瑠璃色にボケた日常3 (MF文庫J)

【瑠璃色にボケた日常 3】 伊達康/えれっと MF文庫J

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晦式(つごもりしき)――それは『獣筋』三家で代々おこなわれてきた、自身の守護霊と戦い再契約を結ぶ儀式。翠の父・之臣の誘いで翠の晦式に立ち会う孝巳と瑠璃だったが、儀式の場に突如賊が現れ、翠が負傷してしまう。しかも、禽踊と牙穿まで奪われてしまい――!? 間もなくして、儀式の行われた裏山で何者かに壊された石塔が発見される。そこに封印されていたのは“朽縄"。瑠璃の父、有働壮馬をもってしても祓えなかった最強の獣霊だった――。二つの事件から導きだされる真実とはいったい何なのか? 美少女ツッコミ系バトコメ第3弾――鴫原翠、試練の刻!
幼馴染っていいなあ、なんて思うのは大概男女の幼馴染についてなのだけれど、本作については男女じゃなくて女同士の幼馴染。瑠璃と翠の幼馴染という関係が実に素晴らしいんですよね。普通の女性の親友という関係とも姉妹という関係とも少し違う、幼い頃から培った近くても同じではなく息があっていてもベタベタしておらず、互いに遠慮知らずの無造作な、でも大切な宝物を扱うかのような関係。そんな独特の、幼馴染同士という他ないような空気感が二人の間には流れている。
ヒロイン同士仲の良い、主人公に頼らずにきっちりと立っている女性同士の関係をちゃんと描いている作品はそれなりに見受けますけれど、そういうのと比べても瑠璃と翠のそれはちょっと独特なんですよね。「親友」と「幼馴染」というのは描き出すにしてもやっぱり違うものなのだなあ、と本作を読んでしみじみと思った次第。
そんな二人ですけれど、一時期家庭の事情もあって疎遠になってしまっていたのですが、それを再び繋げたのがまさに「縁」あって関わるようになった主人公の孝巳なわけで、そのせいか入り込む余地のなさそうな瑠璃と翠の間にすんなりと寄り添う事が出来ている。この三人、わりと個々人で好き勝手動いているのでいつも二人一緒、三人一緒というわけじゃないのだけれど、面白いことに一人でいるのも二人でいるのも三人でいるのも至極自然なんですよね。無理に引き寄せることもなく、無理にはねつけることもなく。人間関係の距離感について、無理なストレスが掛かっていないのです。勿論、瑠璃も翠もほんのりと嫉妬心は持っていますし、孝巳と一緒に居たいという気持ちは持っているようなのですけれど、気持ちの余裕に遊びがあるのか、距離感のバランス調整に苦心苦悩している様子がなく、えらく自然体なわけです。そのせいか、瑠璃と翠の間に恋敵としての牽制や駆け引きはありませんし、女の子二人(柘榴が加わる場合もありますが)と孝巳が一緒にいてもあんまりハーレムという感じがしないのが、この作品の雰囲気からしても好印象なんだよなあ。
初々しい恋愛感情をほんのりと描いていることから、ラブコメらしいニヤニヤさせてくれる部分は多分に欠かしていないにも関わらず、むしろ全体としては友情や家族身内からの親愛の情、といった愛情……「情」を主体においた心の温まるお話になっていて、凄い好きです、こういうの。何気に、ベースとなる物語の基礎の部分がかなり硬質でハード路線であるからこそ、登場人物たちの優しい気持ちが余計に浮き出るところもあるのかな。
先ほど、疎遠だった瑠璃と翠を復縁させたのは孝巳だと書きましたけれど、二人の仲が戻るきっかけとなる舞台を整えたのは、今回のお話を読むと鴫原の大人たちの配慮があった事が伺えるんですよね。退魔の名家・鴫原家の総帥としての責任を追わせ、その才能と実力に容赦なく重責を与えながらも、その一方で年頃の少女であり自分たちの娘であり孫であり身内である娘として配慮し、親愛の情を注ぐ事に躊躇いのない厳しくとも優しさに満ち溢れていて、非常にバランスのとれた態度なんですよね。
こういう大人たちに守られてきたからこそ、翠もこんないい女に育ったんだろうなあ。環境って大事ですよね、と瑠璃を横目に見ながら……。
いやでも、ほんと自分、この翠って娘好きだわ。瑠璃よりもよっぽどヒロインらしく恋する乙女しているところもさる事ながら、妙にハマり症凝り性なところも面白い。あの趣味が行き届き過ぎている翠の部屋は、なんかすごく居心地がよさそうです。琴をはじめたら最後にエレキギターにハマってたって、ハマり方の勢いがなんか面白すぎるぞ、この子。弦楽器しかあってないじゃないか。こんな風に趣味が多岐に及んでいるせいか、生真面目に見えて何気に何でも出来そうな娘さんであります。そして、今は漫才にハマってしまっている、と。当初は瑠璃の側に踏み込むための方便みたいなものだったはずなのになあ、翠のおわらい同好会参加は(苦笑

とまあ、今回は第一巻から瑠璃が独自路線を行く分、筆頭ヒロインばりに自己主張していたにも関わらず、二巻の表紙を飾れなかった翠の、名実ともに主役回。これでもか、というくらいに【鵺御前】と呼ばれる天才少女のあれこれを味わえる一作となっていましたが、さり気なく今回初めて瑠璃もヒロインらしい反応してたんですよね。偶然裸を孝巳に見られた時の反応は、まるで年頃の女の子みたいじゃありませんか。瑠璃もこういう反応するんだ、と思わずキュンキュンしてしまいました。うんうん、偶にでいいんで、そういう女の子らしい反応をしてくれないと翠に全部持ってかれちゃいますよ、っと。
柘榴は今回出番はかなり少なし。とはいえ、ラストにはおっとり刀で駆けつけてくれましたし、冒頭の下ねた押しは相変わらずの強力さで。ハッキリ言ってお笑いネタでは柘榴の下ネタがぶっちぎりで面白いんだよなあw
これでひと通り、ヒロイン三人衆の主役回は回ったわけですけれど、なんかあとがきの文調見てるとこれでシリーズ締めちゃうんじゃないか、という雰囲気があるようなないような。ちょっと、折角キャラも充実してるのに、ここで終わるのは勿体無いですよ? ほんとにこの作品、自分は大好きなのでもうちっと続けてほしいなあ。

1巻 2巻感想