聖剣と魔竜の世界 1 (オーバーラップ文庫)

【聖剣と魔竜の世界 1】 サイトウケンジ/黒銀 オーバーラップ文庫

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「これから『聖剣と魔竜の世界』を始めましょう」

12月24日午後10時。平和なクリスマス・イブの夜、全世界は『魔竜姫』を名乗る美少女・アーリにより宣戦布告された。
後に『魔竜宣言』と称されるその宣言は、平穏をモットーにする主人公カガリの生活を一変させる。
カガリの住む『美影開発都市』に襲い来る『六皇魔竜(ゼクスドラグナー)』。
それを倒すために集まってくる『聖剣』こと可愛い美少女たち。
否応がなく混乱に陥る街と生活を守るため、カガリは美少女たちを『聖剣』として携え『魔竜』と戦うことに――!
最高に刺激的でハイテンションなバトルが、ここに開幕!
ああ、やっぱりこの作者さんって敵味方に分かれていても別に仲良くしてたっていいじゃない、という作風の人なのか。この人がシナリオを手掛けたゲームはやったことないんだけれど、MF文庫Jの【101番目の百物語】と漫画原作の【トリニティセブン 7人の魔書使い】が普通にそんな感じで敵対していても普通にキャッキャウフフしていたので、概ねそういう仲良しな雰囲気で押す人なのかなあ、と思っていたら案の定本作でもちゃんと魔竜と聖剣が普通に仲良くしてました……いやいや、全然普通に、じゃないですじゃないです。
みんな魔竜と聖剣が不倶戴天の敵同士、ということを承知しつつも、それはそれこれはこれ、という感じで日常生活の方では仲良しこよししているのですが、なんでだろう、グダグダじゃないんですよね。これは、この人の作品見ていつも思うんだけれど、とても不思議。ゆるゆるなわりに緊張感がないわけでもなく、意外とハードな雰囲気は残っていたりするものの、だからと言って殺伐とするわけでもなく、妙な微笑ましさが常に付き添ってる感じで、何だかんだとこの緩い空気感がかなり好きだったりします。
個人的には主人公は先に上げた二作の主人公みたいに「イイ性格」をした自分のペースで周りを引っ張りまわすタイプの方が好きなのですが、本作の主人公であるカガリはわりと苦労性だなあ。常識人な部分が強くて、その為かかなりツッコミを強いられる立場に立たされてる気がします。突っ込んだらある程度それで気が済んじゃってるあたり、実はこやつもそれなりに大まかな性格な気もしますけど。

さて、ラスボスを自認して登場したアーリですが、さすがにラスボスらしく背負う魔竜は他のファンタジーなどでもラスボスを任せられるほどの大悪竜。つまり、本当にシリーズのラストに満を持して現れるような竜だけに、もうちょっと勿体ぶってくれても良かったかも。だって、六皇魔竜(ゼクスドラグナー)を引き連れて、って連れてきてないから。せっかくの大幹部六人衆がいるのに、本人ウキウキで先乗りしてきたら聖剣とガチ戦いになっちゃって、幹部集まる前にラスボス出るはめになっちゃったとか、ある意味残る四人の幹部連中が知らん間に遅刻扱いになってしまって可哀想というか何というかw
まあ今回はさらに後ろで暗躍する黒幕の謀略で無理やり引きずり出された感があるので本人が勇んで突っ込んだわけではないので仕方ないと言えば仕方ないのですが、悪役を自認するならもうちょっと様式美を守りましょう。いい意味でも悪い意味でもフットワークの軽すぎるラスボスであります。というか、チョロすぎるラスボスというべきか。敵としても味方としてもヒロインとしてもラスボスとしてもチョロすぎるw
いやまあチョロいとか言い出すと、アーリだけじゃなくて概ね全員チョロいんですけど、主人公含めて。全員チョロいからこそ、この軽やかさなのかもしれませんが。しかし、そんなチョロい彼女ですけれど、悪竜として倒される悪として立つ覚悟だけは本物なんですよね。なんだってまた、彼女がそんな覚悟を固めて世界に宣戦布告するに至ったかの理由については今のところまだ明らかにされていないわけです。裏で暗躍する物も、カガリの過去に絡んで居るようですし、本格的に話が動き出すのはある程度役者が揃ってからか。
なんか、物凄い黒幕的な悪い顔をしてCパートに出てきた人たちが居ますけれど、流れから言ってどうせこの人達も「じゃじゃーん、実は私達が黒幕だったのですた!」「な、なんだってーー!? ずっと俺たちを騙していたのか!! ショックだ! あ、それはそれとしてこの後放課後遊びに行くんだけど、一緒に行く?」「おー、うんうん、行く行くー♪」みたいな流れになるんだぜ。そんな緩さを信じてるw

サイトウケンジ作品感想