銀閃の戦乙女と封門の姫3 (一迅社文庫)

【銀閃の戦乙女と封門の姫 3】 瀬尾つかさ/美弥月いつか 一迅社文庫

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クァント=タンを襲った新たなノーブルを撃退した武勲を称えられ、カイトと梨花は避暑もかねシャーロッテの所有する湖の別荘へと招かれる。湖畔の別荘で夏休みを満喫しようとするカイトだが、いつものようにフレイとソーニャもやってきて、いつものドタバタ騒ぎに。そんなさなか、シャーロッテから湖底に巨大な水中迷宮があると知った一行は探索を開始するのだが、様々な魔物が巣食うとともに希少金属オリハルコンの痕跡があることを発見する。泳ぎの苦手なフレイ、ソーニャの代わりにカイトと梨花が水中迷宮へと挑むのだが、そこには意外な先住民たち、そしてクァント=タン全土を揺るがしかねない脅威に直面する。瀬尾つかさが贈る本格異世界ファンタジー早くも第三弾!
親子丼はさすがにないよなあ、という立場だったのだけれど、母親が娘よりも年下ならそれもありかと思えてくる不思議!
しかし、なんでこのシリーズって表紙がフレイ固定なんだろう。実のところ、フレイは確固たるメインヒロインというわけでもないんですよね。この作品って、フレイにソーニャ姫、それから梨花と前回加わったシャーリーの四人がヒロインとしてほぼ均等位置いるので、ことさらフレイが表紙でだけ特別扱いされるのがどうにも違和感が残ってしまいます。
さて、前回国王の排除に成功した結果、後継者争いが水面下で激化。一応、ソーニャ様は表向き後継者レースから距離を置くことを表明しているものの、立場的にも実力的にもライバルたちからすると無視できない存在であるのは間違いなく、そうした立ち位置がカイトとの関係を踏ん切りつかないものにしてしまってもいる。
面白いのは彼ら、カイトとヒロインたちは既に恋愛をゲームとして楽しむ段階は疾うの昔にクリアしてしまっているところなのでしょう。女性陣たちはカイトにしっかりと好意を伝えているし、カイトとしても彼女たちに好意を持っている事を自覚し、またそれを彼女たちに伝えてもいる。じゃあそれでハッピーエンドじゃないか、と思うところなんだけれど、問題は現実的なところにあって、クァント=タンという異世界の成り立ちと現状、ソーニャたちの王族としての、英雄としての立場を考えると好きだから付き合って、という風にはなかなか行かない。シリーズの初期段階ではカイト自身、日本側に長らく暮らしていたせいか視点が人間関係によってしまっていて政治的な立場としての問題に理解よりも実感が追いついておらず、半ば感情面を優先して動いていたのでその辺りがフレイたちとの齟齬ともなって、様々な点で二の足を踏む形になってしまっていたのだけれど、将来の展望というか人生の方針となるべき考え方が前回の事件で大方定まったというか覚悟が決まったようなので、何気に目立たないけれどいつの間にか物語の方向性が大きく変わっていたことに、読んでいるうちに気づいた。
つまるところ、王族であるソーニャやシャーリーも含めた女性陣を正式に娶る為の環境整備を、カイトが精力的に始めてるんですよね、これ。それも、既存の選択肢からどちらを選ぶか、ではなくて新しく選択肢を構築する形で。この辺り、ソーニャが脳筋だったり、フレイも事務方仕事はともかくとして緻密な戦略を描ける性格じゃなくわりと感覚で動くタイプだったので、カイトも相談相手がいなかったのもあったんだろうけれど、頭脳担当のシャーリーが本格的にともに行動することになった上に、梨花も片足だけじゃなく両足でクァント=タンに立つ覚悟を持ち、この異世界に対する理解を深めていったお陰で、カイトの大まかな方針に対して具体的な政策を練りあげてくれるメンツが加わった、ということも大きいのでしょう。
この三巻は大事件、というほど大きく状況が動くような出来事こそ無かったものの、地道に基盤部分から手を加えていっているような状況であり、何気に状況自体は激震レベルで進んでるんですよね。さり気なく、ラストバトルへと繋がりそうな、世界の危機クラスの予兆も滲み出ていますし。
ラブコメサイドについても、カイトの覚悟が決まったお陰で彼の甲斐性については十分すぎるほど発揮が期待できるようになって、イチャイチャするにも壁がなくなったお陰で全体的にラブコメ摩擦係数が低かったですしねえ。あんまりみんなベタベタした性格じゃないからか、さくさくっと進んでましたけれどこういうカラッとしているけれど関係の密度の深さを察せられる恋模様というのは大変好みなので、美味しかったです、はい。
そもそも、この世界観の設定自体も人工の異世界という点からして面白い仕組みなんだよなあ。そのせいか、社会システムもかなり独特な所があって、そういう設定群を追っているだけでもなんだか楽しいです。楽しいといえば、アルルメルルのキャラの尋常じゃないギャグキャラとしての存在感は楽しいどころじゃない笑いどころだよなあ、あれ。ソーニャ姫さまもネタキャラとしては相当の逸材なんだけれど、アルルメルルは無双すぎるw

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