C3-シーキューブ- (17) episode CLOSE / the last part (電撃文庫)

【C3 シーキューブ 16 episode CLOSE / the last part】 水瀬葉月/さそりがため 電撃文庫

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蒐集戦線騎士領に占拠された大秋高校を奪還し、周辺一帯の騎士領化を食い止めるべく反攻を開始した春亮たち。ン・イゾイーほか学校内に残るメンバーとも連携を図り突破口を開こうとする。しかし、敵は騎士領だけにとどまらず、黒絵を狙う竜島/竜頭師団の師団長も春亮たちの前に立ちふさがる。そして三つ巴の天王山に向け、運命が、呪いを知る“彼女たち”を大秋高校に誘う…。夜知家の未来を賭けた戦いの行方は、そしてフィアに隠された重大な秘密とは?呪われた道具たちが織りなす物語、感動の完結編!
うん、何となく師団長の方の展開は察してた、黒絵にちょっかいかけてきた時点で。それでも、あそこまで情熱的になるとは思わんかったけれど。強さというものに対しての姿勢はシンプルでありながら、拘るが故に余人には介在できない解釈をしているような人物像だったんで、もうちょっと歪んでると思ってたんですよね。あそこまで「強さ」の概念に対して需要度が、自分に対しても大きい人物だとは思わなかった。さすが理事長の元親友というべきか、この人の強さは最初に黒絵にこだわった時みたいな瑣末なことに囚われるよりも、やっぱり最初に登場した時のような奔放な王器を見せてる時のほうが強いように思えるなあ。強さへの拘りからも自由になることこそが強さ。だからこそ、黒絵へのアプローチを根本から変えたのは大正解だと思いますよ。黒絵は、あれで登場人物の中では一番他人の可能性を広げるアゲマン的な才能の持ち主だと思いますし。甘やかさない優しさの持ち主と言いますか、幼女にしてお母さん気質というか。ある意味春亮みたいな物分かりの良い子よりも、やんちゃな師団長の方がお似合いだったと思うんですよね。だから、あのオマケのちびっ子も含めて、いいパートナーになるんじゃないかと。
逆に渋い恋愛模様を見せていたのが理事長の方で。なに、この微妙に粘性の高い人間関係。亡き親友に今も心囚われて、自分に目を向けてくれない想い人へのドロドロとした憎しみと消せない愛情。そんな複雑かつ深い情念を精算し、改めて自分の存在を思い知らせ刻み込んだ上で彼の愛する人を求め続ける旅路を共にしようと選んだ女の想いの到達点、安住の地。正直、主人公サイドの恋愛がえらく初々しいまま片付かずに済んでしまった分、短くも濃厚だった此方の結末というか着地点はインパクト強かったです。ってか、道具に所有されるって理事長レベルたけえなあ!

一方で、蒐集戦線騎士領との攻防は文字通りの総力戦。個人的には家族会の面々にこそ援軍として訪れて欲しかったところですけれど、あちらは住んでる場所も遠いですし前線からは退いた面々だから仕方ないか。それでも、顔見せしてくれただけでも十分でした。まあ、総力戦とは言え、かつての敵が助けに来てくれるという展開は……あんまり居ないのね! うん、藍子の復活は満を持してと言いますか、待ちに待ったものではあったんですけれど、他はというとココロちゃんくらいだったからなあ。
これは、意外と春亮たちと戦った相手の死亡率が高かったりするのが原因で。もろに改心してくれたのって家族会の面々くらいで、直接春亮たちが手に掛けたというケースは無いんだけれど、和解できないまま死亡したり戦線離脱してしまった人はかなり多いんですね。味方になりそうな人は、ン・ゾイーみたいにとっとと身近に居着いていましたから、ここぞというピンチに現れるのではなく、今回の一件では最初から巻き込まれてましたしね。
研究室国が全面的に協力してくれたことは意外でしたけれど……あそこ戦闘人材居ねえからなあ。日村が居たような描写がちらりとありましたけれど、あいつ存在が認識されなくなったままもしかしてずっと錐霞のストーカー続けてるんでしょうか。ちょっとこわいんですけどw

ラストらしく、フィアはこれまで悩んでいた自身の呪いへの答えをきっちり出した、実に良い幕引きでした。正直、フィアについては追い詰めすぎていて、悩んだ末に破綻してしまうのではと危惧したのですが、ちゃんと自分なりに答えを導き出せましたね、強くなったもんです。過去を消すのではなく受け入れて、精算して、未来を手に入れる。自身が呪いの結晶みたいなものだからこそ、その精算は生半可なものじゃなくて、正直それを春亮にやらせるというのはこの女、流石サドと思ったものですけれど。
呪いによって生まれたものが、祝いによって生まれ直す。祝福されて、この世に再び生を受ける。フィア・キューブリックにとって、これ以上ないハッピーエンドだったんじゃないでしょうか。
個人的には、錐霞やこのはを含めて、きっちり答えを出せとは言いませんけれど、その関係性にある程度の決着をつけて欲しかったですけれどね。いや、決着というか答え自体はある意味既にこの前出していたか。そのままなし崩しに決戦に入っちゃってたから、答えが出た後の光景を味わえないまま終わっちゃったんですよねえ。後日談があれば、そこで需要も満たされたと思うのですけれど、物語の余韻というか最後のシーンとしてはあれが確かに一番だったからなあ、仕方ないんですけれど。

何だかんだと終わってみればヒロインの中で一番印象的だったのは、一手に作者のグロテスク欲求を血みどろになって引き受け続けた錐霞さんでした。いやほんと、彼女が本当に全部と言っていいくらい肉体損壊、血まみれブシャーーッとなるのを引き受け続けてたもんなあ。その上で、エロスも殆ど彼女が引き受けていたので、完全に作者の欲望のはけ口になってましたよ、あれ。頑張った、超頑張ったよ錐霞さん。その分、ヒロインとしてかなりいい所取りできてた気もしますけれど。良かったね……?
ともあれ、長い長いシリーズ、完結お疲れ様でした。

シリーズ感想