生徒会探偵キリカ4 (講談社ラノベ文庫)

【生徒会探偵キリカ 4】 杉井光/ぽんかん(8) 講談社ラノベ文庫

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生徒数8000人の超巨大学園に秋がやってくる。食欲の秋、読書の秋、そしてスポーツの秋!二学期最初のビッグイベント・体育祭を控え、生徒会は臨戦態勢に入っていた。もちろん白樹台の体育祭はただの運動会じゃない。運営権と予算枠3000万円を賭けた、体育科とのガチンコバトルだったのである!強大な敵を前に、普段は反目しあう会長と朱鷺子さんと郁乃さんも一致団結。キリカも莫大な予算額にいつになくやる気満々。そして僕らの前に立ちはだかる体育科のリーダーは…魔王陛下?いつもより多めの肌色に青春の汗と涙がまぶしく光るハイテンション学園ラブコメ・ミステリ、第4弾!
すげえ、何言ってるかさっぱりわからないけれど、会話が成り立ってるよ!! 体育科のリーダーと言いつつもあんまり体育会系の匂いのしない魔王様。一応フェンシングの選手らしいけど、どう考えても政経系統だよな、この人。相変わらず杉井さんは、マイワールドを展開している人を描くことにかけては息を吸うかのように滑らかだ。普通に喋っている限り、まるで一般人と会話が通じないような独自言語がするすると吐き出されてくるんですよね。合いの手となる主人公のツッコミが華麗すぎるので、なんとなく意味がわかるような気がするけれど、実際ほんとに何言ってるかわかんないよねこれw
これまで中二病を発症してマイワールドを展開してるキャラは幾人も見てきたけれど、これほど滑らかに中二言語を互換して喋ってるキャラは初めて見ました。というか、普通の中二病キャラの喋りには「誇示」が含まれているものなんだけれど、この魔王様の場合はあんまり主張は感じないんですよね。純粋に互換して喋っているような気がする。ある意味同作者の【楽聖少女】のハイドーーーン!の人と同じベクトルを感じるw
しかし、その頭脳の切れ具合は浮かれた部分など微塵もない。何だかんだとお調子者な生徒会の面々や、弄られ属性が色濃くある朱鷺子などと比べても、魔王様の思考は常にクールで鋭く研ぎ澄まされていて、じっと機会を伺い雌伏し続けることを厭わない我慢強さが垣間見える。それでいて、その心根は実に熱く情熱的だ。実は杉井作品に稀に見る主人公属性の人なんじゃないだろうか、これ。

今回は超巨大学園の体育祭、しかも主導するメンツにエンターテイナーが揃いも揃ったイベントだけに、お話も盛り上がる盛り上がる。なんか、終わってみれば超真っ当な知恵と力と意地と根性が真っ向からぶつかり合う、実に健全で血の滾るお祭り騒ぎだったんじゃないでしょうか。純粋に楽しかったぞ、今回!
我らが詐欺師ひかげくんも、経験したことのない大イベントに戸惑いながらも、より大会を楽しく盛り上げるために、何よりキリカに楽しんで貰うためにあれこれと尽力してまわっていたあたり、今回はほんとに肉体的にも精神的にも健康なお話だったように思うのでした。
応援合戦は、個人的には体育科の勝ちだったよ! 楓花さん、素敵過ぎます!! ヒロイン度爆上げだったんじゃないでしょうか。キリカもひかげの後押しがあったからだけれど、普段からは想像もつかないほど前面に出て活躍していましたし。キリカが体育祭であんなに前に出るとは、予想外もいいところ。杉井作品の主人公って、概ねヒロインに対して過保護だけれど、キリカはその中でも比較的積極的に応える娘だなあ。
とまあ、全体的にこんなにも健全な流れだったのに……のに、って言っちゃあなんですけれど、ひかげ君、今回は生徒会側の軍師的な役回りでクライマックスで策を巡らせていたのですが、ひかげがやるとどうしても軍師や戦略家の神の手、というよりもなんか詐欺っぽくなるんだよなあ(笑
相手の作戦を逆手に取る、どころか相手に自分たちの思う通りの作戦を立てさせるように誘引するところなんぞ、毛利元就もかくやという謀略家っぷりだったんだけれどなあ、終わってみれば詐欺にあったようなお話でw
いや、ほんとにお見事としか言いようのない鮮やかさだったんですけどね。普段の行いだなあ、こればっかりは。こんな彼が、真っ当に狐徹会長に勝負して正々堂々と勝つ姿はやっぱり想像できない。詐欺で騙して勝つ姿は想像できるけれど、それっていいの?という話だし(苦笑
それでも、ひかげには今や明確に会長と勝負して勝ちたいという欲求が赤々と燃え上がっているようだ。対決の日は、近いのだろうか。

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