あなたが主役! 心理テストアドベンチャー ダークフェアリーの洞窟

【あなたが主役! 心理テストアドベンチャー ダークフェアリーの洞窟】 小林奨/藤生みどり あさ出版

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主人公(あなた)は新米魔法剣士。ひょんなことから、ラックス(剣士)、クルト(神官)そしてモリー(妖精)とパーティーを組み、剣技や魔法を使って、とある依頼にこたえることに。魔法剣士としての実戦は、はじめてのあなた。仲間の信頼を得ることはできるのか。果たして立ちはだかる敵と戦い、依頼を解決し、無事に帰ってこられるのか。それとも―。ようこそ!心理テストアドベンチャーの世界へ!どうぞ、よい冒険旅行を―。

著者から献本頂きました。
こんな心理テスト、見たことない!という帯のキャッチコピーですけれど、そもそも私、心理テスト自体殆どやった事がないのでどんだけ違うのかわかりませんよ?
最初は心理テストの要素を組み込んだファンタジー小説なのかと思っていたのですが、読んでみたところファンタジー世界の簡単なクエストを題材にした心理テスト、と言った方が正しいようです。心理テストです、小説ではなく。
んで、実はかなり面食らってしまったのですが、これって自分が主人公になりきってお話の場面場面で訪れるシチュエーションで心理テストに答えていく、という形式だったのです。
……え? 私が答えるの!?
いや、心理テストだから当然なのですが、主人公が遭遇している出来事に自分が選択肢を選んで答える、という流れに対して思いっきりフリーズしてしまったんですよ。何しろ、読者である自分と作中のキャラクターである「主人公」とは完全に区別された別存在であって、主人公に自分が成りきって物語に入り込む、という読み方には全く慣れていなかったものですから、他人が答えるべき問題がいきなり此方に振られてきたようなもので、面食らってしまったんですね。主人公についても、全く情報がなくどういう人物かサッパリわからない。性格も考え方も来歴もさっぱりわからないキャラクターが、一体そのシチュエーションでどんな行動を選ぶのか。
そんなん知らないし、わかんないよ!!
と、なってしまったのです。
改めてイイますが、これ形はどうあれ心理テストなんですから、自分が思う通りに答えればそれでいいのですけれど、どうしても根本に自分≠主人公という意識がこびりついていたものですから、最初の頃は違和感が抜けきらなくて、何を選んでも自分の選択肢として受け止められなくてしっくりこなかったですね。
古式ゆかしいゲームブック(自分が選んだ選択肢によって進むストーリーの展開や結末が変わってくる本)として見ればいいのかな、なんて思ったりもしたんですけどね。自分が子供の頃は結構あったんですよ、ゲームブック。一番の選択肢を選んだのなら、○○ページに進め、みたいなやつ。ただ、これは心理テストの質問に答えてもストーリー展開が変わるわけではないので、選択に影響があるわけじゃないんですね。なので、ゲームブックをプレイしているよりも、この主人公の女の子のキャラメイキングを、この心理テストを通じて行なっているという風に考えるようになったら、わりと質問に対する回答と心理テストの結果についてもしっくり受け止められるようになりました。あくまで、自分が、ではなくて主人公のこの女の子が、という観点からは逃れられなかったんですけど。随分と、イイ性格のキャラになったような気がします。
改めて振り返ってみても、普段からファンタジー小説に親しんでいるような若い人にこの本がターゲットとして当てはまるかというと、どうなんでしょう。自分=主人公という捉え方をした本の読み方、アドベンチャーゲームのプレイの仕方をしていたのは随分と昔の話で、昨今は主人公も作中のキャラクターの一人として個性を重視される向きがあると思うので、現在の小説やゲームに親しんでいる人にはこの自分=主人公という形式は結構戸惑う要素が大きいんじゃないでしょうか。
あと、ファンタジーものとして本作には色々と気になる点が多かったのも確か。設定が甘いとか、そこまで追求するものでもないですけれど、冒険者ギルドの依頼で「畑を荒らす野犬を退治する」の報酬が銀貨500で、「街に住み着く吸血鬼を倒して」が銀貨1200、というのは相場として滅茶苦茶じゃないか、と思ったり、ちゃんとした冒険者が洞窟を探索するのに松明の予備を忘れてたり、敵地の只中で二手に別れたり。いや、そういう冒険者としての間抜けさはともかくとして、ラスボスがこちらにとどめを刺そうとして「念仏を唱えるんだな」というのは幾らなんでもあかんでしょう、念仏って(苦笑
本作は洋風異世界ファンタジーと見せかけて実は仏教系風異世界だったんだよ、というのならわかるんですが、それだとクルトが神官ではなく仏僧になってしまいます。頭丸めなあきまへんw
心理テストメインの作品ですし設定を突き詰めろとはいいませんが、最低限の体裁は整えないと適当感が前に出てしまい、全体的な安っぽさが否めなくなってしまうのではないでしょうか。
あんまりこういう心理テストみたいな本は読んだ事がなかったのでなかなか新鮮ではありました。手軽に楽しむには良かったんじゃないかな。ガッツリ深く心理学的解説なんかを求めてる人には物足りないかもしれませんが。