不完全神性機関イリス4    勝率0.08パーセントの戦女神 (富士見ファンタジア文庫)

【不完全神性機関イリス 4.勝率0.08パーセントの戦女神】 細音啓/カスカベアキラ 富士見ファンタジア文庫

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自らの意志で人類を裏切り、幽幻種を率いる人型機械体・剣帝ヘケト。奴との戦いで俺・凪は、いま…入院していた。ダ家政婦・イリスの献身的な看護(本人曰く「完全看護士機関イリスです!」)の甲斐もあって右腕の治りは順調だが、剣帝の襲撃で紗砂とヨミ先輩は深手を負い入院。俺たちの計画“プロジェクト・エデン”は遅れることになってしまった。すぐにでも退院して剣帝と再戦、といきたいところなのだが―。「あなたのデータ採取を剣帝から依頼されました」お前、剣帝側についていたのかよ!?意外な人物から語られるヘケトの計画とは?楽園へと続く最終局面、いま始まる!
表紙のサラの、いかにも偉そうだけど小娘! って感じが実に素晴らしいなあ。実際、怪我してあんまり動けなかった今回は概ねイリスと同レベルのネタキャラとしてしか活動していなかったような。いいのかそれで、皇妃さま!! 氷結鏡界のエデンの方のサラが、周りから神聖不可侵といったイメージで抱かれているのを知っているだけに、その正体のグダグダ感は思わず笑ってしまう。まあもっともこの時代でもサラはちゃんと猫被ってるから本性知っているのは此処に出ているメンツくらいなのだけれど、いずれ氷結鏡界のエデンでもあの「皇妃サラ」様の本性が露呈してみんなが唖然とする姿を見てみたいよなあ。何しろ、あのメイメルよりも相当に「アレ」なわけだし。
というわけで、今回の主役はイリスやサラではなく、むしろミカエルであり紫苑であったと言えましょう。このサブタイトルからして、ミカエルの事ですしね。機神となった紫苑と、ただの軍用機械兵士であるミカエルとの戦力差は1250倍。相対した時の勝率はすなわち0.08%。
やはりというべきかなんというか、ミカエルってやっぱりそれなりに特別製だったわけだ。最初に彼女が出てきた時は、一般の軍用機械兵士はみんなこんなに人間味あふれたものなのか、と結構仰天したんですが、そうだよなあ、みんなここまで人間っぽくあるはずないよなあ。
改めてミカエルの口から彼女の名前がミカエル・ユーティア・ラスカであることが明らかにされて、どうやら【氷結鏡界のエデン】で名前だけ出ている第一位の赤毛の巫女「エルミーティア・遊・ラスカ」との共通性が確定的になったようで。実のところ、ただの軍用機械兵士であった彼女がどうやって「それ」になったのかだけが疑問符のつくところだったのですが、今回の機神・紫苑との因縁や彼女が実際には禁断水晶に認められ祝福を受けるはずだった存在であり、ナザリエルというツァリと同じくネクサスと関わり深い別世界の人間が紫苑と対に特別に作り上げた人型機械体であり、という至るに足る「要素」は揃ってたわけで、それが此処に来て一気に表に出てきた感がある。どうやら、凪の手によってミカエルも色々な意味で作り変えられちゃうような気配が。ミカエルの全身メンテってまたエロいな! いや、何よりミカエルが思いっきり親が居ない彼氏の家にお邪魔する的な覚悟でその気になっているあたりが特に。

でも、イリスが居ますからw

此処に来て、機神たちの一斉反乱。話を聞いていると幽幻種に味方した、というよりも人型機械体への帝国をハジメとした人間たちの不当で残虐な扱いに対する反抗、という意味合いが強いようで、確かに現状でも退役した人型機械体には人間に準じた人権が与えられている中で、使い捨ての人体実験に等しい扱いを受けていたら、そりゃあ人間不信にもなるわなあ。ヘケトが複雑なのは、彼にはヨミという信じ抜くに足る親ともいうべき人間が居たにも関わらず、反乱に踏み切ってしまったところにあるのでしょう。凪が大雑把なところのある分、このイリス・シリーズではこのヘケトが一番精神的に繊細なんじゃないかとすら思えてくる。その点、凪はもうこの時点でブレなく一本筋通して胸張ってる主人公だけに、実に頼もしい。
あっちの主人公のシェルティスと違って、そんなに特別腕だって立たないのに、というか弱いのに、色々とイリスとつながっている特典があるとはいえ、堂々とした小細工で剣帝と真っ向から渡り合えるんだから、強かさという意味ではエデンシリーズと合わせてもかなり屈指のしぶとさを持ったキャラなんですよね。
しかし、世界の破滅は刻一刻どころか、加速を初めもはや猶予は幾分もなし。プロジェクト・エデンは予定を繰り上げ開始されることになる。【氷結鏡界のエデン】シリーズに繋がるための千年紀のはじまり。
イリスサイドは残り一巻。はやく、クライマックスの【氷結鏡界のエデン】再開のためにも、10月だという最終巻が楽しみです。

シリーズ感想