やましいゲームの作り方2 (ガガガ文庫)

【やましいゲームの作り方 2】 荒川工/nauribon ガガガ文庫

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大人気敏腕ライター『中田ろみ子』登場!!

ペチペチペチペチ。
いつもなら気にも留めないキータッチの音が、今は耳にうっとうしいほどまとわりついてくる。自分が神経質なのは知ってるけど理由はそうじゃない。
二人の年上の女性に挟まれて、その真ん中でずっと沈黙に耐え続けているせいだ。
株式会社ソフトマシーン。その事務所の片隅にある本来なら一人で作業するその中に、三人の人間が肩を並べてる。右に、平栗さん。左に、中田先生。いったいどういう罰ゲームだろう。
しまった、と思っておそるおそる中田先生の方に振り向く。――ほんのちょっと半目になるだけで、人の表情ってこんなにも冷たくなるんだ。そんなふうに、じとーっと中田先生は僕を見ていた。
「チッ……ろみ子からの質問。それは『あっ、また美しい中田先生がうるせーこと言いそう』の『あっ』? 『あったまくんなあ、いちいちこの美しい中田先生ったら小姑みたいによう』の『あっ』?」
ところで選択肢が二つあってどっちにも地雷が埋まってるのが見え見えなとき、人はどうしたらいいんだろう。

僕が、中田先生、そして平栗さんまでも巻き込み、シナリオリテイクをしている理由とは!?お仕事モード全開の第二巻!!
た、田中ろみ子先生って……支倉凍砂先生が実はケモノ娘だったという事実以来の衝撃っ! しかも、別名義がやーまだって、そのへんもう暗黙でもなんでもないのか。
家族計画は名作でしたよ?

それはそれとして、本作が続いたのはかなり驚きだったんですよね。前回で亡くなったお父さんの仕事をやり残して死んでしまった、という未練は綺麗に解消されてしまったわけで、それなのに現世に残ってしまってどうするんだ、と。これ以上は蛇足なんじゃないか、と思ったりもしたのですが……。
蛇足じゃなかった、蛇足なんかじゃなかったよ。ってか、第一巻も変な作品でしたけれど、この第二巻はそれにも増して、輪をかけて変な構成で。物語として見るならば真っ当といえるのかもしれませんけれど……実際やるとなるとこれ大胆なことやったもんです。ライトノベルのシリーズものの第二巻として、この内容はちょっと凄いんじゃないかと。
端的にまとめると、前回がお父さんの生前の未練の解消だとすれば、今回はこの世を去るにあたっての身辺整理、なんですよね。一応次の企画がトラブル混じりで舞い込んでいるのですが、ゲーム制作については今回は二の次で、お父さんが成仏するにあたって気になっていたことを片付けていくのが今回の話の肝でした。いや、かなりギリギリになるまでお父さんが成仏する流れになっている気が付かなかったので、察した後は心が波打ちっぱなしでしたけれど。
うん、考えてみるとやり残した仕事だけ片付けて成仏してしまうって、遺していく人たちに対して、義理は果たしたとしても薄情と言えば薄情なんですよね。そう思うと、前回に成仏しそこねたというのは蛇足でも何でもなかったんだなあ。結局、お父さんが懸念として残していたのは、大事な息子が自分が居なくなったあともちゃんとやっていけるか。自分が息子を庇って死んでしまったことをずっと引きずって生きて行かないか。親として当たり前の子供に対する心配が、お父さんを現世に引き止めていたと考えれば、何の不思議もない。自分の死に対してあれだけサッパリしているお父さんでも、自分が死んだせいで息子が必要以上に傷ついて、その後の人生を誤っていきかねないとなれば、やっぱりやり切れないですもんね。でも、前回のゲーム制作を通じて父子は今までになく本音での交流が出来て、その上で息子が独り立ちしてやっていける見通しもついた。彼を支えてくれる周りの人達もちゃんと居る。何より、息子の中で父親の死を乗り越えて前を向いて生きていけるだけの意識が芽生えていることを、中にいることで肌で感じ取れた。母親と違って父親は、男親は、息子に対していつまでもベタベタ出来るもんじゃありません。ニ心同体なんかになってしまったのなら尚更に。父親が息子を心配しすぎるなんて、野暮なもんですよ。だから、未練なんておこがましい。必要以上にしがみつく必要もない。男親と息子の関係なんて、背中を向け合うくらいでちょうどいい。信頼さえアレば、一緒に居る必要なんてどこにもない。だから、心配も憂いももう何処にもない。
いい、お別れでした。
個人的に胸を打ったのは、むしろ社長の仁江いなほさんとの事でしょう。なんだよー、恋愛感情なんて無いって言ってたじゃんよ〜。奥さんを亡くして独りで息子を育てながら、同じ職場で一緒に戦う同僚の姿を、いなほさんはずっとどんな想いで見続けたんだろう。その男が、突然の事故でこの世を去ってしまったことが、この人にとってどれほど衝撃だったんだろう。前回の修羅場では滅多に弱ったところを見せなかったこの女性の、流した涙がもう切なくて切なくて。
その気持を知りながら、ずっと気づかないふりをしてきたお父さん。それでも、彼にとっても息子のことに匹敵するくらい、この年下の上司にして戦友のことは気掛かりだったんだなあ。大切だったのでしょう。恋人じゃなくても、その気持ちをどうしても受け入れられなかったのだとしても、本当に大切だったのでしょう。恋の向こう側にある優しい愛情が、いなほさんに向けられたお父さんの言動の端々に感じられて、何とも言葉になりませんでした。後悔はもうやめないと、そう決意するいなほさんですけれど……こればっかりは生涯消えない想いなんだろうなあ。

幽霊は在るべき場所、待つべき人のいるところへ旅立って行き、残されたモノたちの前には新たな修羅場。って、ええ!? 主人公たるお父さんが今度こそ成仏してしまったのに、もしかしてまだ続くんですか!? 今度こそ本当に息子のほうが主人公に!? いけるのか、これ?
平栗さんの天然ぽややんな強ヒロインっぷりに、新キャラのろみ子さんインパクトも去ることながら、いなほさんルートはないのかよ! とまでは言いませんけれど、いなほさんはなんとか幸せになって欲しいよなあ、と思いつつも他の誰にも靡かないで欲しいよなあ、なんてことも思いつつ、だからやっぱりいなほさんルートだよ!

1巻感想