的時間的認識によって進行するので客観性に乏しく、彼が理解していることについては説明も省かれる事が多いので、当事者にはわかっていても読んでいるこっちからすると何をやっているかわからなかったり、状況が把握できず置いてけぼりにされる事が度々、どころか殆ど全体で続くので物語にまったく入り込めなかったんですよね。舞台演劇を観劇していて、演じている本人たちのみが理解していて、見ている観客は舞台上で何をやっているのかサッパリわからずポカーンとなってるようなもので。
勿論、全体の流れを追っていけば大まかにはわかってはくるのですけれど、理解を納得に導くだけの根拠となる説明や描写がないものですから、浮かび上がる像は結局妄想の域を出ません。この徒労感は、まあなかなかのものです。
そもそも、主観の主であるところの主人公が、恐るべきことに主体性を持ってないんですよね。主体性どころか自分の意志を持っているのかも疑わしい、ただただ流されていくばかり人間で、一体何を考えているのか、どういう人間なのかも最後まで伝わって来ませんでした。そんな彼の目を通して描かれる出来事は、そもそも彼の妄想なのか現実なのかも定かではなく、彼が語る余人の像も果たしてどこまでが本当でどこまでが想像の領域なのか。地に足がつかないどころか、綿雲でも踏みつけているような感覚で、どうにもこうにも疲れました。申し訳ありませんが、残念ながら私には全く合わなかったようです。